どもども、腐女子連合軍第5都市B司令部特例隊長グレープフルーツ三世、略してグレです。
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改訂日:2011.06.27
古泉一樹の絶望 Ⅴ




「ここに、古泉が居るのか?」
長門に連れられて来たのは小綺麗なアパートだった。
このアパートの近くには以前映画撮影をしたあの広場があった。
もしかしたら古泉の家なのかもしれない。
長門は何も言わず、階段を上って行き、表札が付いていない部屋の前で足を止めた。
「古泉一樹が異空間へ移動したことを確認。この中は異空間化している」
そう言って、扉に手を触れると、開けていないのに俺と長門は部屋の中に移動していた。
中は至って普通の部屋だった。
違和感と言えば、長門の部屋のように生活感が薄いというところだろう。
「俺達は異空間にいるのか?」
「異空間の発生している場所に居る。ただ、まだ異空間に侵入していない。異空間侵入に必要な解析の途中」
長門がその解析とやらをしている間、俺は部屋の中を見渡した。
部屋は二つあり、もう一つの部屋は寝室だろう。
勝手に部屋を散策するのは気が引けるが、好奇心は抑えられず、隣の部屋に繋がるドアを開ける。
予想通り、大きめのベッドが一つあり、横を見ると、ハンガーで北高の制服が三着掛けられていた。
おいおい、なんで制服が三着もあるんだよ。
一着の制服の袖を持ち上げてみると、何カ所かに赤黒いのもが付着していた。
これは、血・・・なのか?
残りの二着を確認してみると、一着はクリーニングしたばかりのようで綺麗だったが、もう一着の首元はやはり色が変色していた。
神人を倒す時に付いたのか?
怪我をしていたなんて聞いていない。
閉鎖空間が頻繁に発生すると「疲れる」という愚痴を遠回しに何度か言っていたのは聞いていたが。
だから、神人を倒すのは大変だな、程度にしか思っていなかった。
なんでこういう事を隠すんだよ!
言ってくれれば。
・・・・・・言ってくれれば、何だ?
古泉が俺に言ったからってどうも出来ないだろ。
あいつが背負い込んだものを俺が代わりに背負えるわけでもない。
掴んだ制服の袖をギュッと握りしめた。
数十分前に佐伯涼介が見せたあの記憶が頭を過る。
重い。
重いよな、古泉。
お前はあんなもん背負って、それでも笑って今まで生きてきたんだな。
だから、あいつに・・・あんな奴に身体も、そして心も好きなようにさせてたんだよな。
泣くなよ、俺。
古泉が泣いてないのに俺が泣くなんて、そんなの卑怯だ。
「・・・・・・準備が出来た」
長門の静かな声が聞こえた。
長門が立っている場所へ行くと、そこはなんの変哲も無いリビングだった。
「ここが異空間の発生源。今から移動する」
そう言うと、俺が言葉を発する前に場面が変わった。
頼む、長門。
せめて心の準備だけでもさせてくれ。
「こ、ここは・・・」
「古泉一樹が創造した局地的非浸食性融合異空間」
異空間と聞いていたから、てっきりコンピ研の某部長氏が閉じ込められていた例の空間かハルヒが発生させている灰色の閉鎖空間を想像していたが、今俺が居る場所はどこを見ても黒一色だ。
ただ、不思議な事に自分自身の姿ははっきりくっきり見えるし、すぐ隣に居る長門の姿も普通見える。
闇、というより黒一色の部屋に居るみたいな感覚だ。
「古泉はどこに居るんだ?」
俺が長門に質問すると、最も会いたくない奴が向こうから姿を見せた。
