らせん です
先生 山に登ってもいいですか
整形外科の椅子に座って
お星さまキラキラの目
で訴えたつもりでしたが
で訴えたつもりでしたがわたしのことを
毒舌合戦の悪友扱いする
主治医の先生の言葉は
とても素っ気なかった
あのね
膝がこんなに傷んでる人が
山に登れるわけないでしょ
山には登れません
なにをーーーーっ
らせんさんは
ジムの自転車を漕いで
膝の筋肉を維持しなさい
なにをーーーーっ
山の日は
トレッキング装備をして
近所の坂という坂
尾根道らしき尾根道
それらをゆっくり時間をかけて歩きました
準備運動は出来たつもり
うん 膝も大丈夫
先生の言葉は
半分は心に入れて
半分は聞かなかったことにして
山の階段探険隊 出動 です
初めて行く山 高尾山
高尾の天狗さまのことは
たくさん聞いたことがありました
あちこちにひっそりと棲む
深山の天狗たちを統べる大天狗さま
御用を言いつかり自由自在に飛び回る
小天狗 青天狗 烏天狗たち
高尾山はわたしにとって
境界線の山
たくさんある道の中
６号路を行きました
朝まで降っていた雨は上がって
それでも細かい水の粒が
空気の中に含まれてしっとりとまとわりつく
渓流のせせらぎの音
降るようなセミの声の中
鳴き声の布を柔らかく裂くような
あの鳴き声はオオルリ
きのこが階段みたいになって現れたり
岩の間から染み出してくる
最初の一滴のなんて冷たいこと
初めての道なのに
なんだか懐かしい
幻想的な山の趣きに
深呼吸すると水の粒が胸の中を
満たします
ゆっくりゆっくり自分のペースを保ちましょう
膝に負担をかけないで
周りの景色に同化させて
山懐に入れてもらうように歩きましょう
昨日 練習したから大丈夫
ああ
ここが沢の中を歩く道
６号路に入る時に
初老のおじさんに教えてもらって
どこから始まるか楽しみにしてました
そういえばあのおじさん
道迷いを心配してやってきてくれた
小天狗さまだったのかしら
水の中の飛び石段々を渡り終わり
次は目も見張るような
山の中の階段
これはすごい
とろりと濃厚に流れていく靄の中を
果てしなく続く階段は
ところどころの大木の上で
修験者の姿をした小さな天狗さまたちが
見守っているような
試し見ているような
息を整えて
さあ 山頂をめざして行きましょう
高尾山 標高５９９．１５メートル
登頂です
三角点にもタッチしてご挨拶
やればできる
心配ばかりして諦めてたら
悔いが残ってしまいます
無理をしない程度にがんばれば
ちゃんと山にも登れました
膝に不調はみられません
心の中で主治医の先生の顔に
ペロリと舌を出してるわたしです
そんな心を見透かしてか
いきなり雨が土砂降りに
意地を張ったわたしへの
先生のいやがらせでしょうか
大丈夫ですよ
帰りは無理はしないでリフトを使いますから
＠東京都高尾山
女坂と男坂の分岐まで下りてきました
見えないものを見るアンテナを
研ぎ澄ませば
あちらこちらに天狗さまの気配があったような
坂東平野の中
高尾の大天狗さまの山懐で
たくさんの階段を探険しました
一本歯の高下駄で
杉の梢の先に立つ
凛々しい面ざしに高い鼻
修験者の装束に手に八つ手の団扇
仰ぎ見て影だけでも感じたい
＠東京都高尾山
意地っぱりはほどほどに な気分です