アローラ(こんにちは)。本日もよろしくお願いします。第19話、スタートです。

 私たちは島巡り2つ目の島、アーカラ島へ降り立ち、4番道路を進んだ先の小さな町、 オハナタウン へ到着し、その町のポケモンセンターで休憩をとっていました。


ツキ「回復オッケーと」
モクロー「クロォゥ!」
ケララッパ「ケラッパァ!」
ロトム図鑑「モクローもケララッパも、すっかり元気になったロト!」
ツキ「ポケセンなんだからそうだろ。逆にそうでないと困る」
ロトム図鑑「た、確かにそうロトけど…」
ツキ「リーリエはどこだ」
?「ツキー!」
ツキ「…?」
 ツキさんを呼んだのは、もちろん私ではありません。ツキさんたちの視線を向けた先に、私とほしぐもちゃん。そして、
マオ「おーい!」
 アーカラ島のキャプテンの1人、マオさんがいました。


ポケモンムーン
  月 詠 の 記 録

【記録.19】
キャプテン・マオ -

マオ「オハナ牧場ー!」
アママイコ「アッマァイ!」
ツキ「どうしてこうなった」
ロトム図鑑「い、いろいろ理解に苦しいロト…」
リーリエ「簡単です。ポケモンさんたちのお世話です!」
マオ「お! さすがリーリエ。話が早い!」
リーリエ「あ、ありがとうございます」
 私たちがやってきたのは、オハナタウンの北に位置する牧場、オハナ牧場です。絶品のミルクにバターなどの乳製品が名産で、他の地方にも海を越えて愛されるといわれています。 
マオ「はいはーい。じゃあ、今回あなたたちにやってもらうことを発表しまーす!」
アママイコ「アッマイ!」
ツキ「話が早すぎて意味が分からん」
ロトム図鑑「と、とにかくロト。ここは当たって砕けろのノリで押し切ってみるロト?」
ツキ「わかった乗ってやる。ただし、お前を砕いてからな」
ロトム図鑑「やめるロトー!!!」
 私のカバンの中でほしぐもちゃんがびっくりしてます。私もびっくりしています。マオさんだけはそれほど驚くこともなく、
マオ「まぁまぁいいじゃないいいじゃない。それでは改めて、今回あなたたちにやってもらうこと、改めて発表しまーす!」
アママイコ「アッマイ!」
マオ「ズ・バ・リ、オハナ牧場のお手伝いよー!」
ツキ「テンション高すぎ」
リーリエ「とっても元気で、私たちも元気出そうです!」
マオ「さてー、まずはツキ! ポケモンを出してくれない?」
ツキ「ポケモン? なんで今」
マオ「いいから」
 ツキさんは渋々とモクローさんとケララッパさんを繰り出しました。
モクロー「クロゥ!」
ケララッパ「ケラッパァ!」
マオ「それでは、今回はモクローちゃんもケララッパちゃんも出して、行ってみよう!」
アママイコ「アッマイ!」
ツキ「はぁ?」
モクロー「クロォ!」
ケララッパ「ケラッパァ!」
ロトム図鑑「そういえばマオ、オハナ牧場のお手伝いと言ってたけど、話し合いはしているロト?」
マオ「話し合い? まぁ、ここの牧場経営しているのが友達のご両親さんでね。そこのコネでってこと」
リーリエ「確かに、マオさんのようなお方なら、いろいろなご知り合いがいそうですね」
ツキ「まぁ、どうでもいいだろ。…ん?」
?「ムゥラァァァン!!!」
マオ「な、なに!?」
アママイコ「アッマイ!?」
 私たちが振り向くと、そこには…ポケモンさんのタマゴらしきものが丘から落下してきているではありませんか。そしてそれを追うポケモンさんがいました。
ロトム図鑑「あれはムーランドロト!!」
ツキ「ムーランド、あいつがか」
マオ「あのムーランドが、あのタマゴを追っているんだよ!」
リーリエ「でもこのままじゃタマゴが! ツキさん!」
ツキ「…わかったよ。モクロー、ケララッパ」
モクロー「クロゥ!」
ケララッパ「ケラッパ!」
 モクローさんとケララッパさんは協力してタマゴを優しく抱えると、静かに下ろしました。
リーリエ「ふぅ…。よかったです」
マオ「さすが! よくやったねー!」
ツキ「…ムーランド、止まってないぞ」
ムーランド「ムゥラァァァ!!!」
 勢いに乗ったムーランドさんは、止まることができずに、そのままツキさん、モクローさん、ケララッパさん、そしてタマゴのある場所へ突っ込んでいってしまいました。
リーリエ「あわわ…ツキさん…!」
マオ「あららー」
モクロー「クロォ」
ケララッパ「ケラッパ」
