1年生トムくん。

ぐりさんの教室に通ってくださるようになって3年目になりました。

毎週、テキストを見なくても弾けるほどに仕上げてくるし、
本を開く合間に、以前に合格したお気に入りの曲たちを弾く様子から、
身体で覚えるまで相当に弾き込んでいると、わかります。

 

ト:「こっちで弾くと、どうかな?」
ピアノランド3の『コロコロコロッケ』を高音部で弾きはじめます。
ト:「あ・・小さーい」
ねずみさんのコロッケは小さすぎて、先生、お腹いっぱいにならんな・・・
ト:「わはははっは!!! 低いとこで弾いてみるよ」
「う、ゾウさんのコロッケは大きいね、全部食べれるやろか・・・あーむっ!!」
ト:「ぐふふふ、次この曲も弾いてみる」
 

ピアノランド3の曲を次々と低音部で、しかも暗譜。
ストーリーをイメージする楽しさがわかるように。

わはははhっははっははhはは!!!!!  ( ´∀`)人(´∀` )

 

 

活発に外を走り回ったり、ひょうきんなキャラクターがでてきましたが、
「ボク、この曲好きなの」
と、トムくんが選ぶ曲は、しっとりした曲が多いです。
『大きな古時計』も、お気に入りのひとつ。

「ねぇ、なんでこの時計とまっちゃったのぉ?」
「こわれちゃったの?時計、まだあるのぉ?」

なんて素敵な疑問でしょう。

 

想像して楽しむこと、
ぐりさんとの会話で それをさらに膨らませて楽しさを共有すること


豊かな時間が流れます。

余談ですが、

『ちびまる子ちゃん』の「大野くんと杉山君」の回でも出てくるこの歌。
まるちゃんの『大きな古時計』の解釈も、ぐりさんは素敵だなと思います。
すっごく限られた人にしかわからん話で、あいすみません。。。


トムくんのレッスンは

模範的で理想的なレッスンといっても過言ではありませんね(笑)

 

2年前、トムくんと出会った頃は年中さんでした。

車で片道1時間弱の道のり。
眠くて駐車場からメソメソしながらやってくることも多かったし、
教室でパニックを起こして鼻血を出したこともありました。

ピアノを弾きながら、ウトウトすることもありましたし、
体調の悪さも重なって、部屋のすみっこに座り込んで動かないこともありました。

まだ歩き始めたばかりの下のお子さんを抱えながら
グズグズ言って暴れるトムくんの背中を押してドアを閉める小柄なお母さん。

そんな状態が3、4ヶ月続いたでしょうか。

どんなにグズっていても帰るときは

お母さんがトムくんの顔をみるなり

「あ、笑ってる」とおっしゃることがせめてもの救いでしたが、
駐車場からここまでお連れ頂くだけでも一苦労で、
それでも毎回、懸命に手を引いてお連れ下さる
お母さんには本当に頭が下がる思いでした。

まだ毎日毎日、至る所で騒動を引き起こしていた頃、
園の行事の最中にトムくんがハチャメチャを起こしてしまい、
中断させてしまうというアクシデント。

 

本人はどうかわかりませんが、
小さな一つ一つが何か親子で挫折感を感じてしまう今日この頃です。
一瞬一瞬を楽しんでトータルで楽しい日々にしてほしいと思います。


お母さんからのメールです。
徒労感とやるせなさがにじみ出ていて胸が痛みました。

あまりにもたくさんの『衝撃の現場』を目撃すると、
心が折れて深く傷付きますね。

その頃のお母さんは本当に憔悴しきったご様子でした。


眠い、上手くできない、わからない、疲れた、お腹すいた、ドキドキ、驚いた・・・

ほんの些細なことだと思われることでも
『怒る』という感情表現に直結してしまうタイプの発達障害を抱える子どもたち。

 

その頃のトムくんは、
ぐりさんが隣で一緒にピアノを弾いたり、拍をとったりすると
「もぉー、先生は やらないで」
と、必ずすぐに怒っていましたし、
リズムやソルフェージュの時もよく聞き取れない口がまめらないためか