「予想はしていたが、まさかTFEI端末もこの『鍵』に力を貸すとは思わなかったな」
呆れたような声で佐伯涼介は笑っていた。
長門は佐伯涼介から目を離さずにジッと見つめている。
「・・・古泉はどこだ?」
聞いたところで教えてくれるとは思わないが。
「聞いてどうする?一樹はお前達の所へは戻らないと、言ったはずだけどな」
古泉の上司は薄く笑いながら俺に近づいて来た。
「それに、連れ帰った所で一樹はまたここに来るだろうさ。これは一樹が願ったことだ」
うるさい、お前には用は無い!
俺は古泉に会いたいんだ。
佐伯涼介は長門を見て笑ったかと思うと、俺の方を見た。
「ここでしばらく待てば一樹に会えるはずだ。その後どうするかは・・・そのTFEIにでも聞くと良いさ」
この言葉が信用出来るものなのかは分からない。
「なんで教えるのかって顔だな。教えてやろうか?」
この男の笑顔は、古泉の偽善的笑顔よりも俺を苛つかせる。
「一樹は俺に絶対服従の身だ。それは例え宇宙人だろうと未来人だろうと、それこそ『神』だろうと関係無く、俺の言う事は一番に聞く。それが古泉一樹という人間だ。そんな一樹が、無力とも言える『鍵』のお前の言葉なんて聞くはずがないだろう?」
言葉が、刺さる。
クツクツと笑うこの男を殴りたいという衝動を必死に抑える。
ここで殴ったら、こいつの言った事を認めるようで、悔しい。
「それに、これは規定事項ってヤツだ。未来人もTFEIも協力はしても阻止はしない。まあ、精々悪あがきでもするんだな」
規定事項・・・。
朝比奈さんも言っていた、未来に大きく関わる絶対事項。
それでも、
それでも俺は、古泉を繋ぎ止めたい。
それが俺のエゴだろうとなんだろうと。
「長門、古泉は本当に此処に現れるのか?」
「・・・・・・」
長門が無言で腕を水平に上げ、指を指した。
その方向に目をやると、薄ぼんやりと人影が見える。
よく見ると、病院で別れたままの服装で古泉がうつぶせで倒れていた。
「古泉っ!」
俺は駆け寄って古泉に触れた瞬間、あの時のように古泉の記憶が流れ込んできた。
「・・・・・・っ!」
思わず腕を引っ込めると、俺に気付いた古泉が視線を合わせた。
「なん、で・・・ここに・・・」
古泉は荒い息で声を発する。
起き上がる事が出来ないのか、視線だけが俺の方を向いている。
「ここは、あなたの居る所では、ありません。早、く・・・」
うるせえよ。
誰がお前の言う事なんて聞くか!
「何、を・・・!?」
目を見開く古泉を他所に、古泉の腕を俺の首へ回し、立ち上がる。
無秩序に流れ込む記憶が鬱陶しい。
あー、頭が痛いな畜生!
「離して・・・さい・・・!もう、僕に関わらないでくだ・・・」
「少し静かにしてろ」
お前の言う事なんか誰が聞くか。
お前が、勝手に消えるっつーなら俺も勝手にお前を連れて帰るさ。
「長門、早くここから出してくれ!」
「・・・・・・」
俺の言葉は聞こえているはずなのに、長門は微動だにしない。
どうした、長門?
早くこんな所から俺達を出してくれ。
「ははは、さすがのTFEI端末もこの空間から一樹を連れ出す事は出来ない、か」
長門の斜め後ろから佐伯涼介は面白いものを見てるかのように笑っている。
「それとも、これ以上の干渉は統合思念体から許可は下されていないか?」
どういうことだ、長門?
「・・・・・・」
長門は一切言葉を発しない。
この男が言ったように、お前も古泉を助ける事が出来ないのか?
「一樹、その『鍵』から離れろ」
「・・・っ・・・・・・」
