2023年3月1日、2月中旬に始動した課外活動、「一流シェフに人生哲学を聞く」というインタビューの第一弾として、星野リゾート   ブレストンコート ユカワタンで料理長を勤める 松本シェフへインタビューを行いました。

 

シェフの簡単なプロフィールは、以下です。

長野県出身。東京のレストランでスーシェフとして経験を積み、2015年、

軽井沢ホテルブレストンコートへ。

2017年、ブレストンコート ユカワタン料理長に就任。

インタビュー当日に向けて用意していた質問は5つだったのですが、5つの質問の一つ一つから様々な考え・疑問が派生し、結果13個も聞いていました (笑)

それぐらい学びが深く、刺激的な時間でした。説明は手短にここまで、どうかじっくりとお読みください。

 

松本シェフの料理人としての信念 が変わった出来事はいつですか?

- 信念は、変わったことはないです。食べる人が喜んでくれる料理を作りたいというのが常に僕にとって第一であり、根本にあります。小学生の時から一人でいる時が多く、ご飯やお菓子を家族のために作る機会が多くありました。そうして料理をしていくうちに食べる人に喜んでもらうことに嬉しさを感じ、人を幸せにできるご飯を作りたいという思いが芽生えました。その思いは料理人になってからもブレたことは一度もありません。

 

料理人としての人生が変わった出来事はいつですか?

- 銀座シェ・トモの市川シェフとの出会いです。銀座シェ・トモに入るまでは、フランス料理をやりたいとは思っていませんでした。しかし、市川シェフのフランス料理を日本の人に伝えたいという思いを横で見ていて自分もフランス料理の魅力に引き込まれていきました。昨今、フュージョン・新しい料理が流行っていますが、昔から残され、先人たちが繋いできた、昔ながらのフランス料理を、現代の形にしていくことで、魅力を人々に伝えていきたいと思っています。

 

市川シェフはどんな人ですか?

- めちゃくちゃ怖いシェフです。最初は、会話ができないくらい威圧感を感じ、震えくらい恐怖を感じていました。(笑) しかし、だんだんと時間を過ごすに当たって父親のような存在になりました。市川シェフの元で得た学びは、常に僕の根本にあります。

 

市川シェフの魅力は?

- 素晴らしいところは、シェトモをやっている理由です。市川シェフは、フランス料理をより多くの日本人に知ってもらうために、リーズナブルな価格で本物のフランス料理を提供しています。

 

「シェ・トモ」時代はどうでしたか?

- 当時はまだ寝る間も惜しんで仕事をする文化が残っていて、朝7時前に出勤し、休憩も30分で、2時前に帰宅という生活を繰り返していました。休みも週に一回。将来自分のお店を持ちたいという夢を果たすために、全てをできるようになりたいと思いがむしゃらに働きました。

 

松本シェフが考える「食」の魅力とはなんですか?

- それは、人を幸せにする力だと思います。人間誰でも食事が不可欠でお腹が空いてれば食べたくなります。嫌な気持ちな時に美味しいご飯を食べると、心は幸福感に包まれます。そんな不思議な力を持っているのが食の魅力であり、素晴らしさであると思います。

 

松本シェフが考える「フランス料理」の魅力とはなんですか?

- フランス料理の魅力は、フランス料理が足し算の料理で新しい味を作れることです。フランス料理で、最も重要なパーツの一つであるソースは、様々な食材・食感・香りを重ねることで新しい味が作り出されます。この技法は、引き算が主軸である和食では、できない調理法です。またフランス料理において、引き算も大事で、作りたい味に辿り着くまでに必要のない要素は引くことで味を整えていきます。

 

「食」とはシェフにとってどういう存在ですか?

- 僕にとって「食」とは、人の幸せのそばにあるものです。僕は、小さなころからずーっと料理をしています。休みの日も、思いついたらお菓子を作ったり、料理を作らない日はないです。僕にとっ「食」は、生きがいです。「料理」をすることは、楽しくてしかたがないです。

 

シェフが考える、本当に美味しいご飯とはなんですか?

- 僕が考える本当に美味しいご飯とは、その人のためだけに作られた料理だと思います。その思いには、どんなに素晴らしいレシピでも勝てません。どんなに素晴らしい技術を持っていても、「美味しくなれ」という強い気持ちを持って作っていなければ、「味」はついてきません。

 

何を成すために料理人という職業についているのか?人生で成し遂げたいことは?

- 僕の成し遂げたいことはとてもシンプルです。有名になり、雑誌・テレビにでるとかではなく、将来自分のお店を持って、そこで食べた人が幸せになる料理を作ることです。

 

そうは言っても、松本シェフの料理を誰しもが食べることではできないですよね。となると、松本シェフは、料理を通じて誰を幸せにしたいのですか?

- 今までお客さんを選んだことがないので、それは難しい質問ですね。今僕が料理をしている目的は、フランス料理に触れたことのない人達にフランス料理の魅力を伝えることです。特別な日にうちのお店を思い切って訪れ、初めてフランス料理を食べにきた人たちに、フランス料理の魅力を感じてもらい、また頑張ってきたいと再訪したいと思ってもらえるような料理を作りたいと日々思っています。

 

シェフは、フランス料理からどのような影響を受けていますか?

- フランス料理がどのような料理かを一言でまとめると、「食材を美味しく食べるために追求してきた技術の集約」です。そのために食材の骨、血、素材を無駄なく使い切ります。そして、硬い肉をどう食べるか、臭い肉を食べるか、など、すごく根本的ですが、「目の前にある食材を一番美味しくするためにするにはどうすれば良いのか?」という考え方が身についたことが一番だと思います。

 

料理人を目指している方へメッセージをお願いします!

- 情報が溢れている現代、多くの人が情報に味覚を左右されています。しかし、自分が「これだ」と思う味を持つことが、料理人にはとても大切です。ですから、自分の本当の味覚を作る機会を沢山作ってください。そして、自分の味覚の基礎をつくるために、とにかく沢山食べてください。その引き出しが、本当の味覚に導いてくれます。また、本当に味覚を教えてくれる人を見つけることも大事です。

 

最初から最後を通して、料理の世界の階段をどんどんと下っていくような感覚でした。「食」と向き合い続けている松本シェフの目線を少しでも読者のかたに共有できたインタビューであれば幸いと思います。個人的には、「本当に美味しいご飯とはなんですか?」という質問への答えが印象に残っていて、インタビューが終わった1ヶ月たった今でも心に刻まれています。その答えは、「本当に美味しいご飯とは、その人のためだけに作った料理だと思います。その思いには、どんなに素晴らしいレシピでも勝てません。どんなに素晴らしい技術を持っていても、「美味しくなれ」という強い気持ちを持って作っていなければ、「味」はついてきません。」でした。僕がこの質問を作った意図としては、僕が好きなお店の人たちが作る美味しい料理はなぜ美味しいのかを、シェフの方の視点から聞くことで解明することでした。しかし、松本シェフの答えは、もう一段・二段深く、「食」・「料理」の本質をついていました。

 

丁寧に答えていただいた松本シェフ、貴重な機会を作っていただいた広報の渡辺さん、お世話になった星野リゾートの方々、本当にありがとうございました!

 

次は、お料理の感想編です・・・