東日本大震災により被災し当初は「大規模半壊」と判定された仙台市太白区のマンションが後に「一部損壊」に変更されたことにより、住民に支給した被災者生活再建支援金の返還を求めた訴訟の上告審判決が最高裁判所であった。(最判令和3.6.4)

 

判決は、「支援金は、都道府県の拠出金及び国の補助金が財源となっており、その全てが究極的に国民から徴収された税金その他の貴重な財源で賄われているところ、本件本件各支給決定の効果を維持した場合には、その財源を害することになる。」などの理由で、返還義務を負うとした。

 

この判決で注目すべきことは、被災者生活再建支援法に関してである。

 

まず、支援法は、自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた者に対して、支援金を支給するための措置を定めることにより、その生活の再建を支援し、もって住民の生活の安定と被災地の速やかな復興に資することを目的とするものである。(1条)

 

そして、支援金の支給要件は、支援法2条2号の定義する「被災世帯」に該当すること、すなわち、その居住する住宅が所定の自然災害により所定の程度以上の被害を受けた世帯であうることのみであって(同条、支援法3条1項)、当該世帯が経済的に困窮しているか否かを問わないとされている。

 

また、支援金の額も、同条2項から5項までに法定されており、支援法2条2号イからハまで所定の全壊等か同号ニ所定の大規模半壊に当たるかの別と、一人のみの世帯か否かの別、及び居住する住宅を建設、購入、補修または貸借する場合の定額加算により一律に定まるのであって、実際tの損失額や今後の住宅の建替えや補修等に必要と成る額に応じて支援金の額が決定されるものではない。

 

上記のような支援法の目的、内容等に照らすと、「支援法は、その目的を達成するための手段として、自然災害による被害のうち住宅に生じたものに特に着目し、その被害が大きく、所定の程度以上に達している世帯のみを対象として、その被害を慰謝する見舞金の趣旨で支援金を支給するという立法政策を採用したものと解される。」とした。

 

そして、支援法は、その目的を達成するため、支給要件である被災世帯に該当するか否かについての認定を迅速に行うことを求めつつ、公平性を担保するため、その認定を的確に行うことも求めていると解される。

 

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