アローラ(こんにちは)。本日もよろしくお願いします。第24話、スタートします。

ポケモンムーン
  月 詠 の 記 録

【記録.24】
仲間 -


 5番道路のポケモンセンター内に、ポケモンの回復完了を知らせる軽快な音楽が流れ、1人のトレーナーさんが受付にてモンスターボールを3つ。いえ、4つ受け取りました。
ツキ「回復終わったな、お前ら」
ロトム図鑑「ツキがフクスローたちに語り掛けている…。なんとも新鮮な光景ロト…!」
ツキ「なんだと」
ロトム図鑑「事実ロト」
 実際、ツキさんのポケモンさんとの対応はかなり変わりました。ツキさん自身、少し意識している様子ではありますが。
?「フクスローたち、元気になった?」
 ツキさんたちに、1人の女の子と1匹のポケモンさんが話しかけていきました。
ツキ「あぁ。ヌシヨワシにはずいぶんと苦しめられたからな。だが……」
フクスロー「フッスロゥ!」
ツキ「この通りだ」
 モンスターボールから出てきたフクスローさんは、体力が回復して元気になりました。自身の髪のようなものをセットしながらツキさんに応えています。
ツキ「行くんだろ、……スイレン」
スイレン「……うん。連れて行って……ね?」
チョンチー「チョンチ」
 スイレンさんがツキさんに付いていく。このような展開になったことは、ツキさんがスイレンさんの大試練突破、すなわちヨワシさんの撃破まで遡ります。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

スイレン「はい、これ。ヨワシからの贈り物だよ」
 そういってスイレンさんが差し出したのは、Zクリスタル〝ミズZ〟です。
スイレン「スーパーアクアトルネード。しっかり決めてあげてね」
チョンチー「チョンチ!」
ツキ「あぁー、まぁもらっとくか。試練突破の証だしな」
フクスロー「フッスロゥ」
ロトム図鑑「でも、今のツキはみずタイプのポケモンをもっていなければ、みずタイプの技を使えるポケモンもいないロト」
ツキ「そこなんだよなぁ」
スイレン「そっかぁ…。そうだ! イーブイをシャワーズに進化させるのはどう?」
ツキ「シャワーズに? ふーん…」
フクスロー「フッスロゥ」
 ツキさんとフクスローさんは頭の中で、イーブイさんがシャワーズさんへ進化する様子が想像され、その後みずタイプのZワザ〝スーパーアクアトルネード〟を話すシーンが連想されました。
ツキ「どうだよイーブイ」
イーブイ「ブイ?」

 ツキさんはボールからイーブイさんを繰り出して問いかけます。
ロトム図鑑「けど、そんなに焦ってイーブイを進化させることもないと思うロト」
ツキ「それには賛成だな」
 イーブイさんは、現状で7つの進化の可能性を秘めているポケモンさんです。その進化先を決めるのは、時にトレーナーさん自身の偏見であったり、イーブイさんとの話し合いの上であったりと様々です。
ツキ「ということだ。戻れイーブイ」
イーブイ「ブイ?」
ロトム図鑑「だったら、ミズZはしばらく出番なしロトね」
ツキ「ま、そうなるな」
スイレン「待ってツキくん」
ツキ「?」
チョンチー「チョンチ?」
スイレン「……えっとね、この子」
ツキ「この子?」
 そういってスイレンさんhが振り向いた方角には、先ほどまで大試練で戦ったヨワシさんがいました。
ツキ「ヨワシ?」
ヨワシ「ワシワシィ」
スイレン「連れてってほしい。そういっているんだよ」
チョンチー「チョンチ!」
ツキ「連れてってて…、俺にか?」
スイレン「連れて行ってほしいのは実は私でした! …って言ってほしいの? ツキくんは」
ツキ「それは冗談にしても無理があるだろ。ていうか、このヨワシをゲットすること自体無理じゃないか」
フクスロー「フッスロゥ」
ロトム図鑑「確かにそうロト。このヨワシは、スイレンの試練に必要ロト。それにここのヌシポケモンであるし、ゲットは許されないはずロト」
スイレン「むぅ…。表向きはね。…けど、ヌシポケモンだって野生のポケモン。一度信じた、見込のあるトレーナーにはついていきたくなる気持ちがあるんだよ。そしてそれは…」
ツキ「それは? なんだよ」
スイレン「…バトルしよう! ツキくん!」
ツキ「んぁ? 急になんだよ」
スイレン「いいじゃない! さっきのバトル見ていたら、なんだかうずうずしてられないって思ったんだ! ね、やろう!」
チョンチー「チョンチ!」
ツキ「バトルなら願ってもない機会だ。前回の借り、しっかり返してやる! 冗談じゃないだろうな!」
フクスロー「フッスロゥ!」
スイレン「負けないよ、ツキくん。さぁ、頑張ろうチョンチー!」
チョンチー「チョンチ!」
スイレン「もっとしっかり見ていてね、ヨワシ」
ヨワシ「ワシィ」

