八月第三部 | 和角仁の「歌舞伎座」辛口寸評

和角仁の「歌舞伎座」辛口寸評

グリデン・ワズミの歌舞伎劇評

「土蜘」
今月ではこれが一番の舞台である。橋之助の「智籌」が、仕科、台詞とも、実にしっかりとしている。地を這うような、不気味な「呂」の声といい、仕科にも闇に跳梁する異形の凄みが感じられた。七之助の頼光には今少し四天王を統べるほどの「凛」とした雰囲気がほしいし、胡蝶(扇雀)には「唐織」にふさわしい「足の運び」の習練を願いたい。
団子の音若は、終始正面を見すえて坐っているが、頼光に「夜衣」を着せ、所定の位置に戻ってからは、顔をやや伏せて、睡眠の姿勢をとり、長唄の〽︎祈り・・・」で顔をあげ、キッとなって智籌に迫ってゆかねばならぬ。
猿之助、勘九郎、巳之助の番卒たちは達者。児太郎もしっかり。石神は波野哲之。

「廓噺山名屋浦里」
鶴瓶の「落語」の舞台化。別にいうこともないが、ここでも七之助の花魁姿に感服。将来が楽しみな役者だ。