アローラ(こんにちは)。本日もよろしくお願いします。第23話、スタートです.

 アーカラ島を歩むツキさんたちは、【せせらぎのおか】にて、スイレンさんの大試練に挑戦中です。しかし、


ロトム図鑑「どうするロト! Zワザは使った、ケララッパはたおれてしまった。Zワザで完全に劣勢になってしまったロトー!!」
ツキ「勝つんだから黙ってろ図鑑! モクロー、イーブイ!」

 その状況は、いいものとはいえることのできない状態でした。そんな中、

フクスロー「フッスロォォゥ!」
ロトム図鑑「モクローがフクスローに進化したロトー!」
ヨワシ「グァァァ」
フクスロー「フッスロォォ」
ツキ「さぁ、覚悟しろよヨワシ」

 モクローさんがフクスローさんへと進化しました。ここからツキさんの逆転が始まります。……始まるのでしょうか。


ポケモンムーン
  月 詠 の 記 録

【記録.23】
 -


フクスロー「フッスロォォ!」
イーブイ「ブイ! ブイブイ!」
ツキ「いいタイミングで進化してくれたな。これで、ヨワシを潰す!」
フクスロー「フッスロォォ!」
ヨワシ「グォォォォ!!」
 巨大なヨワシさんは、フクスローさんに怯みもしていません。しかしそれはフクスローさんも同じです。
ツキ「図鑑、技見せろ」
ロトム図鑑「フクスローの技に更新ありロト! 新たな技、《くさのちかい》を習得しているロト! その代わり、これまでの主力技である《このは》を失ってしまっているロト」
ツキ「より強い技になったんだろ。関係ない! 行けフクスロー、《くさのちかい》!」
フクスロー「スロッ! フゥゥクスゥ…」
ヨワシ「グォォォォ!!!」
 フクスローさんの新たなる技、《くさのちかい》が今…
フクスロー「フゥクスロォォォ!!! ………スロ!?」
ツキ「はぁっ!!?」
イーブイ「ブイ!?」
ロトム図鑑「えぇぇっ!!?」
 繰り出されませんでした。
スイレン「……やっぱりね」
チョンチー「チョンチ?」
ツキ「お、おいどういうことだよ! フクスロー!」
フクスロー「スロォォ! スロッ・・・!」
 もう一度《くさのちかい》の発動を試みるも、やはり放たれません。フクスローさんに一体何が起こったのでしょう。
スイレン「いい、チョンチー。今ツキくんが困っている状況はね、……決定的なんだよ」
チョンチー「チョンチ?」
スイレン「だって、今のフクスローには足りないものがあるから」
チョンチー「チョンチ」
ツキ「だったら《たいあたり》! イーブイ、《スピードスター》!」
フクスロー「フッスロォォ!」
イーブイ「ブイ!」
ヨワシ「グォォォォ!!!」
フクスロー「スロッ! スロォ!」
 ヨワシさんの繰り出した《みずでっぽう》を間一髪免れたフクスローさんですが、そんな彼が振り向いた先で見たものは、
イーブイ「ブイイィィ・・・!」
フクスロー「フッスロォォォ!!」
 《みずでっぽう》が命中し、イーブイさんが倒れていく光景でした。
ヨワシ「グォォォ!!!」
ツキ「っそ!」
ロトム図鑑「イーブイ戦闘不能! イーブイ戦闘不能! このままじゃヤバイロトー!!」
ツキ「わかってるから黙ってろ図鑑! くそ…、なんで《くさのちかい》打てないんだよ。進化して覚えたんじゃないのかよ!」
フクスロー「スロ…!」
ツキ「ったく…」
 ため息をついたツキさんが、この後、とんでもないことを言い放ちました。