 飛んでムーランドさんの突撃から逃げていたモクローさんとケララッパさんが、タマゴとと一緒にムーランドさんの下敷きになったツキさんを気にしています。
?「ごめんよー!」
マオ「あ、おじさん!」
リーリエ「おじさん…? 管理人の方ですか?」
マオ「そう!」
ロトム図鑑「それよりツキはいいロト?」
リーリエ「あぁぁ!!」
 私はあわててムーランドさんの下敷きになっているツキさんの様子を伺いました。
管理人「ま、待っててくれよキミ! ムーランド、そこをどいてやりなさい」
ムーランド「ムゥ」
 ムーランドさんがそこをどこうとすると、突然下敷きになっているツキさんと、のっかっているムーランドさんの間で光が輝き始めました。
リーリエ「これは…?」
モクロー「クロゥ?」
ケララッパ「ケラッパ!」
マオ「もしかして!」
アママイコ「アッマイ!」
 光が収まり、ムーランドさんが移動すると、そこには先ほどまで下敷きになっていたツキさんがいました。
ツキ「つぅ…。…ん?」
 頭を抱えたツキさんは、自分のお腹に乗っかっているポケモンさんと目が合いました。
?「ブイ?」
ツキ「………ムーランド、ずいぶん小さくなったな」
?「ブイ?」
ツキ「じゃねーよ! なんで俺の腹の上にイーブイがいるんだ!」
ロトム図鑑「さっきの光は、タマゴの孵化だったロト!」
マオ「やっぱり?」
アママイコ「アッマイ!」
ロトム図鑑「説明を挟むロト! イーブイ。しんかポケモン。ノーマルタイプ。アンバランスかつ不安定な遺伝子をもっており、様々な進化の可能性を秘めている。ロト!」
ツキ「さっき丘から落ちてきたタマゴが孵って、このイーブイが産まれたと」
モクロー「クロォゥ!」
ケララッパ「ケラッパ!」
イーブイ「ブイ?」
 モクローさんとケララッパさんは、今だツキさんのお腹の上に居座るイーブイさんの元へ降り立つと、早くも歓迎ムードです。
ツキ「話し合いはまず俺の腹から降りてからにしろ」
 そうツキさんが言うと、モクローさんたちはあわてて地面に降り立ちました。
マオ「すごいよー! 久しぶりにタマゴが孵るところ見たよー!」
アママイコ「アッマイ!」
リーリエ「新しい命が芽生える瞬間…! とても感動的です!」
ロトム図鑑「…けど、管理人からするとどうロト?」
管理人「いや、無事タマゴが孵って本当によかったと思っているよ。ただ」
ロトム図鑑「ただ?」
管理人「…問題は、ムーランドかな」
ツキ「ムーランド?」
 私たちが目を向けると、そこにはやや憤っているように見えるムーランドさんがいました。
ムーランド「ムゥ!」
イーブイ「ブイ?」
リーリエ「お、怒っている…のでしょうか」
マオ「タマゴ追いかけてきてたし、もしかして…さっきまでタマゴのお世話係だったとか?」
アママイコ「アッマイ」
ムーランド「ムゥラァァァァン!!!」
管理人「お、落ち着けムーランド!」
 ムーランドさんはツキさんを敵とでも見るかのように突進し、イーブイさんを取り返しに来ました。
ツキ「ポケモンの分際で歯向かうとは言い度胸だな。モクロー、<このは>!」
モクロー「クゥロォオッゥ!!!」ビュォォォ
ムーランド「ムゥ・!」
マオ「わーお。攻撃しちゃう」
リーリエ「や、やめてあげてくださいツキさん!」
管理人「止む負えない…! ミルタンク!」
ミルタンク「ミル!」
管理人「ムーランドを止めてくれ!」
ミルタンク「ミルゥウ!」
ムーランド「ムゥ!」
ミルタンク「ミル! ミルゥ!」
ムーランド「ムゥ。ムゥラン」
 ミルタンクさんの静止で、ムーランドさんの怒りはひとまず静まりました。
イーブイ「ブイ」
ツキ「…お前はあっちだろ」
イーブイ「ブイ?」
ツキ「…。俺にゲットされたいと?」
イーブイ「ブイ!」
ロトム図鑑「ちょっと待つロト! 偶然の事故とは言え、そのイーブイは管理人さんとムーランドのものロト!」
マオ「そうなんだよねぇ。…けど、生まれた時に最初に見たのはツキだし…」
アママイコ「アッマイ」
リーリエ「どうするのですか…」
ツキ「俺は別にいらない」
イーブイ「ブィィ!!」
ツキ「…」
 イーブイさんはツキさんの足に頬を擦り付け、一緒にいたいアピールをしています。モクローさんとケララッパさんは歓迎ムードですが、ツキさんはやはり乗る気にありません。
ムーランド「ムゥ」
管理人「わかってるよ。…マオちゃん、それにみんな。少し牧場ロビーまでいいかな」

