賃貸住宅などを兼ね備える複合用途建築物に使用された名称が商標権侵害にあたるとして、不動産会社に損害賠償を求めた訴訟の判決が東京地方裁判所であった。(東京地裁令和8.2.13)
判決は、商標権侵害を認めた。
この判決で注目すべきことは、本件において商標権侵害を理由に損害賠償請求することが権利の濫用にあたるかである。
まず、被告は、原告各商標は、本件各物件の名称として周知されているものであって、原告独自の信用が化体したものではなく、
本来、本件各物件の所有者である被告に正当に帰属すべきものとして、原告が商標権侵害を理由に損害賠償請求することは権利の濫用にあたると主張する。
確かに、本件各物件は、いずれも被告の事業としてその建設及び運営が進められたものであり、原告各商標は、いずれも本件各物件の名称と同一であるから、
一般論として、不動産事業を行うにあたり、事業対象である不動産に付された名称を商標権として権利化するのであれば、その帰属を同一の者とすることは、権利関係の複雑化を避ける意味で、合理的であるといえなくもない。
もっとも、被告の不動産事業は、創業者一族において、被告の株式に係る相続税を節税することを目的として始められたものであり、
しかも、被告の不動産事業は、これに従事する従業員を被告において雇用しておらず、不動産事業について知見を有していたXに任せ、Xが代表者である原告ないしその関連会社に事業運営が委託されていたことが認められる。
このような事情を前提にすると、いずれも創業者一族により経営されている被告及び原告において、本件各物件に係る所有権の帰属と商標権の帰属が分属されることになっても、直ちに不合理が生じることが想定されておらす、
むしろ、被告の資産価値を減少させることにより被告株しくの評価額が減少する関係にあることからすると、
資産として計上されるべき知的財産を、実際に当該知的財産を利用する業務を行う関連会社に分散させることは、経営者の経営手法として一般に採用し得る手法であるといえる。
そうすると、本件の事実関係を前提にする限りは、実際の事業を行う原告において原告各商標を取得することが明らかに不自然、不合理であるとは言い難い。
以上によれば、「原告各商標が、本件各物件の名称を商標とするものであるこを考慮に入れたとしても、原告による損害賠償請求権の行使が権利の濫用に該当するとは認められない。」として、権利の濫用にあたらないとした。
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