身体を支えていた古泉が小さく震えたかと思うと、俺を突き飛ばすように身体を押され、お互いにバランスを崩してその場に倒れ込む。
「痛てっ・・・!」
上手く受け身を取れず、ダメージがそのまま身体を駆け巡った。
おそらく古泉も同じだろう。
「こいず」
「同化が遅れてるな・・・一樹、まさか拒否をしてるわけじゃないだろうな?」
俺が声をかける前に、いつの間にか近づいていた佐伯涼介が倒れている古泉の頭に手を掛けていた。
俺からは優しく頭を撫でているように見える。
しかし、古泉の顔色は更に青くなり、小刻みに震えている。
「・・・ぁ・・・・・・」
「お前が今日この日まで『普通の高校生活』が出来たのは奇跡だ、と何度も教えてやっただろう?」
「・・・ひっ・・・」
「もう夢は終わりだ。早くお前のやるべき事をしろ。この時の為だけにお前は生きてきたんだからな」
「てめぇ・・・!」
なんてこと言いやがるんだっ!
俺はこの男を古泉から遠ざけるようと掴み掛かる。
勢いよく飛び出したが簡単にあしらわれ、再び倒れ込むこととなった。
「良かったな、一樹。お前なんかの為にこれだけ必死になってくれる人間がいて」
佐伯涼介は古泉の耳元に顔を近づけると、何かを呟いた。
何を言ったのか、俺には聞こえなかった。
古泉は俺と目を合わせ、そしてすぐに視線をそらした。
「古泉っ!」
「僕がこの役目を果たせば、世界は安定するんです。涼宮さんは・・・涼宮ハルヒは非日常を求めるだけの、ただの高校生になれるんです。そして、これは僕が望んだことです。世界の安定も、未来の確立も・・・僕の消滅も。僕の役割で、僕の願望です。あなたも未来人である朝比奈みくるから聞いているはずですよね、これは規定事項だと。これは変えられない事で、変えてはいけなんです。だから、もう僕には関わらないで下さい」
いつものように、淡々と古泉は言葉を繋ぐ。
いつものように、
いつものように、俺を拒絶する。
「・・・同化が始まる」
今まで一歩も動かず、必要最低限以下の言葉も発さなかった長門が静かな声を発した。
「な、んだよ・・・っ」
古泉がだんだん黒く塗りつぶされていくかのように、消えていく。
同化って、つまり古泉が消えるってことか?
この同化が終了すると古泉は消えるのか!?
「一樹は一樹の役目を果たす。お前は涼宮ハルヒの『鍵』として役割を果たせば、それで良い。これでこの世界は、俺達の未来は」
黙れ、
黙れ、
黙れ!
「未来なんて・・・そんなもん知るか!」
ジンジンと痛む身体を起き上がらせて、古泉の腕をガシッと掴む。
「そんなこと今の俺達には関係無いだろうがっ!未来を変えられないなら今、この瞬間だけでも変えてやるよ!!」
「ダメ、です・・・!あなたまで、巻き込まれ・・・」
「巻き込めよっ」
そうだ、巻き込め。
俺を、巻き込めよ。
それでお前が消えずに済むなら俺は喜んで、とは言わないが率先して巻き込まれてやるよ。
なんでこんなに必死になってるのか、俺にも分からん。
ただ、お前を失いたくないんだよ。
それで充分だろ?
「お願い、します・・・離して・・・下さいっ!」
古泉を掴んでいる俺の腕からだんだん消えていっている。
古泉、お前の願いを俺が叶えられるとでも思ってるのか?
俺は俺の願いを叶えるだけで精一杯なんだよ。
「長門!」
お前は何か知らないか?
ここから抜け出す方法じゃなくてもいい。
古泉の同化を遅らせる方法・・・いや、せめて古泉から離れない方法だけでも良いから、何か・・・何か・・・っ・・・!