スタッフ「お待たせいたしました。こちら当牧場の名物であるミルクになります」
リーリエ「ありがとうございます」
 私たちが案内されたのは、オハナ牧場のお土産を売っていたり、レストランのある施設のロビーです。そこで、私たちはイーブイさんの件について話し合っていました。
管理人「そのイーブイは、隣で経営している預け屋からいただいたものでね。このムーランドに、タマゴの世話をしてもらっていたんだ」
ツキ「ポケモンが、ポケモンのタマゴの世話? しかも自分のじゃないのか」
マオ「オハナ牧場の看板ポケモンだからね。ムーランド」
アママイコ「アッマイ」
モクロー「クロォゥ」
ケララッパ「ケラッパ!」
イーブイ「ブイ?」
 モクローさんとケララッパさんは引き続き、イーブイさんの勧誘中です。
リーリエ「…複雑ですね。イーブイさんはツキさんと一緒がいいみたいですけど…、これまでお世話してきたムーランドさんから見ると、それは確かにいやですよね…」
管理人「そうなんだ…。ムーランドに任せた仕事としては、タマゴが無事孵った時点で終わりではある。しかし、ムーランドはいわば親。だが、イーブイが孵って最初に見たのはツキ君。イーブイにとって、親はツキくんなんだ」
マオ「難しいなぁ…」
アママイコ「アッマイ」
ツキ「…俺は正直、イーブイはいらないぞ」
イーブイ「ブイ?」
モクロー「クロォ!?」
ケララッパ「ケラッパ!?」
ロトム図鑑「どどど、どうしてロト!」
ツキ「そのままだ」
リーリエ「け、けどイーブイさんの気持ちを尊重すれば…。あ」
管理人「それだと、ムーランドの気持ちを無視してしまうんだ」
リーリエ「うぅ~…」
マオ「…よし! こうなったら強行手段よ!」
ツキ「強行手段…?」
マオ「ツキとムーランドの、一対一交渉!」
ツキ「悪いけどケララッパの時も似たようなことしてるんだ」
ケララッパ「ケラッパ!」
 あの時は長のドデカバシさんに、頭を下げてツツケラさんをゲットさせていただきましたからね。
管理人「…けど、ムーランドの気持ちも尊重してくれ」
ツキ「……俺が得することは」
管理人「正直…ないだろう。イーブイが君の手に渡るか。渡らないかだからね」
イーブイ「ブイ」
ツキ「……はぁ。わかったよ」
マオ「よーし、あたしも同行するよ!」
アママイコ「アッマイ!」
リーリエ「わ、わたしも行きます!」

