児童虐待が増加傾向にあることを受け、政府は児童虐待防止法などの改正案を閣議決定した。
児童虐待防止法の改正案では、親権者による体罰の禁止が明記されている。

それに加え、民法の懲戒権規定の見直しも検討されている。
そこで、親権者による懲戒を定めた民法の規定は以下のようになっている。

第822条(懲戒)

1.親権を行う者は、必要な範囲内で自らの子を懲戒し、または家庭裁判所の許可を得て、これを懲戒場に入れることができる。

まず、懲戒とは、不正・不当な行為に対して、戒めの制裁を加えることである。
民法822条は、親権者が子の非行に対する教育のために、子の身体・精神に苦痛を加えるような懲罰手段をとることを認めたものである。

これは、あくまで子の利益のため、ひいては教育の目的を達成するためのものであることから、その範囲を逸脱して過度の懲戒、いわゆる、体罰を加えてしまったら、傷害罪(刑法204条)、暴行罪(刑法205条)、逮捕監禁罪(刑法220条)になるものである。

また、学校の教員にも同様の懲戒権が認められている。
教員による懲戒を定めた学校教育法の規定は以下のようになっている。

第11条(児童・生徒・学生の懲戒)

校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。

それゆえ、親権者のみならず、教員による懲戒についても、社会通念上妥当なものであれば、たとえ手を出したとしても、正当行為(刑法35条)として扱われるのではないかと言える。

正当行為について、以前このようなブログを書いております。

さらに、子への懲戒については受忍限度とも関係がありそうである。
受忍限度とは、一般人が社会生活を営むうえで我慢すべき限度である。

受忍限度は、人格権侵害などで問題になるものである。
この点について、最高裁の判例(最判平成17.11.10)は、このような基準を示している。

ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは、被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、目的、態様、必要性等を総合考慮して、被撮影者の人格的利益の侵害が社会通念上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである。

それゆえ、懲戒またはしつけの一環であったとしても、暴言や誹謗中傷、さらには、子の人格を否定するような言葉を浴びせることは違法となる。
最後に、今日アップしたブログは「しつけと体罰」を区別するためにも参考になるような気がするだけに…

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