弁護士の世界が急変しつつあることは、皆さんご承知だろう。
弁護士の業務がサービス産業だなどと言うと、人権擁護と刑事弁護主体で国家権力と対峙するのが弁護士の本来の姿だと固く信じておられる伝統的かつ従来の観念からすると正統派の弁護士からは強い反発が出てくると思うが、しかし多くの弁護士はどんどん弁護士業務が基本的にサービス業であるということに馴染んできている。
サービス業に徹すると、早くて、安くて、美味い、などという標語が弁護士の業務にも当て嵌まりそうだということになる。
ワンストップサービス、などという概念も弁護士の世界で違和感なく語られるようになる。
最近はアメリカのローファームに倣って提案型サービスを標榜する弁護士も出てきているようだ。
さしづめ家族信託などは提案型サービスの典型だろう。
弁護士の仕事を訴訟遂行型と紛争解決型に分けて考えようとする動きも始まったようだ。
訴訟の遂行を専らとする訴訟弁護士と訴訟によらないで紛争を解決しようとする紛争解決型弁護士に分類し、紛争解決型弁護士を増やしていこうという動きのようである。
私などは、現時点では紛争解決型弁護士の雄の一人なのかも知れない。
私の拙い経験を拠りどころにして、どうやって紛争を解決していったらいいか、ということを少し考えてみたい。
あくまで私の経験したことの範囲内であるので、いつでもどこでも誰にでも当て嵌まることではないと思うが、とにかく項目だけでも書き出しておけばどこかで役に立つことがあるかも知れない。
初回は、まず問題の急所を探り当てる、ということについて書いておく。
問題の所在が不明なままいくら対処策を考えても、どんなにいい対処策を思い付いても実際には役に立たないことが多いのは皆さんが日常的に経験されているはずだ。
まずは、問題の所在を明確にする必要がある。
いくつもの問題点がある時は、それぞれの問題点の重要度や緊急性に応じて問題解決の優先順位を付けるのがいい。
問題解決の急所が見つけられるかどうか。
どうやったら問題の急所を探し当てられるかは何とも言えないが、問題の急所が探し当てられればまず問題解決のための対処策は見えてきたと言っていいだろう。
いつまで経っても問題の所在が掴めない人や問題の急所が探し当てられない人は、出来るだけ早く他の人にその問題の解決を委ねた方がいい。
分からないことは分からない、出来ないことは出来ない、と言うのが弁護士としての正しい対処法である。