「目を閉じて」

長門の声がはっきりと聞こえた。
いつもよりも、はっきりと。
俺は咄嗟に目を閉じると、人類には一切理解出来ないであろう言葉らしきものが耳に入り、そのまま暗転する。
元々真っ暗な場所に居たわけだし、目を閉じたのだから暗いのは当たり前なのだが、確かに暗転した。
身体が宙に浮かんだかと思うと、急降下するような感覚に襲われる。
なあ、長門さんよ。
何度も言ってる事なんだが、どこかに移動するなら簡潔にでも良いから教えてくれ。
妙な気分だ。
ただ、俺の右手はしっかりと古泉の腕を掴んでいる感触がある。
掴んでる間は古泉の記憶がなだれ込んでくるし、気分は激しく悪い。
それでも俺は離さない。

これは俺の覚悟だ。
お前の抱え込んだものを全てまとめて俺が背負ってやるという、俺の覚悟だからな。



果たして、何の意図があったのか分からないが、俺は飛ばされた。
そして、出会った。


———三年前の古泉に。



NexT...The Past of Itsuki Koizumi 1nd









古泉愛してるぜ
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古泉一樹の絶望 Ⅳ




「昨日の今日でここに来るとは予想外だな」
俺が古泉の病室に入った時、そこには予想通り古泉と古泉の従兄弟・佐伯涼介が居た。
昨日とは違い、お取り込み中ではなく、私服に着替えた古泉と一緒に病室の片付けをしていた。
もしかしたら退院の準備をしていたのかもしれない。
くつくつと古泉の従兄弟は笑っている。
俺はそれを無視して古泉に問いかけた。
「古泉、もう退院するのか?」
「・・・はい」
古泉は俺と目を合わせず、背を向けたままだ。
そりゃあ、そうだ。
あんな姿を見られたんだからな。
普通にしている自称・古泉の従兄弟が異常なんだ。
もし、古泉がこっちをみたら俺が目を逸らすだろうさ。
「検査入院するって言ってなかったか?」
「特に異常はないと判断したので」
声だけ聞いていると動揺している感じがしない。
それがムカつくぜ。
「異常はない、か・・・これから何処に行くんだ?」
「・・・家に、帰ります」
「家に帰った後は?」
「・・・・・・」
「古泉、家に帰った後は、どうするんだ?」
「・・・別にどうもしません」
ああ、ムカつく。
「そうやって、誰にも会わず消えるつもりなんだな」
「・・・・・・っ」
古泉が初めて俺の方を向いた。
昨日のように目を大きく開き、俺を凝視している。
俺が何も知らずに来たと思ったか?
残念だな、俺には何でも知っている長門という強い味方がいるんだよ。
「おい、それ誰に聞いた?」
佐伯涼介は目を細めながら聞いてきたが、俺はそれに答える事なく質問をかぶせた。
「あなたは古泉の従兄弟ですか?それとも『機関』の人間ですか?」
「ふっ・・・お前の思っている通りさ」
つまり、従兄弟じゃなくて『機関』に所属している人間だと言う事だ。
おそらく古泉の上司ってところだろうな。
「答えてやったんだ。俺の質問にも答えてもらいたいね。お前は誰に一樹の事を聞いた?・・・いや、思い当たる人物がいるな」
アンタが思っている通りだよ。
「それで、何をしに来た?」
「古泉を、助けにきた」
我ながらなんとも間抜けな台詞だ。
間抜けすぎてヒーローも赤っ恥な台詞だ。
「ふふふ、ははははは!助けに来た、か・・・ははははははっ」
何がそんなに面白いんだよ。
「一樹、お前なんかの為にこいつは助けに来たらしい」
「・・・・・・」
「どうする?一樹の好きな方を選べ」
「古泉」
俯いた古泉に俺は手を伸ばした。
古泉の身体に触れる前にパシッと振り払われた。
「僕に、関わらないで下さい。あなたには関係ありません」
「関係ないワケないだろ!」
俺達はSOS団なんだ。
しかもお前は副団長だ。
お前のピンチを助けるのが当たり前だろ。
「僕は、助けなんて求めていません」
「古泉!」
今度はがっしりと古泉の腕を掴んだ。
「離して、下さい」
「こいずっ・・・!」
「一樹から離れてもらおうか」
