アローラ(こんにちは)。本日もよろしくお願いします。第5話、スタートです。


 ツキさんという人と出会い、そのツキさんが、メレメレ島の島キングのハラさんからモクローさんを貰った翌日。ツキさんは島巡りへと挑むトレーナーさんとポケモンさんを祝う祭典に出席し、同じく島巡りに挑まれるハウさんと対戦。見事勝利されました。

 そしてその翌日である本日。私はククイ博士より、ツキさんを研究所に招くよう頼まれまして、1番道路。ハウオリシティのはずれにあるツキさんのお宅へとやってきました。

 やってきた…のですが…。

リーリエ「…」
ほしぐも「ピュイ?」
リーリエ「だ、大丈夫でしょうか?」
 ツキさんのお宅の玄関前で、立ち止まっていました。お恥ずかしながら、チャイムを押せず、アタフタしていました。
ほしぐも「ぴゅい!」
リーリエ「あっ!」
「ピンポーン」
 ほしぐもちゃんに、先を越されてしまいました。


ポケモンムーン
  月 詠 の 記 録


【記録.5】
Zの一撃 -

ツキ「チャイム押せずにアタフタするとか、可愛いじゃん」
モクロー「クロゥ」
リーリエ「そ、そんなことはないですっ!」
ほしぐも「ピュィ!」
 無事、ツキさんと合流することに成功しましたが、先ほどの件はすべてモニターで見られていたようです。それに、ツキさんとツキさんのお母様と一緒に笑われていたので、私は顔を真っ赤にしてしまいました。
リーリエ「と、とにかく今回は、ククイ博士からツキさんを研究所へ招くよう頼まれて、ツキさんを迎えに来ましたから」
ツキ「変態博士って自分の研究所持ってたのか」
リーリエ「ポケモン博士ですからね。私が居候させてもらっている場所でもあるんですよ」
ツキ「あー! 前言ってたな」
 そう話し合っている時、ツキさんは何度か左腕を見たり、手で触ったりして確認するものがありました。昨日、島キングのハラさんよりいただいた、Zリングです。Zリングには、お試し用のZクリスタル、「お試しクサZ」が付いてます。
ツキ「ま、行ってみるか」
リーリエ「はい。では、ほしぐもちゃん。バッグに入っていてくださいね」
ほしぐも「ピュィ!」
ツキ「モクローもとりあいずボール入っとけ」
モクロー「クロゥ!」
 ククイ博士の研究所は、ツキさんのお宅を南に行った方面へあります。そこを目指して歩きます。


 それほど距離はないのですが、ある程度歩いていると、ツキさんが気にした表情で語りかけてきました。
ツキ「そういえばリーリエ。むしよけスプレー吹いたか?」
リーリエ「スプレーですか? もちろん抜かりはありません!」
 このことに関してはしっかり自信を持てることなので、力強く言いました。
 しかしツキさんは…

ツキ「ま、効果なかったら俺が守ってやる」
 私の自信はお構いなしみたいですね。
 その自信をさらに陥れるように…

ヤングース「ヤングゥ!」
リーリエ「ヒッ…!」
 月詠の記録初の野生のポケモンさんのご登場です。
ツキ「あいつは?」
リーリエ「や、ヤングースさんです。」
 ヤングースさんは昼行性のポケモンさんで、夜になるとその場にパタリと倒れるように眠ってしまうそうです。そのヤングースさん。元々アローラ地方のポケモンさんではなく、どこかの地方からかやってきたポケモンさんらしいですよ。
ツキ「それじゃあ、さっそく有言実行と言ってやるよ!」
モクロー「クロォゥ!」
リーリエ「あ、ありがとうございます」
ヤングース「ヤングゥ!!」
 モクローさんを繰り出して戦闘態勢を取ったツキさん。それに対して野生のヤングースさん。私たちを敵と認識したのでしょうか。飛びかかってきました。
ツキ「決めてやる!」
 その時、ツキさんがとった行動は…Zワザをを使う行動でした。
ツキ「踊り? 関係ない! 行けモクロー!!」
モクロー「ク、クロォォゥ・・!!!」

