「ブラック・ケネディ オバマの挑戦(クリストフ・フォン・マーシャル著 大石りら翻訳)」読了。

弱冠47歳で第44代アメリカ合衆国大統領に就任したバラク・オバマの半生をドイツ人ジャーナリストが独自の視線で描いた書である。タイトルが「ブラック・ケネディ」と銘打たれており、同じく40代(43歳)の若さで第35代大統領に就任したジョン・F・ケネディが随所に紹介されており若い才能が経験を超越するという共通点は見られるものの、本筋ではなかった。インパクト的に響きが良く採用されたタイトルなのだろう。
作品前半はオバマの少年時代から青年時代までが詳細に綴られていた。2歳で両親の離婚、そして母親の再婚、継父との微妙な関係、実父との再会など決して恵まれていたとは言えない幼少期、麻薬に手を出すなど荒れた学生時代などある程度の脚色はあるものの、そのような環境から大統領にまで上り詰めたオバマはまさにアメリカン・ドリームである。本書を読む限りでは、心から息子を案じる母親の愛情が功を奏したと言える。

作品後半は政治家を志してからヒラリー・クリントンを抑えて民主党大統領候補を確実にした2008年6月までが描かれている。そこには併せて人種問題、民主党と共和党の立ち位置の違いなどが描かれており、アメリカの社会・政治が多少なりとも理解できた。特に人種問題についてはかなりページが割かれていた。アフリカ系アメリカ人であるオバマはともすればマイノリティ支援派と思われがちであるが、実際はそうではない。不健康な生活、喫煙、ファストフードの過食、より良い教育の機会を得ようとする努力を怠る人々には、「強い意志をもって変えていくべき」という個人責任論を主張する。つまり被害者意識ばかりを盾にとって努力しないのではダメだということである。これは我々も意識すべきであろう。「学歴が高くないから」「育った家が金持ちではないから」という言い訳を盾にしていては前に進まない。オバマが黒人層のみならず白人層をも取り込んで初の黒人大統領に就任したのはこのような意識のお陰だと思う。

私が最も興味のあるオバマ大統領の政策は医療保険制度である。日本と同様の「国民皆保険制度」を導入したいと考えているようだが、自由の国・個人責任という国民性から反対派の圧力は強そうだ。TVなどのメディアでは単なる国民皆保険を目指すとしか紹介されていないが、詳細は「強制加入はあくまでも未成年のみ、成人には経済的な補助を与える形で保険加入契約を行わせる」というものであり、日本のそれとは少し異なる。いくら個人責任とは言え、最低限の社会保障として国民皆保険制度は必要だと思う。私が危惧するのは、欧米各国万歳を唱える「欧米礼賛政治家」が「日本においてもアメリカに倣って国民皆保険制度を止めて任意加入制度にしよう」と言いだすことである。「小さな政府」を唱える政治家が増加しているが、こればかりはアメリカを見習うべきでない。アメリカが日本を見習うべきなのだ。
ブラック・ケネディ オバマの挑戦ブラック・ケネディ オバマの挑戦
著者:フォン・クリストフ・マーシャル
販売元:講談社
発売日:2008-07-31
おすすめ度:4.5
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