トロントにいる先輩とのビデオ通話が盛り上がり、気づくと朝食の時間を逃したことに気づいた。(寮に通っている)

 

「あぁ〜またやってしまった・・・」と僕は思った。痛みはないが、階段で2度つまづいて転んだ時のやってしまった感が僕の中に広がる。

 

喉も渇いたし、お腹もすっからかんだしどうしよっかと、フーッとしてると、そうだ「ゆうすげ」に食べにいこう!とクリアな声が発せられた。いつも外出をする時は面倒くさがるのだが、今日はなぜだろうか、僕の胃の中のご飯会議で、「ゆうすげでかき揚げ丼を食べて、温泉に入って帰還」という提案書が全会一致された。

 

全会一致されたことには、行動を起こさねば、さっそく軽井沢の回遊バス「よぶのる」を手配。

行き帰り合わせて合計2時間か、完璧だ。

 

12:30に車に乗る。椅子に体をあずけると、久しぶりに読書でもしようと思って持参した「風味絶佳」を開く。(最近ハマっている山田詠美さんの本) 初っ端が、人を殺すみたいな話で始まるから、ビックリ。どうやら男女関係の話らしい描写が続く。ん、タイトルからして食についての小説だと勝手に勘違いしていたが違うのか?

 

とぼんやり考えながら、ページを進めていると到着。

 

入店し、2年前に座った畳に座る。

 

すんごく久しぶりに来た!「ゆうすげ川魚料理」。高校1年生の時に大好きだった、今でも大好きな先輩 (男) M先輩と1番最初にご飯を食べにいったお店。だから思い入れがある。それまでは距離があったM先輩と、ほんの少しだけ繋がりが芽生えた気がした日だったから。

 

その日を思い出すと、必ず「かき揚げ丼」が呼び起される、それはめちゃ美味しかったという記憶ではなく、爽やかに美味しかったという記憶。サクッと挙げられたかき揚げに、サラッと染み込んだタレの風味。このバランスが整ったかき揚げ丼が僕に刻まれている。

 

だけれどもメニューを見ると、僕は迷ってしまうのだ。「岩魚も鰻も、肝焼きも美味しそうだなぁ」と。とりあえずサイドとして「あん肝のポン酢」を注文。

 

一口食べるとあん肝の力強いパンチが僕にクリーンヒットする。こういう味が濃いものがお酒と合わせると美味しいんだろうなぁ、ビールとか頼んでみようかな(18歳です)、妄想が広がる。

 

ほれほれ今日ここに来た目的を忘れるな、今日は新しい扉を開きにきたわけではなく、M先輩と食べたあのかき揚げ丼を食べに来たんだよねと好奇心が溢れでている自分を落ち着かせる。

 

そう、今日は「かき揚げ丼」の日だよと。

「お好きなようにお食べ」とまるでおばあちゃんがあの愛らしい笑顔で語りかけてくるような「かき揚げ丼」

 

太陽の光と、熱に覆い被さられながら僕は食感と香りと記憶をマリアージュして幸福に浸った。

 

 

美味しすぎて、お味噌汁。ネギと油揚げと小豆腐ってなんとも普通のお味噌汁なんだけどね。普通が、安らぎを感じさせるのだろう。

 

 

真っ白な浅間山。この景色と空気を後4ヶ月毎日しっかり味わなけわれば。