あくまで、越境的組織犯罪に対処するための国連条約を実施するための法改正、ですよ | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

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弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

どういう用語を使うかは、重要である。
うっかりすると名称に騙されて、実体を見誤ってしまうことがある。
単純な人、善意の人はよく騙される。

私も比較的単純で、善意いっぱいの方だから、実は騙されやすい。
法律家が騙されるようでは拙いなと思うから、騙されまいぞ、騙されまいぞ、とつい身構えてしまうところがある。

現在国会で審議中の法案の正式名称は、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」だが、通称は組織犯罪処罰法改正法案である。
私は、名称で一般の方々に誤解を与えたり、間違った認識を拡げたりするのが嫌だから、現在国会で審議中の組織犯罪処罰法改正案を共謀罪関連法案と呼ぶことにしている。

この法案で新設される犯罪をテロ準備罪とかテロ等準備罪と呼ぶ新聞社と共謀罪と呼ぶ新聞社があることは、皆さんご承知のとおりだが、新設される罪の法文上の正式名称は、「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備を伴う重大犯罪遂行の計画の罪」である。
政府与党は新設に係る罪を「テロ等準備罪」と呼び、産経や読売がこれをそのまま受け容れているのに対し、朝日や毎日、東京等は、新設の罪は従前の共謀罪と基本的に変わるところがないとして相変わらず「共謀罪」と呼んでいる。

昨日のブログで、「維新は、政府提案の共謀罪関連法案について修正すべし、との立場を取っておられるようだ。」と書いたことが致命的なミスだなどと言ってこられた読者の方がおられたが、私を参考人として招致することを提案された方は私の意見は重々承知の上で推薦されたはずだから、致命的なミスにはならないと思うのだが、さて如何だろうか。

報道では、維新は自民党、公明党と明日から法案修正の協議に入る、ということのようである。
私が衆議院の法務委員会に出席し、政府案について修正の必要性を訴えたとしても何の問題もないはずである。

さて、この辺りで、私の問題意識を少しだけ開陳しておく。
まずは、国際的組織犯罪防止条約という名称についてである。

組織犯罪処罰法改正法案の第1条は、現行法第1条の改正である。
「第1条中『かんがみ』を『鑑み、並びに国際的な組織犯罪の防止に係る国際連合条約を実施するため』に改める。」
とある。

「国際的な組織犯罪の防止に係る国際連合条約」はちょっとスマート過ぎではないかしら。
英語の条約正文に忠実な「越境的な組織犯罪に対処するための国際連合条約」の方がより具体性があり、かつ、条約の具体的な内容とも整合するんじゃないかな、というのが私の印象である。

そのうえで留意すべきなのは、今回の組織犯罪処罰法の改正は、あくまで国際的組織犯罪防止条約(通称)の実施のためだということだ。

あれ、テロ対策のためではないのね。
2020年東京オリンピック開催のため、でもないのね。

今回の改正は、国際的組織犯罪防止条約締結のための国内法の整備のための法改正だということが、目的規定の改正条項を一読するだけで分かってくる。

まあ、そんなことは皆さん、先刻ご承知だ、と仰る方もおられるだろうが、テロ準備罪とかテロ等準備罪という言葉だけ聞いて法律の中身を自分では確認しようとされない方々の中には、今回の法改正はテロ対策強化の一環として行われるはずだ、と思い込まれていた方が多かったのではないかしら。