「なっ」
俺の身体に鈍い痛みが走った。
「・・・っ・・・」
内蔵が出るかと思うくらい腹を強く殴られ、その場に踞る。
「いっ・・・!」
今度は肩をつま先で蹴られ、俺は仰向けに床へ押し付けられた。
「涼介さんっ」
俺の腹を目掛けて足を下ろそうとした瞬間、古泉が従兄弟、いや上司に縋り付いた。
ああ、この男の事を名前で呼んでいるのか・・・。
この状況で何故そんな事を思ったのか自分でも分からないが、その事が気になってしまった。
「どうした、一樹」
「・・・やめて、くだ・・・さい」
古泉の静止は聞かず、俺の腹に足が下ろされた。
「うえっ」
本当に内蔵が出るぞ、これ。
俺を踏んでいる足は退かずに、ずっと圧力が掛かっている。
「やめて、くださいっ・・・!」
お願いしますと何度も言いながら縋り付いている。
「彼は・・・大事な『鍵』なんです!だから、それ以上は・・・っ」
「心配するな。なに、この『鍵』に少し分からせてやろうとしただけさ」
分からせるだと?
「こいつに一樹は重過ぎるってな」
「ぐっ」
「『鍵』は『鍵』の役割を果たせばいい。そうだろ、一樹?」
「・・・・・・」
「どこまで話を聞いているのか知らんが、これ以上一樹には関わらないでほしいな」
「俺は、こ、古泉に会いに、来たんだ・・・アンタの、言う事、なん、て・・・聞いて、ない・・・」
畜生、痛みでまともに喋れない。
「一樹が消えれば、この世界は救われる。そして一樹自身も、な」
「・・・最、低だな・・・」
「無知は幸せ、という言葉がこの『鍵』にぴったりだ。そう思うだろ、一樹?」
「無知、だと・・・?」
たしかに俺は古泉の事を全て知ってるわけではないが、何も知らないってことは無い、と思っている。
レトロなゲームが好きな割に下手だったり、運動が得意な割にフォームが変だったり、くじ運が良い割に損な役割が多かったり。
「ははは、本当に無知だな」
ようやく、俺の上から足が退けられた。
「無知なお前に少し教えてやるよ」
俺の頭に手を置いたかと思うと、脳が一瞬揺れた感覚に襲われた。
「まさ、か・・・涼介さんっ、やめて下さい!」
どうして古泉がこんなに慌てているのか、どうしてこんなに頭が痛いのか、そんなことを考えている暇なんてなかった。
「・・・な・・・っ!」
俺は、声にならない悲鳴を上げた。
「なんだよ、これ」
俺の中に、さまざまな記憶、感情が一気に押し寄せた。
そしてそれが全て、古泉のものだと理解した。
だから俺は古泉を見る事が出来なかった。
古泉の抱えてきたものが、あまりにも重すぎて。
「どうした、さっきまでの勢いが無くなったな」
「これは、古泉の・・・」
一瞬のことだった。
それでも、理解するには十分だ。
「だから言っただろ。お前には重過ぎる、ってな」
そう、重過ぎる。
俺には重過ぎる。
『機関』の人間に犯されて、それでも命を投げうつことも許されず、助けを求める事も、助けてくれる相手も居なかった、古泉の過去と記憶。
俺には重すぎて、何も言葉が出てこない。
身体中から汗が噴き出し、震えが止まらない。
「一樹、行くぞ」
「・・・・・・はい」
倒れている俺の横を二人が通り過ぎて病室を出て行く。
俺は古泉を呼び止める事が出来なかった。
出来るはずがないだろ。
あんなもの見せられて、呼び止める事なんて出来るはずがない。
あんな・・・。
「畜生・・・っ!」
声を掛ける事も手を伸ばす事も出来ない自分に腹が立つ。
今まで苦しんでいた古泉に気付かなかった自分に腹が立つ。
何も、何一つ知らなかった自分に腹が立つ。
知りたくなかったと思ってしまったことに腹が立つ。
そして、あいつを死なせてやって方が幸せなんじゃないかと、一瞬でも思ってしまった事に一番腹が立った。
最低なのは、俺だ。
軽々しく古泉が背負ってるものを預けてみろ、なんて考えてはいけなかった。
俺は何も知らないじゃないか。
俺は何も知らないんだ。
あいつがどれだけ重いものを背負って生きているのか、生きてきたのか知らなかった。
それなのに。
それなのに。
ああ、俺は本当に馬鹿だよ。