 光輝くZクリスタルとリングに共鳴するように光を纏うモクローさん。そして…
リーリエ「あっ! それではダメです!!」
ツキ「ブルームシャインエクストラ!!!
モクロー「クロォォォォオォォォォ!!!!!」
ヤングース「ヤ、ヤングゥゥゥ・・・ス!!?」
ドグァァァァァァン
リーリエ「あ…っ」
 私の声も届かず、ツキさんは使ってしまいました。一度きりのお試しクサZを。
ツキ「ふぃー。これいいな!」
ヤングース「ヤングゥ…」
モクロー「クロゥ…!クロゥ…!」
ツキ「モクローの疲れよう的に、相当負担かかるとみた。あ、どうだったか。リーリエ」
リーリエ「えっと…、Zクリスタルを見てみてください…」
ツキ「Zクリスタル?」
 お試しZクリスタルは、一度使用すると跡形もなく砕け散ってしまいます。いいえ、そのように作られているのです。
 もちろん、先ほど使ってしまったツキさんのお試しZクリスタルも…

ツキ「…色が消えてる…?」
リーリエ「えっ?」
 砕け散っていませんでした。クサZの色がなくなり、透明になっている状態でした。
ツキ「これ、どういうことだ?」
リーリエ「い…いえ、私にも…わかりません」
 どうして…お試しZクリスタルが砕けなかったのでしょうか…。この時は全く、その意味がわかりませんでした。そう。この時は…。

モクロー「クロゥ?」
ツキ「どうした?」
モクロー「クロォゥ」
 ツキさんのクサZがその色を失った頃、モクローさんが、誰かが近づいてくることを感知しました。
ツキ「誰か…来る」
リーリエ「えっ」
青い髪の少女「ねぇ。さっきのってZワザだと思うんだけど…、使ったのあなたたち?」
 海の方から近づいてきたのは、青い髪をした女の子でした。
ツキ「…あ、あぁ。俺だけど」
青い髪の少女「ホント!」
ツキ「まぁな」
 やけにツキさんが威張ってるようにして見えますが、その言動には僅かながらの焦りも見えます。
リーリエ「そういえば…ツキさん。この子、リリィタウンで見かけませんでしたか?」
ツキ「そうだったか? …そういわれればそうだったような」
スイレン「私、スイレン。 スイレン って呼んで。それでこっちが」ポーン
チョンチー「チョンチ」
スイレン「チョンチー!」
ツキ「唐突な自己紹介だな。ま、いっか。俺はツキ。で、モクロー」
モクロー「クロゥ!」
リーリエ「リーリエといいます」
スイレン「ツキくんに、リーリエさんだね。よろしくね」
チョンチー「チョンチ!」
 スイレンさんとチョンチーさんの登場です。これからよろしくお願いします。
スイレン「突然なんだけど、ツキくん。私のチョンチーとポケモン勝負してみない?」
ツキ「これまたずいぶんと唐突だな」
スイレン「だって、Zワザを使うトレーナー。気になっちゃうから。ね」
チョンチー「チョンチ!」
スイレン「チョンチーもそう思ってるって」
ツキ「つまり、スイレンもZリング持ってるってことでいいのか」
スイレン「そう。私、アローラでも有名なポケモントレーナーなんです!」
リーリエ「えっと…スイレンさん…で、あまり聞き覚えがないのですが」
スイレン「冗談だよ」
ツキ「冗談かよ」
 上手…かは私わかりませんが、上手な冗談に乗せられてしまいました。