「もぉー!!」と、ふくれていました。

インプットの困難によるアウトプットの困難。

ですが、レッスン半年過ぎたあたりから次第に積極的になっていきました。

視野が広がって追従がうまくなり、
楽譜と鍵盤を視線を交互にを見ながら弾けるようになったこと。
あとは、言葉や音を明瞭に聞き取れるようになったことで
誰かと一緒に音楽を楽しめるようになり、
「ねぇ、先生!!あれ歌いたーい!」
と、リクエストしたり、帰り支度をしながら鼻歌も。
 

ですが、それと同時に感覚刺激を強く求めるようにもなってきました。

ガターン!とわざと大きな音をたててコケてみたり、
ぐりさんにベタベタくっついてジャレるように。
(これは今まで興味のなかったコミュニケーションの表れで
トムくんの愛情表現からのスキンシップでもあります)

これもひと通り気が済むと(笑)次第にみられなくなりました。

 

困難を抱えるお子さん(大人も)たちは、
安心して落ち着いた環境では能力を発揮し、たくさんのことを吸収します。
そしてそれがスキル獲得と自信につながり、他の場所でもスムーズに活動できるようになるのです。


レッスン開始1年後、年長さんの頃には、
トムくんはほがらかな部分が強くなり
幼稚園では『ムードメーカー』と言われるほどの存在になりました。

そしてなにより、お母さんの表情が柔らかくなったことにとても安心しました。

1年生になったトムくんは、学校が毎日楽しそうです。
気持ちの切り替えも、ずいぶんと早くできるようになりました。
お母さんからすると、まだまだなのだそうですが、
お母さんはそれぐらいの冷静なお気持ちで見ていただき、
周りから見ると大丈夫ってくらいがいいのかもしれませんね(笑)
 

「ボクねぇ、ピアノ大好きなの。
毎日学校から帰ったらねぇ、ずーっと弾いてんだよ」

 

新しい曲になる度、弾けるようになるのはものすごく大変なことなんだろうとは思いますが、
練習もくじけそうになりながら諦めずに頑張っています。


最近のお母さんのメールには、こう書かれていました。

『諦めずに頑張っています』
の一文は、ぐりさんには、
お母さんのトムくんへの想いそのもののように感じられたのでした。

練習したらできた!!という
幼い頃からの努力と成功体験の積み重ねが、
彼の根っことなり、自分で自分をしっかり支えられるよう地中深く張り巡らされ、
10年後、20年後には必ず夢と希望の若葉が色濃く生い茂ることでしょう。

好きなこと、夢中になれることをひとつもつということが、
発達障害のお子さんたちを救い、

また親御さんたちも救われることにつながります。

そこには、見えない部分でのお母さんの数えきれない汗と涙、

そして並々ならぬ頑張りがあることをぐりさんは知っています。

トムくん、ぐりさんはいつでも応援しています。
ありがとう。

 

 

  福岡ぐりむ療育とピアノと学習の教室です。別ブログやXの過去記事にコメントを加筆して書いていっています。

 

2013年の記事です。

 

果てしない長文を読んでくださりありがとうございます。

 

高機能自閉症とかいわれてる時代。

 

ありがたいことに、皆さん遠方から週に何度もお越しくださるので

とにかく!!

小さいお子さんの眠さとの格闘は半端ありません。

 

それでも懸命に連れてきてくださるのですから、

お母さんたちには本当に頭が下がります。

 

みんなすぐに集団療育、集団療育といわれますがね。

レッスンをしっかり受けてくださると、

『好きではないけど』集団の中にいられるようにもなります。

 

人気者になって、それまでのお母さんの心の穴を埋められる生徒さんも多いです。

 

そしてびっくりマーク

 

そこからやっと、本当の療育ピアノレッスンが始まるのです。

 

ピアノ以外にもやることは本当にたくさん!!

何から何まで、ありとあらゆることまで取り組むのだ。

 

発達障害でスタートラインに立つことさえもままならない親子が

人生を悲観することなく、よりよい道をみつけられますよう。

 

思ってもみなかった生活はあります。

伸びてしまえ!!