「キョンくん」

「朝、比奈・・・さん?」
起き上がる事も出来ない俺の真上から、不安そうな顔で朝比奈さんが声を掛けて来た。
何故ここに居るんだろう?
「長門さんから聞いたんですね・・・」
ああそうか、朝比奈さんも知っていたんだ。
古泉の様子を見に来たのだろうか。
「ごめんなさい、何も出来なくて」
ポタポタと涙が床に落ちていく。
「これから起きる事は規定事項で私は干渉する事が出来ないんです」
泣かないで下さいよ、朝比奈さん。
朝比奈さんは悪くないですよ。
「私、知っていたんです。この時代に来る前から、古泉くんの役割を・・・だから、だから、古泉くんに関わらないように・・・」
そう言われれば、朝比奈さんは古泉に対して一定の距離を取っていた気がする。
ついでに言えば、長門も古泉に対して俺やハルヒ、朝比奈さんとは違う態度を取っていた、と思う。
何も知らなかったのは俺だけだったのか。
「でも、一緒にいる内に、もしかしたら未来は変わるんじゃないかなって・・・実際に未来は少しずつ変わっていったんです。本来、異空間の発生は今より五ヵ月前の予定だったのに」
「朝比奈さん」
「病院の入口に長門さんがいます。もし・・・もし、古泉くんの所へ行くなら、長門さんに聞いて」
一つ一つ言葉を選ぶように朝比奈さんが俺に声を掛ける。
「ありがとうございます」
俺はゆっくり立ち上がり、朝比奈さんの顔を見た。
涙で濡れた瞳が俺を見つめている。
「キョンくん」
朝比奈さんは口をパクパクさせている。
少し考え込んだ後、ようやく言葉をはきだした。
「古泉くんを、お願いします」
悪いな、古泉。
お前がどんなに望んでも、お前を見捨てる事なんて出来ないようだ。
言葉すら制限されている朝比奈さんが、お前を助けて欲しいという言葉を俺に伝えようとしてくれたんだ。
それに応えないといけないだろ。
「長門」
朝比奈さんの言う通り、長門が病院の入口に立っていた。
「・・・古泉一樹の自宅へ移動する」
「おう」
待ってろ、古泉。



NexT...The Despair of Itsuki Koizumi 5nd









古泉愛してるぜ
×一樹Rank




壊れたキミの




あと数分で日付が変わる。
俺はすでに寝間着に着替え、ベッドに潜り込もうと準備をしていた時、ベッドに放り投げていた携帯電話のバイブが震えていた。
始めはメールかと思いシカトをしていたが、十数秒経っても震え続けている為、携帯電話を手に取った。
こんな時間に電話掛けてくる相手は二人ほど思い当たるが、ここ最近は一人に絞られている。
「どうした、古泉?」
ディスプレイに表示される相手の名前を見ずに俺は電話に出た。
『あ、まだ起きてました?』
いつもよりもテンションが高い声の古泉が俺の耳に入ってくる。
また、か・・・。
「今からお前のとこ行くから鍵開けとけ」
『少しは僕の話聞いて下さいよ』
「そっち行ったら聞いてやる」
『ダメです。今聞いてくれないと僕の家に入れません』
電話の向こうで笑っている古泉が簡単に想像出来る。
分かった、聞いてやるからさっさと言え。
『せっかちさんですね・・・今日、卵が安かったのでの二パックほど買ったんです。それで夕食は卵づくしでいこうと色んな料理に挑戦したんです。それで今度あなたに食べてもらうと思ったんですけど、どんな卵料理が好きなのか聞くのを忘れてたなぁって思いまして』
俺は溜め息を吐きながら「お前が作るもんなら何でも好きだ」という鳥肌の立つ台詞をはいた。
『なかなか・・・嬉しいこと言ってくれますね』
うるせえ。
お前の話を聞いてやったんだ、俺の言う事も聞け。
『分かりました』
古泉がまた面倒くさいことを言う前に俺は電話を切り、簡単に着替えた。
本当ならこの着替えている時間も惜しいが、夜中にスウェット姿でチャリを走らせるとさすがに怪しい。
まあ、スウェットでなくとも夜中に自転車で爆走してるのも充分怪しいが。
着替えを済ませると、リビングでまだテレビを観ている親に古泉の所へ行って来る、と言って、家を出た。
事情を知っている俺の両親は気を付けて、と一言声を掛けて見送った。
愛用の自転車に跨がり、ペダルを思いっきり踏み込んだ。
ここから古泉の家まで十分以上掛かる。
汗だくになりながら自転車を漕ぎ、古泉が住むアパートに着いた時には足が震えていた。
俺の脚は悲鳴を上げていたが、自転車を投げ捨て古泉の部屋まで階段を駆け上がり、玄関の扉を開ける。
言いつけ通り鍵は開けていたみたいだ。
中に入ると、部屋は薄暗く、奥からシャワー音とわずかな光が漏れていた。
俺は無言で浴室へ向かう。
ドアを開けると部屋着を着たままの古泉が浴室に座り込み、冷水のシャワーを浴びていた。
そしてだらんと力無く放り出された右手近くにカミソリが落ちている。
今日はリスカットか・・・。

