豚肉のしゃぶしゃぶ料理を提供する飲食店で登録商標「舞豚」を看板等に使用することが商標権侵害にあたるとして、ブランド豚「舞豚」の生産者が損害賠償などを求めた訴訟の判決が東京地方裁判所であった。(東京地裁令和3.4.23)

 

判決は、商標権侵害を認めた。

この判決で注目すべきことは、商標法38条3項により損害額を算定するにあたり、ブランド豚の商標使用率である。

 

まず、本件店舗は、「舞豚」というブランドの豚肉のしゃぶしゃぶ料理を提供することを特徴とする飲食店であるところ、被告は、被告各使用標章を本件店舗の名称、店舗の外観や料理のメニュー表などに広く用いていたことからすれば、

 

「商標法38条3項による損害額の算定にあたっては、本件店舗の売上げに対して、本件商標1の使用に対し受けるべき料率に乗じて算定するのが相当である。」とした。

 

株式会社帝国データバンク作成の「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査報告書」において、「商標権に関する分類別ロイヤリティ料率の平均値」について全体(205件)では2.6%であり、

 

「商標の分類」が「第43類 飲食物の提供及び宿泊施設の提供」については3件の例があり、最大値5.5%、最小値1.5%、平均値3.8%であるとの記載が認められ、飲食物の提供についての商標権のロイヤリティ料率は、全体の平均より相当程度高いといえる。

 

また、豚肉舞豚は平成7年10月19日の第39回長崎県種豚共進会において農林水産大臣賞を受賞したこと、

 

本件店舗の開店時に長崎新聞には「島原産ブランド豚提供「舞豚」という見出しの記事が、島原新聞には「舞豚」が東京進出」という見出しの記事がそれぞれ掲載されたことが認められる。

 

「これらの事情に照らせば、豚肉舞豚に対して一定の評価が与えられていたことがうかがえる。」とした、

 

そして、本件店舗は、豚肉舞豚をしゃぶしゃぶ料理として提供することを大きな特徴とする店舗であるところ、被告は、店舗の名称や看板、メニュー表等に被告各使用標章を使用していた。

 

これらの事情に加えて、被告は、本件各商標の使用許諾契約が被告による信頼関係を破壊する行為により解除された後も、被告各使用標章を継続していたなど本件訴訟に現れた一切の事情を併せて考えれば、

 

「商標権を侵害した者に対して事後的に定められるべき商標の使用に対し受けるべき料率は、8%と認めるのが相当である。」とした。

 

以上によれば、被告による商標権侵害について、商標法38条3項により算定される損害額は、本件店舗の売上高(平成29年から平成30年8月)1189万7246円に8%を乗じた金額である95万1779円となる。

 

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