ロトム図鑑「試合ルールは1対1ロト! どちらかのポケモンが先に戦闘不能となった時点で、この勝負は終了とさせてもらうロト!」
スイレン「あの時よりかは強くなったことは確実。それに、さっきあんな光景見せられちゃったんだからなおさらだよ」
ツキ「悪いなスイレン。あの時はあの時。今は今だ。今回は勝たせてもらう! フクスロー、行ってこい!」
フクスロー「フッスロゥ!」
スイレン「ふふ、ポケモンに対する敬意、しっかり伝わっているよ。私だって! チョンチー!」
チョンチー「チョンチ!」
ロトム図鑑「試合、開始ロト!」
ツキ:フクスロー
VS
スイレン:チョンチー

ツキ「フクスロー、《たいあたり》!」
フクスロー「フッスロゥ!」
 先制をかけたのはフクスローさんです。
スイレン「チョンチー、バブルこうせんでかく乱させて!」
チョンチー「チョンチ! チョォンチィ!!」
フクスロー「フッスロゥ! フッスロゥ!」
ツキ「っ!」
スイレン「ここだよ! エレキボール!」
チョンチー「チョォンチィ!!」
フクスロー「フッスロゥ・・!!」
スイレン「決まったぁ!」
 フクスローさんにエレキボールが命中しました。
ロトム図鑑「ものすごいコントロールロト!」
ツキ「だからどうした。こっちにはこれがある。《こうごうせい》で回復しろ!」
スイレン「《こうごうせい》!?」
フクスロー「スロゥ! フゥクスロォォォゥ」
 【せせらぎのおか】に差す日光が、フクスローさんの傷をいやしていきます。《こうごうせい》は、自身の体力を回復させる技なのです。
スイレン「とっても厄介…!」
チョンチー「チョンチ」
ツキ「フクスロー、《くさのちかい》だ!」
フクスロー「フッスロォォォ!!」
スイレン「チョンチー、水の中へ!」
チョンチー「チョンチ!」
ツキ「なっ! そんなのありか!」
スイレン「バトルで、周りの環境を使ってはいけないってルールは設けてないからね」
ツキ「冗談だろ」
スイレン「これはウソじゃないよ! チョンチー、《シグナルビーム》!!」
チョンチー「チョンチ! チョォォンチ!!」
 池の中から飛び出したチョンチーさんが、フクスローさんに対して攻撃を放ちます。
ツキ「だったらこっちも同じことやればいいだけだな。飛べ、フクスロー!」
フクスロー「スロォゥ!」
スイレン「えぇ!?」
チョンチー「チョンチ!?」
 フクスローさんはチョンチーさんの攻撃が届くか怪しい場所まで飛びました。もちろん、シグナルビームの攻撃を喰らうことはありませんでした。
スイレン「そ…それはないよツキくん」
ツキ「周りの環境使っていいって言いたのはお前だぞ。だから使わせてもらっただけだしな」
フクスロー「フッスロォォォ!」
スイレン「もぅ! だったらこうだよ! チョンチー、《エレキボール》を2つ、待機状態にして!」
チョンチー「チョンチ!」
ツキ「何するつもりだ」
フクスロー「スロゥ」
スイレン「そこから少しでも動けば、私たちの最高の標的だよ」
チョンチー「チョンチ!」
ツキ「ほぉぅ。面白いことやるな。乗ってやるよ」
スイレン「乗る…?」
ツキ「フクスロー、チョンチーに向けて、《たいあたり》で急降下だ!」
フクスロー「スロゥ!」
スイレン「…! 《エレキボール》発射!」
チョンチー「チョォンチィ!!」
ロトム図鑑「無茶ロトー!!!」
 フクスローさんが動き出したことを境に、チョンチーさんもため込んでいた2つの《エレキボール》を打ち出しました。