ツキ「使えねーな」

フクスロー「フッスロゥ」
スイレン「大試練、やめ」
ツキ「…は?」
スイレン「聞こえなかった? 大試練、やめ」
ツキ「また冗談かよ。冗談も休み休みに…」
スイレン「冗談なんかじゃない!!」
ツキ「…!」
 スイレンさんが怒鳴りました。
スイレン「どうしてなの…ツキくん。ツキくんにとって、ポケモンってなに?」
 スイレンさんが静かに問いかけます。
ツキ「ポケモンか。下等生物…ってところか」
スイレン「つまり、戦いの道具ってこと? そうなの? ねぇ」
 スイレンさんはツキさんへ迫ります。
ツキ「…違うか」
スイレン「どういう意味」
ツキ「あくまでポケモンは、どういうもんだと思ってる」
フクスロー「スロ?」
スイレン「…初めて戦った時、うっすら思ってたけど……やっぱりそうなんだ。あなたは…ツキくんはポケモントレーナーとして最低すぎるよ」
ツキ「……何が悪い。考え方は俺の勝手だ。押し付けてるつもりはないぞ」
スイレン「そんな考え方で、トレーナーが務まると思ってるの。ツキくんのために戦ってくれたり、一緒にいてくれるポケモンたちに、申し訳ないと思えないの」
チョンチー「チョンチ…」
ツキ「……お前、なんで泣いてるんだ…」
 ツキさんが見た先には、涙ぐむスイレンさんの姿でした。
ツキ「なんでだよ。なんで、自分に関係ないことにそこまで……するんだよ」
フクスロー「スロゥ」
ツキ「…なんだ」
ロトム図鑑「ツキ。フクスローはこういっているロト。〝それはツキも同じだ〟って」
ツキ「俺も?」
ロトム図鑑「ボクは知らないロト。けど、ツキとフクスローの出会いは、とある共通の物事だった…。このくらいのデータはあるロト」
ツキ「…。……あっ」
スイレン「思い当たるんだね」
 ツキさんとフクスローさんの出会い。それは…、
ツキ「……〝困ってるリーリエを助けたら、かっこいいだろ〟」
スイレン「そうだったんだね。ありがとうツキくん」
ツキ「んぁ?」
 突然の感謝の言葉に、ツキさんは調子をおかしくしてしまいそうになっています。
スイレン「どうしても知りたかったんだ。どうしてツキくんのポケモンたちが、そんなに頑張るんだろうって。そうだったんだね」
ツキ「……趣旨がおかしくなってきてないか?」
スイレン「ごめんね」
ツキ「で、結局なんなんだよ」
スイレン「……ここまで頑張ってくれるフクスローやイーブイ、ケララッパのこと。ツキくんはどう思ってる?」
ツキ「…勝つための」
スイレン「勝つための?」
ツキ「…………〝仲間〟、なんて言葉、言わないからな」
 ツキさんは照れながらも言いました。
スイレン「ツキくん、かわいい」
ツキ「わ、悪いかよ…」
フクスロー「フッスロォォ!」
ツキ「フクスローも、なんだよ。俺をからかっているのか」
チョンチー「チョンチ」
スイレン「思ってたんだね。本当は。ポケモンは戦いの道具なんかじゃないって」
ツキ「……、思ってるつもりはないんだよ。でもな、そうなってるんだよ。その結果どうだ。俺は…知らずしらずに一回、トレーナーじゃなくなってんだよ!」
スイレン「そう。…辛かったね」
 スイレンさんはツキさんの目の前に立ち、俯いているツキさんの顔を伺うこともなく、静かに語り掛けます。
ツキ「また…知らない間に仲間が離れていく…! 俺はそんなつもりないんだよ!」
 ツキさんの脳裏に、ここ最近の出来事がフラッシュバックのように映し出されていきます。
ツキ「リーリエには離れられるし、グラジオにはバカトレーナー呼ばわり、そしてスイレンには…、トレーナーとして最低と言われ……」
フクスロー「スロォ」
ツキ「全部わかってるんだよ! 自然とやったらこうなるんだよ…。なんでこうなるんだよ!」
ロトム図鑑「ツキが…こんなにも弱音を吐く姿は初めてロト…!」