 ツキさんとモクロー。スイレンさんとチョンチーの会話で和まされながら、ツキさんとスイレンさんは勝負へ入ります。


スイレン「勝負、引き受けてくれてありがとう。ツキくん」
チョンチー「チョンチ!」
ツキ「勝つだけの試合だからな。そりゃ引き受けてやるさ」
モクロー「クロゥ!」
スイレン「すごい自信…!けど、私たちも負けないから!」
チョンチー「チョンチ!」
リーリエ「では、ツキさん。スイレンさん。どちらも頑張ってくださいね!」
ツキ「あぁ! 見てろ! モクロー!」
モクロー「クロォゥ!」
スイレン「行っておいで、チョンチー!」
チョンチー「チョンチ!」
ツキ「こっちから決め込む! このは!!」
モクロー「クロォォゥ!!」
スイレン「チョンチー、ちょうおんぱだよ!」
チョンチー「チョンチ!」
モクロー「クロゥ!?」
 「ちょうおんぱ」による音波が、このはの軌道を乱し、相殺しました。
ツキ「弱点は対策済みってか」
スイレン「タイプ相性が不利な時は、どうその攻撃を受けないかは大事になるからね。今度はこっちだよ! みずでっぽう!」
チョンチー「チョンチ!」
ツキ「飛べ!」
モクロー「クロゥ!」
スイレン「あっ!」
ツキ「空に逃げればこっちのもんだ! このは!!」
モクロー「クロォォウ!!」
チョンチー「チョンチ・・!!」
 「このは」が決まりました。効果抜群です。
チョンチー「チィ・・!!」
スイレン「勢いにのったこのは。凄いね」
ツキ「たいあたり!!」
モクロー「クロォォゥ!!」
スイレン「エレキボールだよ!」
チョンチー「チョンチィ!!」
モクロー「クロォォゥ・!!」
ツキ「っ!」

 はたいあたりを繰り出したモクローさんに、チョンチーさんはエレキボールで対抗します。
スイレン「ここだよ。みずびたし!」
チョンチー「チョンチィ!」
モクロー「クロォゥ・・!クロッ!?」
ツキ「何もないぞ。このは!!」
モクロー「クロォォゥ!!」
スイレン「エレキボールだよ!」
チョンチー「チョンチィ!!」
モクロー「クロゥ! クロッ!?」
 2つの技は相殺したかと思われてましたが、エレキボールが勝りました。
スイレン「やったねチョンチー!」
チョンチー「チョンチ!」
モクロー「クロォゥ・・!」
ツキ「なんでだ…!」
スイレン「みずびたしだよ。」
ツキ「みずびたし?」
 みずびたしは、直接ダメージを与える技ではありません。対象ポケモンのタイプを、「みずタイプ」に変更してしまう技です。この技でみずタイプになってしまったモクローさんは、「このは」がタイプ不一致となり、「エレキボール」に押し負けてしまったわけですね。ポケモンさんの繰り出す技は、自身のタイプと技のタイプが同じ場合威力が上がります。
ツキ「だが、特性までは干渉できないだろ」
スイレン「実はできます!」
ツキ「まじか…!」
スイレン「冗談です」
ツキ「またかよ」
スイレン「それでも、私とチョンチーが有利になったことは変わらないよ!」
ツキ「だが、そっちもみずタイプ技がこっちに効きにくくなっていることは変わらない! たいあたり!」
モクロー「クロォォゥ!!」
スイレン「みずでっぽう!」
チョンチー「チョンチィ!!」
スイレン「攻撃の威力なら緩めれるんだよね」
モクロー「クロォゥ!」
チョンチー「チョンチ・・!」