 そうして私たちは、ムーランドさんの元へ交渉に行きました。
管理人「ムーランド、イーブイが来たぞ」
イーブイ「ブイ?」
ムーランド「ム? …ム!」
ツキ「…イーブイ、結局どうなんだよ」
ムーランド「ムゥ」
マオ「ムーランド、どうなの?」
アママイコ「アッマイ?」
リーリエ「これまでお世話してきたタマゴが孵ったのが、イーブイさん。そのイーブイさんとこれからも一緒にいるか。ツキさんへ預けるか。決めるのはあなたですよ…」
ムーランド「ムゥ」
ツキ「…だったら、強くさせてみるか」
ムーランド「ム?」
ツキ「俺がこいつを強くしてやる。そう言ってる」
モクロー「クロゥ」
ケララッパ「ケラッパ!」
ツキ「俺が強くないっていうなら、バトルで証明してやる。ここでイーブイを弱いままにするか。俺に渡して強くするか。そのどっちかだ」
ロトム図鑑「相変わらずすごい自信ロト」
マオ「…へぇ、こういう子なのね」
アママイコ「アッマイ」
ムーランド「ムゥ」
管理人「どうだ、ムーランド」
イーブイ「ブイ?」
ムーランド「…ムゥ」
 ムーランドさんは小さく頷くと、背を向けました。
イーブイ「ブィ」
ムーランド「ムゥ。ムゥラァン!!」
イーブイ「…ブイ?」
 ムーランドさんは、イーブイさんに何かを言い残すと、どこかへ去って行ってしまいました。そして、その去り際に
ムーランド「ムゥラァァァン!!!!」
 ムーランドさんの雄たけびが、響き渡りました。
イーブイ「ブイ!」
管理人「答えは…出たようだ」
ツキ「…仕方ねぇな。来い、イーブイ」
 ツキさんはモンスターボールを構え、イーブイさん目がけて投げました。
イーブイ「ブイ!」
 モンスターボールから発せられる赤い光に包まれ、イーブイさんがボールへ収容されていきます。3回ほど振動すると、〝ポン〟という合図と共に、完全にボールに収まりました。
ツキ「イーブイ、ゲットだ」
モクロー「クロォォゥ!」
ケララッパ「ケラッパァ!」
リーリエ「やりましたね! ツキさん!」
マオ「よかったよかった!」
アママイコ「アッマイ!」
ツキ「…こいつは預かるぞ、ムーランド」
管理人「…ありがとう。大切にしてやってくれよ」
ツキ「…あぁ」

 オハナ牧場を後にし、私たちはマオさんとはここで別れることになりました。
マオ「いやー今日は楽しかった! ありがとう2人とも! モクローちゃんたちもね」
モクロー「クロォゥ」
ツキ「まさかポケモンが1匹増えることになるとは思わなかったけどな」
イーブイ「ブイ!」
リーリエ「また、賑やかになりますね」
マオ「いいねいいねー。その調子で、次の試練もクリアするの?」
ツキ「さっさと通過して、マオの試練もさっさ終わらせてやるよ」
マオ「ずいぶんと舐められてるねーあたしも。けど、次の試練も一筋縄じゃ行かないんじゃない?」
ツキ「…?」
マオ「だって、【せせらぎのおか】のキャプテンは、あたしの大親友、スイレンちゃんなんだから!」
アママイコ「アッマァイ!」
 ツキさんと私に、激震が走りました。
ツキ「…マオ、今なんて言った」
マオ「え? だから次の試練は、〝スイレンの試練〟なんだってば。そのスイレンが、キャプテン!」
リーリエ「本当に…スイレンさんはキャプテンだったんですか!」
ツキ「…あいつ…! 冗談めいたこと言いやがって。冗談かよ!」

 一度だけスイレンさん自身が発言した〝キャプテン宣言〟。あの時は、私は信じかけましたが、ツキさんが「冗談だと」教えてくれたので、冗談かと思っていました。
 しかし、スイレンさんは、紛れもなくキャプテンだったんです。

 

◆ キャプテン・マオ ◆


 

 

旧タイトル:【記録.19】キャプテン・マオ