ツキ「弱音だぁ? もともと……俺なんて強くない。強く見せてきた。そうしたら強くなれる。そう思ったからな。その結果どうだよ。今度はポケモンらが離れていっただろ。……どうしたらいいか……、わかんねぇんだよ」
スイレン「……ツキくん。答えは、難しいよ」
ツキ「だろうな。俺みたいなトレーナーとして最低な奴には……な」
スイレン「…嘘だよ」
チョンチー「チョンチ!?」
フクスロー「スロゥ」
ロトム図鑑「冗談ロトー!?」
ツキ「…はっ。ここまで来て冗談かよ。お前も…呆れる奴だな」
スイレン「それはありがとう」
ツキ「褒めてねぇよ」
スイレン「ふふ。答えは簡単。ツキくん、隣見て」
ツキ「隣…」
 ツキくんが振り向いた先、そこにいるのは、
フクスロー「スロォ」
ツキ「フクスロー…だろ」
フクスロー「スロォ!」
スイレン「うん。フクスローだね。私たちのそばには、大切なパートナーがいてくれる。とっても強くて! 頼もしくて! そんなすごいパートナーがそばにいてくれる」
チョンチー「チョンチ!」
スイレン「これって、とっても。とーっても! 励まされてるってことじゃない!」
 スイレンさんはチョンチーさんを抱きしめ、チョンチーさんもまたスイレンさんに抱き着いています。
ツキ「……パートナー。〝仲間〟…!」
フクスロー「フッスロォォ!」
ツキ「…そうだったんだな。お前やケララッパが、イーブイを庇っていた理由がなんとなくわかった。仲間を助ける…か」
スイレン「一人で強くなっても、それには限度があるんだよ。だから私たちはこうして協力して、支えあうの。アローラも、そうやって栄えてきたって言われているんだよ」
ツキ「あの面倒な〝仲間を呼ぶ〟とかが…それか」
ロトム図鑑「あの行為は、アローラのポケモンが主に行う行為ロト。その可能性はかなり高いとみるロト!」
スイレン「だから……、私たちもこうして…助けあおうよ」
ツキ「スイレン…」
スイレン「頼もしい仲間たちがいれば、怖いものなんてないんだよ」
ツキ「……怖いものも、ない。か」
フクスロー「フッスロゥ」
スイレン「……あ、今の嘘」
ツキ「はぁっ!?」
 いい雰囲気、ぶち壊しです。
スイレン「といっても、怖いものは怖いもんね! ほとんど、〝ほとんど〟ね」
チョンチー「チョンチ」
ツキ「…だな」
フクスロー「フッスロォゥ」
 ツキさん、フクスローさん、スイレンさん、チョンチーさんのやり取りを間近で見ていたポケモンさんがいます。
ヌシヨワシ「グォォォ」
 その目は、輝いているように見えます。いえ、目からではありません。無数の視線から、と言いましょうか。
ツキ「……なんか、すっきりしたな」
フクスロー「フッスロォォ」
スイレン「もう怖いものなしだね!」
ツキ「嘘だろ」
スイレン「うん」
ツキ「さっき使ったネタでやってんじゃねぇよ、全然、励みになんかなってないからな!」
スイレン「私だって、励ましてるつもりはないよ。ぜーんぜん、ね」
ツキ「よく言うよ」
スイレン「ツキくんこそ」
ツキ「…フクスロー」
フクスロー「スロゥ」
ツキ「…行くぞ」
フクスロー「スロ!」
 ツキさんがフクスローさんへ言い放った言葉。それは、これまで一方的になっていた発言とは対となるものでした。
ツキ「俺たちのゼンリョク、こんなもんじゃないってことを、あのヌシに思い知らせてやるか」
フクスロー「フッスロォォォ!!」
 お互いがお互いの気持ちを尊重し合いました。ツキさんの目の色は、先ほどとは全く違うものに見えます。
スイレン「……ツキくん、やったね」
チョンチー「チョンチ」
スイレン「ヨワシ、もうひと踏ん張りお願いー!」
ヌシヨワシ「グォォォォ!!!!」
 巨大なヨワシさんが再びオーラを纏い、大試練が再開されます。