ツキ「《エレキボール》なんて関係ない! 翼で撃ち落とせ!」
フクスロー「スロゥ! フゥクスロォォゥ!!」
スイレン「ウソ!?」
チョンチー「チョンチ!?」
 なんとフクスローさん、自身の翼をもって2つの《エレキボール》を撃ち落としてしましました。
フクスロー「スロゥ・・!」
ツキ「っ…!」
 しかしやはり《エレキボール》そのもののダメージがあったのでしょうか、フクスローさんは少し態勢を崩してしまいました。
スイレン「チャンス! 空中で態勢を崩したフクスローは、私たちの標的にぴったり! 行くよチョンチー!」
チョンチー「チョンチ!」
スイレン「Zリング! セット、ミズZ!」
チョンチー「チョンチ!!」
 両腕を顔の前で交差させ、その後両腕斜め下の角度へと振り下ろし、胸の前で両腕を前方に組み、Zワザ発動を促せるポーズをとりながら、スイレンさんは続け、チョンチーさんへゼンリョクを送ります。
スイレン「ゼンリョクの奥義、解き放つ! 受け取って!」
チョンチー「チョンチ!!」
スイレン「これが私たちのゼンリョク!」
 Zワザのポーズによって送られたスイレンさんのゼンリョクがチョンチーさんへと伝わり、今、Zワザが繰り出されます。
スイレン「スーパーアクアトルネード!!!
チョンチー「チョォォォォォンチィィッ!!!!!」
 チョンチーさんは大きな水の渦を作り出し、その渦がフクスローさんへと迫ります。
チョンチー「チョンチィ!!」
スイレン「いっけぇぇっぇ!!」
ツキ「負けるか! Zリング! セット、ノーマルZ!」
フクスロー「スロゥ!」
ツキ「…、…っ」
 この時、ツキさんの脳裏に浮かびあがっていたことは、ここ最近のバトルでの、Zワザが逆に不利な状況へ追い込んでしまっている状況でした。
ツキ「………、いや違う。俺が…、やる! 覚悟しろ、俺のゼンリョクを受けさせてやる!!」
 両腕を顔の前で交差させ、その後両腕斜め下の角度へと振り下ろし、胸の前で両腕を前方に組み、Zワザ発動を促せるポーズをとりながら、ツキさんは続け、ゼンリョクをフクスローさんへ届けます。
ツキ「行けっ、Zの力! 受け取れフクスロー! これが俺のゼンリョクだ! おまえの分も合わせて、あの大技を正面からぶち破ってこい!!」」
フクスロー「フゥスロォォォォゥ!!!」
 ツキさんのゼンリョクが、フクスローさんへと伝わりました。
ツキ「全身全霊っ! 全速全身! ゼンリョク…駆け抜けろ!!」
フクスロー「スロォォォォゥ!!!!」
ツキ「 ウルトラダッシュアタック !!!!
フクスロー「フゥゥゥゥゥゥスロウッ!!!」
 フクスローさんが、Zワザ《スーパーアクアトルネード》の中央目がけ、ものすごい速さで駆け出していきます。
フクスロー「フゥクスロォォォォッゥ!!!!」
 ツキさんとフクスローさんのZワザ《ウルトラダッシュアタック》と、スイレンさんとチョンチーさんのZワザ《スーパーアクアトルネード》が、正面からぶつかり合います。それに伴い、かなりの衝撃が生まれます。
ツキ「……!!」
フクスロー「スロゥ!」
ツキ「(違う…! なんだこの感じは…、同じZワザのはずなのに…前と全然違う…! 別物じゃないか…!)」
フクスロー「スロォォォォッゥ!!!!」
チョンチー「チョンチィィィ・・!!!」
スイレン「チョンチー!」
ツキ「貫け、フクスロー!!」
フクスロー「フゥゥクスロォォォォォォ!!!!」
チョンチー「チィィ…!!」
スイレン「す…スーパーアクアトルネードが…!」