 攻撃こそ当たったものの、モクローさんのたいあたりの威力を、みずでっぽうをクッションにすることで緩和しました。
ツキ「だったら、そろそろ決めに行ってやるよ」
スイレン「あ、Zワザ!」
ツキ「必要ない! モクロー、たいあたり!!」
モクロー「クロォゥ!!」
スイレン「必要…ない? チョンチー、エレキボール!」
チョンチー「チョンチィ!!」
ツキ「っ…! このはで向かい撃て!」
モクロー「クロォォゥ!!」
ドォォンッ
モクロー「クロッ・・!!」
 なんとか「エレキボール」からは逃れることに成功しましたが、モクローさんもかなりダメージを負ってしまいました。あと一撃「エレキボール」を喰らってしまったら…おしまいです。
ツキ「くっ…そ…!」
スイレン「これでもまだ、私とチョンチーに対して、Zワザを使う意味がないって言えるかな?」
チョンチー「チョンチィ」
ツキ「……」
モクロー「クロゥ…!クロゥ…!」
 ツキさんはモクローさんの方を見ると、再びスイレンさんとチョンチーさんへとその視線を戻しました。
ツキ「…っ!」
スイレン「エレキボールだよ!!」
チョンチー「チョンチィ!!」
ツキ「飛べっ!!」
モクロー「クロゥ…!クロォォゥ!!」
ツキ「このは!!」
モクロー「クゥゥゥロォォォォゥ!!!!」
バシュゥン ドォォンッ
スイレン「…相殺」
 上空から繰り出す、勢いが増し、さらに範囲も広がった「このは」の一撃。特性「しんりょく」も嚙み合わさって、その威力を上げることに成功しました。しかし、タイプ不一致になってしまっていることが難点です。
リーリエ「ツキさん…」
ツキ「勝ってやるよ…!」
モクロー「クロゥ…!クロゥ…!」
スイレン「………。なんだか、独り善がり」
ツキ「…なんだ」
スイレン「これで最後だよ。ツキくん。モクロー!」
チョンチー「チョンチ!」
 スイレンさんが掲げた左腕には、ツキさんと同じZリングが。そして、付いているZクリスタルは…
スイレン「ミズZ! Zクリスタル、オン!」
ツキ「ミズ…!」
スイレン「私の全力! 受け取って、チョンチー!!」
 Zクリスタルから放たれる光をオーラのように纏い、スイレンさんはまるで波が立つような様子を動きで表し、そのオーラをチョンチーへと送りました。
チョンチー「チョンチィ!!」
 光を受け取ったチョンチーも、そのオーラを纏い、ゼンリョクの力を発揮します。
スイレン「これが、私たちのゼンリョクだよ!」
ツキ「っ…!」
チョンチー「チョンチィィィ!!!」
スイレン「スーパーアクアトルネード!!!
チョンチー「チョンチィィィィィ!!!!」
モクロー「クロッ・・!!」
ツキ「このは!!!」
モクロー「ク、クロォォォゥ!!!」
 決死の「このは」も、スーパーアクアトルネードにいとも容易く飲み込まれてしまいました。
スイレン「スーパーアクアトルネードの、餌食に!」
チョンチー「チョンチィィイ!!!」
モクロー「クロォォォォ・・・!!!」
ツキ「ぐっ…!!」
チョンチー「チョンチ!」
モクロー「クロォォゥ…」
ツキ「ま、負けた…!」
リーリエ「ツキさんとモクローさんが…負けた」
スイレン「やった、勝てたね。チョンチー!」
チョンチー「チョンチ!」
モクロー「クロォゥ…」
ツキ「…クサZさえあれば…、勝ってたんだ…!」
 ツキさん。完敗です。

スイレン「そういえばツキくん」
ツキ「なんだ」
スイレン「…さっきはどうして、Zワザを使わなかったの」
リーリエ「あっ」
ツキ「な、なんだっていいだろ。…別にさ」
スイレン「…Zリングはある。だったら…どうして。…あっ」
 ツキくんの左腕に付いているZリングを見ていたスイレンさんが、何かに気が付きました。
スイレン「この透明なの…、もしかしてZクリスタル…!」
ツキ「…あぁ。」
スイレン「だったらさっきのはお試し? でも、お試しだったら…透明にならずに砕けてるし…」
ツキ「その辺は俺にもわからないし…」
リーリエ「私もその時一緒でしたが、どうしてこうなったかは…」
スイレン「だからさっき、Zワザを使わなかったんだ。使わなかったというより、使えなかったんだね…。なんだか、ごめんね。私だけ使っちゃって」
ツキ「別にいい。俺がもっと強くなれば、Zワザなんて使わなくても勝って見せるからさ」
スイレン「凄い! 私が実はキャプテンだってことくらい凄い!」
ツキ「キャプテン?」
リーリエ「ま、まさか…!スイレンさんは、キャプテンなんですか!? それなら、どうしてここに…?」
スイレン「リーリエさん。あなたは凄く素直なんだね」
リーリエ「えっ?」
ツキ「はいはい冗談冗談。どうせ嘘だろ」
リーリエ「そ、そうでしょうか…」

 呆れるツキさんと、事実かどうかわからず困惑する私に苦笑いしながら、私たちはスイレンさんとチョンチーさんに別れを告げ、再びククイ博士の研究所へと向かい始めました。また会えるといいですね。スイレンさん。


スイレン「ツキくん。あっさり釣れちゃうかもね」
チョンチー「チョンチ?」
スイレン「まぁ、キャプテンだけど、今はキャプテンじゃないし。冗談のようで冗談ではないんだけど…。また、どこかで会えるかな」



◆ ゼンリョクの一撃 ◆

 

 

旧タイトル:【記録.5】Zの一撃