スイレン「大試練、再開!」
ヌシヨワシ「グォォォォォ!!!」
 ヌシヨワシさんは待ってましたと言わんばかりに、いきなりの《みずでっぽう》です。
ツキ「見せてやる。俺の、〝俺たち〟の力をな!!」
フクスロー「フッスロォォォ!!」
ツキ「《たいあたり》!」
フクスロー「スロッ! フッスロォォォ!!」
 フクスローさんは《みずでっぽう》》へ迫っていきます。
スイレン「えぇっ!」
チョンチー「チョンチ!?」
フクスロー「フッスロォォォ!!」
 そのまま《みずでっぽう》へ突撃してしまいました。
ロトム図鑑「いくらなんで無茶ロトー! あの《みずでっぽう》の威力は、実に《ハイドロポンプ》に匹敵するロト! いくら相性のいいフクスローでも…!」
ツキ「お前は相変わらずダメ図鑑だな」
ロトム図鑑「ロト!」
ツキ「そんなもんで、フクスローがやられるかよ」
フクスロー「フッスロォォォ!!」
ヌシヨワシ「グォォ!」
スイレン「《みずでっぽう》を、切り抜けた!」
チョンチー「チョンチ!」
ヌシヨワシ「グォォ!!!」
ツキ「最高の距離だ。決めに行くぞ!」
フクスロー「フッスロォォォ!!」
 決死の覚悟で飛び込み、《みずでっぽう》を切り抜けたフクスローさんのいる場所、それはヌシヨワシさんの目の前です。
ツキ「出せる。…俺たちでやってやる! 行け、《くさのちかい》!!」
フクスロー「フッスロォォォ!!!」
スイレン「出たぁ!」
チョンチー「チョンチ!」
ロトム図鑑「成功ロト!」
ツキ「絶対離させてやるか。絶対、二度とトレーナー権はく奪されるかよ! 俺の誓い、受け取れよ!!」
フクスロー「フッスロォォォ!!!!」
ヌシヨワシ「グォォ・・・!!!」
ツキ「俺たちは……〝仲間〟になったんだからな!!」
フクスロー「フッスロォォォ!!!!」
ヌシヨワシ「グォォ……!!!!」
パァァァァン
ツキ「…!」
フクスロー「フッスロ!」
 《くさのちかい》で大きなダメージを受けた巨大なヌシヨワシさんはなんと、その巨大な姿を崩壊させました。
ツキ「…なんだ、これ」
フクスロー「フッスロ?」
ヨワシたち「ワシワシ」
 ツキさんとフクスローさんが見た光景は、多数小さなヨワシさんたちでした。
ツキ「そういうこと…か」
フクスロー「フッスロォ」
スイレン「一匹の力は小さくても、集まればヌシのように大きくなる。それがヨワシだよ」
チョンチー「チョンチ」
ツキ「……そういう試練だったってことか」
スイレン「…ツキくんは、ヨワシを倒した。ポケモンと協力してね」
ツキ「あぁ」
フクスロー「フッスロゥ」
スイレン「おめでとう。ツキくん、大試練…失敗!」

 スイレンさんはウソを言ってますが、成功しています。
ツキ「いろいろあったな…。ここまで手間かかることしてくれたスイレンに、礼なんて言わないぞ」
チョンチー「チョンチ?」
フクスロー「フッスロゥ」
ツキ「まぁ…」
スイレン「うん」
ツキ&スイレン「ウソ」
ツキ「だがなって……またかよ!」
スイレン「ツキくんが私の真似した!」
ツキ「うるさい黙れよ! やかましいわ!」
スイレン「ふふ」
チョンチー「チョンチ」
フクスロー「フッスロォ」
ロトム図鑑「ヤレヤレ、ロト」
 こうして、スイレンさんの試練は終わりを告げました。この試練を通じてツキさんは一段と、自分を変えることができたと思います。

◆ 涙 ◆


 

 

旧タイトル:【記録.23】「振り向いて」