「ミステリーファンのための警察学読本(斉藤直隆著)」読了。

今まで一度も警察を志したことはないものの、「踊る大捜査線」を観て以来、警察組織に興味があるため読んでみることにした。

「踊る大捜査線」は従来の刑事ドラマとは違い、警察組織をよりリアルに描いた点が人気の秘訣という。確かに、銃撃戦やカーアクションにあふれたかつての刑事ドラマは明らかに一線を画すものである。昨今の警察を舞台としたドラマは「踊る大捜査線」に影響を受けたのか、現実の警察に近いドラマに近づいてきているという。

以下に、興味深かった点を列挙したい。

・都道府県警察本部の刑事部捜査二課は、選挙違反や贈収賄などの汚職、企業ぐるみの犯罪、詐欺・横領事件、経済犯罪に関わる財務解析、オレオレ詐欺など知能犯を幅広く担当するが、その指揮を取る捜査二課長は警察庁から出向してくるキャリアの指定席。
理由は、選挙や政治家の汚職という「地域密着型」犯罪を取り締まる立場にあるから。つまり、地元出身のノンキャリアが長くその部署に勤めると、どうしても癒着の温床となりやすいため。1~2年ごとに全国を渡り歩くキャリアならば、そんな癒着を起こすヒマもない。また、現実として政治家と渡り合えるのは地方公務員でなく官僚の仕事という判断もある。
→国の機関でキャリアを据えるのはこうした意図が多いのだろう。

・公安部はエリートコースであり、キャリア組は必ず公安課長を通過するし、幹部もほとんど公安出身。
警視庁以外の道府県警察本部では、警備部に公安課が置かれており、やはりエリートコース。
→「踊る大捜査線」においても公安部が根暗な嫌われ者として描かれていた。青島が「きみらね、評判悪いよ。暗いって…」と毒づいていたのを思い出す。

・留置場の看守は刑事部でなく総務部所属。
かつては刑事部所属だったが、いわゆる代用監獄問題が取り上げられた背景から、1980年から被疑者の人権を守るため総務部に分業化された。「留置場でも取調室でも24時間刑事に見張られていたのではたまらない」ということで。看守は通常、刑事を夢見る卵がなる。ここで犯罪者の生態や心理を学んで刑事となった時に備える。
→確かに「看守=総務部」というイメージはない。

・取調室で出前のカツ丼を食べさせてくれるシーンがあるが、嘘。時間になると留置場に戻り、警察指定の業者が配達する弁当を留置係が運んでくる。取調室での食事は全面禁止。好きな食事を与えることを引き換えに自白を強要しているものとして訴えられたり、供述調書の証拠認定が取り消されたりしたため。
→これも「踊る大捜査線」に描かれていた。第一話の冒頭で、青島が研修で犯人役の研修官に「カツ丼、喰うか?」と振って「今、昭和何年だね?いまどき、警察学校でこんなことを教えてるのかね?」と幹部の大顰蹙を買っていたが、ひところの刑事ドラマではお約束だった。今ではコントで演じられるくらいか。確かに80年代刑事ドラマの視聴者だった私としては、「取調室=カツ丼」のイメージはあるのだが…。

・逮捕後、検察官送致まで48時間以内という制限が設けられており、その48時間を最大限利用するため、通常逮捕の場合は朝一番に設定されることが多い。何故なら、留置場に勾留している被疑者を検察官の元に送る護送車が署に巡回してくる時間が朝だから。
→なるほど、TVでよく犯人逮捕の瞬間をスクープしていたりするが、ほとんどは朝がたである。

・身代金誘拐、立て篭もり、ハイジャックを担当する特殊班であるSITは一般に「Special Investigation Team」と言われているが、実は刑事部捜査(S)一課(I)特殊班(T)の頭文字。
→これもトリビアなネタだろう。ちなみにゴロが似ているSATは特殊急襲部隊の略で、警備部所属の若手独身警察官の精鋭部隊である。「踊る大捜査線歳末特別警戒スペシャル(1997年12月放映)」の終盤に湾岸署に突入したのはSAT。

ミステリーファンのための警察学読本ミステリーファンのための警察学読本
著者:斉藤 直隆
販売元:アスペクト
発売日:2004-08
おすすめ度:3.5
クチコミを見る