らせん です
赤色が好きでした
でも
赤いくつを履いたことがなかった幼少期
保育園に通うとき
わたしのくつはいつでも オレンジ色 でした
らせんちゃんには赤よりオレンジが似合うからね
母が好きな色だったのでしょう
幼いころのわたしの服は
水色 明るい若草色や緑色のチェック 紺色
そして くつはオレンジ色
きつくなって買ってもらった新しいオレンジの運動靴
手にうっすらとざらっとした感触と
かすかなゴムのにおいのオレンジのくつを
奥の六畳間でごろんと転がしたやりきれない気持ち
そういえば
歯磨きもオレンジ味でした
いきなり目の前に どおぉぉん と現れた忙し山
わたしのあくせくした日々のはじまりは
秋が町の中にもそろそろ本格的にやってくるころでした
板塀に這うツタが
ほんのり色づきはじめたころのこと
少しづつ深まっていく秋の中で
おばあちゃんが編んでくれた毛糸の帽子を思い出しました
それは渋めの柿色と緑のモチーフ編み
今でもとても個性的なオシャレを演出できそうです
ツタの色合いが変わるのを見ながらなら
時間に追われる毎日も
変化に富んで楽しめます
忙し山真っ盛りは秋も真っ盛り
ツタは
母の好きなオレンジ色と
わたしの好きな赤とに染まりました
1枚めの写真で地面から這い上がっている
小さながんばりやさんたちも
こんなに真っ赤に
大学生になってバイトしたお給料で
赤いブーツを買いました
クシュクシュと足首のところがちぢまっている
ほんとうに可愛らしいブーツです
このツタみたいな色でした
わたしが初めて自分の力で買った赤いくつ
大好きだったあのブーツ
たくさん履いたっけ
いつしか時間は流れ
赤いブーツよりももっと渋く落ち着いた赤は
12月の色です
くすんだオレンジにも見えるし
煉瓦色 という大好きな言葉にぴったりの色にも見える
なんて不思議な豪華な色でしょう
それでも
近くで見ると こんなにも赤い
小さいころから憧れたいろんな赤がそこにあります
そして
それはあっけないくらい突然にやってきました
忙し山の尾根道を行くわたしを
元気づける役目を果たしたのでしょうか
それとも
そろそろ終わりが近づいていたのを
だまってがんばってくれていたのでしょうか
ある夜のうちに吹いたさほど強くもない風に
1枚 また1枚と
板塀から離れていった赤い葉たち
枯れた草むらには役目を終えた仲間たちが
まるで干し草の布団にくるまれるように
眠っています
這い上がる小さながんばりやさんたちも
今年の任務はそろそろ終了の様子
励ましてくれてありがとう
大好きな赤い色に 通るたびに元気をもらいました
子どものころイヤだったオレンジ色のくつ
こんな豪華な赤になる前の 一瞬の色だと知っていたら
気持ちはちがっていたのかもしれません
今も赤は大好きな色
そして 今はオレンジ色も
下り坂にさしかかる? な気分です