 2つのZワザはお互いに競り合い、相殺されました。しかし、その衝撃でチョンチーさんに隙が生まれます。
ツキ「《くさのちかい》で、とどめだー!!!」
フクスロー「フックスロォォォゥ!!!」
チョンチー「チョンチィィ……!」
 最後の、《くさのちかい》が決まりました。
フクスロー「スロォゥ」
チョンチー「チョンチ…」
スイレン「チョンチー!」
ツキ「俺の、俺たちの勝ちだ」
ロトム図鑑「チョ、チョンチー戦闘不能! よってこの勝負、ツキとフクスローの勝ちロト!」

スイレン「……ふぅ。負けちゃったね、チョンチー」
チョンチー「チョンチィ…」
スイレン「ううん。ありがとう、チョンチー」
ツキ「前回の借りは、これでチャラだ。な」
フクスロー「スロゥ」
スイレン「…くす」
ツキ「何がおかしい」
スイレン「だって、見違えちゃうんだもん。少し前のツキくんとは、まるで大違い」
ツキ「…だろうな。なんか、楽になったよ。出すもん全部出したらさ」
スイレン「よかった。……」
ツキ「そういうお前こそ、なんか隠してる…とかないか」
スイレン「…!」
チョンチー「チョンチ」
スイレン「…あ、はははは。そんなことないよ」
ツキ「ならいいけどさ」
スイレン「…あ。…えっと……」
ツキ「それも…〝ウソ〟、だろ」
スイレン「え…?」
ツキ「なんかわかるんだよ。隠すの苦手かよ、スイレン」
スイレン「それってどういう…? あ」
 理由を尋ねようとするスイレンさんに、ツキさんの手が差し伸べられました。
スイレン「これは…?」
ツキ「決めた、俺についてこい」
フクスロー「スロゥ」
ロトム図鑑「って、えぇぇぇぇ!!!?」
チョンチー「チョンチ」
スイレン「……わ、私が…?」
ツキ「ほかにだれがいる」
スイレン「で、でも! 私はキャプテンなんだよ! 私がここから離れるわけには」
ツキ「だったらなんで、俺にヨワシをゲットさせようとした」
スイレン「それは…」
ツキ「ヨワシ、お前も仲間に入れてやる。来い」
ヨワシ「ワシ!」
ツキ「お前はどうするんだ、スイレン」
フクスロー「スロゥ」
スイレン「私…は…」

 

 ツキさんの差し伸べる手を見つめながら、スイレンさんは答えを出します。

スイレン「……行く」
ツキ「あぁ、付いて来い」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 時は戻って、5番道路。ツキさん、ロトムさん、スイレンさん、チョンチーさんが並んでいます。
ツキ「ヨワシのあの姿、特性だったのか」
ロトム図鑑「そうロト! 特性〝ぎょぐん〟ロト!」
ツキ「けど、あんな量のヨワシをゲットなんて、正直めんどうだぞ」
スイレン「問題ないよ、そのヨワシは全体のリーダー…ヌシポケモンなんだから。力が必要な時、きっと集まってくれるはず」
チョンチー「チョンチ!」
ツキ「そうなのか。…まぁ、そういうことにしておくか」
スイレン「…ツキくん」
ツキ「なんだ」
スイレン「その…、改めてよろしくね」
ツキ「…あぁ」
 ツキさんの島巡りの大きな転機となった、今回のスイレンさんの試練。独りよがりで、強がりだったツキさんが、スイレンさん、ヨワシさんと新たな仲間を迎え、再び島巡り制覇、島チャンピオンへ向けて、歩き出しました。

 もちろんその隣には、スイレンさんやフクスローさんたちがいます。


◆ 仲間 ◆


 

 

旧タイトル:【記録.24】「仲間」