東日本大震災で岩手県釜石市の鵜住居地区防災センターに避難し津波で犠牲になった市立幼稚園職員らの遺族が市に損害賠償を求めた訴訟(国家賠償訴訟)の判決が盛岡地方裁判所であった。(盛岡地裁平成29.4.21)

判決は、釜石市の責任を否定した。
この判決で注目すべきことは、津波の予見可能性についてである。

まず、園長が、本件津波がa地区に存在する本件幼稚園に到達することを予見することができたというためには、「少なくとも、園長が、本件津波が幼稚園に到達する以前に入手し得た情報に基づき、本件地震により発生する津波の規模が、明治三陸地震と同等の地震が発生した場合に想定される津波のそれを上回ると予見できたと認められることが必要である。」とした。

そのうえで、本件幼稚園に隣接する建物敷地内に存在した防災行政無線では、午後2時50分頃、気象庁が発表した大津波警報(3メートル)を発表していたから、園長は、その頃には、3メートルの高さの津波がa地区に到達する可能性を知りまたは知ることができたと認められるが、

明治三陸地震と同等の地震が発生した場合にa地区に到達すると想定されていた津波の高さは、少なくとも6メートル以上(海岸線における高さ)と予想されていたのであるから、

「本件大津波警報(3メートル)の発表があったとしても、園長において、津波浸水予測図の想定を上回る規模の津波が発生することを具体的に予見し得たとはいえない。」として、予見可能性を否定した。

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