いつからか、古泉は自殺未遂を繰り返すようになった。
数にして、手の指では足りなくなるくらいだ。
頻度もだんだん増していってるし、その度に命の危険性が高まっている気がする。
自殺の理由はその度に違っていたが、そのほとんどが小さなことだった。
前回は、さして大事にしているわけでもないカップを割ってしまったとかで、首を吊っていた。
その前は、部室でオセロをしていた時にオセロ盤をひっくり返してしまったから、と部室の窓から飛び降りた。
あの時はさすがにヤバかった。
なにしろ、その部室にハルヒ、朝比奈さん、長門、ついでに鶴屋さんや国木田と谷口、ついでに言えばコンピ研と生徒会の面々もいたものだから大騒ぎだ。
そこで初めて他の奴らに古泉の異常を知られてしまったわけで。
黙っていた事にハルヒは怒り、止められなかった俺に怒りをぶつけた。
今回も怒られるな、これは。

シャワーを止め、いつもの場所からバスタオル探し出し、冷えきった古泉の身体を包み込む。
まだ俺に気付いていないのか、古泉の目はずっと宙を見ていた。
左腕からは血が絶えず流れて、足下を赤く染めている。
この量はヤバいな・・・。
身体から力が抜けきっている古泉の身体を抱き上げ、リビングのソファへ運び、左手首の止血をしながら自分の携帯電話を取り出す。
電話帳を開き、ある人物へ電話を掛けると、ワンコールで相手が出た。
『どうされましたか?』
「すいません、森さん。古泉がまた・・・」
『今回はどのような状態ですか?』
「手首を切ったようで・・・ちょっと失血が多くて、止まらないです」
『そうですか・・・では新川よりも救急車の方が良さそうですね。五分以内に到着すると思います。そちらの準備が出来ましたら部屋に入れて下さい』
「ありがとうございます」
電話を切ると、玄関の鍵を閉めた。
俺以外の人間が入って来たり、病院に行きたがらない古泉を無理矢理連れて行くとあいつは錯乱状態に陥る。
それはもう、手の付けられないほどに暴れる。
ただでも怪我をしているのに暴れる事で傷口が悪化していく。
手がかかる奴だよ、ホント。
「あ、れ・・・?」
弱々しい声が無音の部屋に響いた。
気付いたか。
このまま気を失ってくれていればスムーズにいくのにな。
俺はタオルで傷口を押さえながら、濡れている身体を拭いていく。
服も着せたいがどうせすぐに救急車が来るんだ、温めるだけでいいだろ。
「あー、来てくれたんですね」
調子の外れた声。
「来るのが早すぎですよー」
ヘラヘラと笑っている顔を見るとその顔を殴りたくなるし、このイカれた声を聞くと喉を潰したくなる。
それでも、こいつに出来る限りの優しい声で問いかける。
「どうしてこんなことをしたんだ?」
この問いかけはもう、何度目だろうな。
古泉の前髪をかきあげ、俺だけ映るように顔を近づける。
「卵料理を、作ったんです」
真っ青な顔で、それでも笑顔を絶やさずに古泉は言葉を繋げる。
「それで、目玉焼きを作ろうとして卵を割ったら、上手く出来なかったんです」
「・・・そうか」
「コンコンと卵を軽く打ちつけて、ヒビがはいった殻に指を入れて、フライパンに落としたら、黄身が・・・黄身がグチャっと壊れちゃったんです」
古泉は俺の手を握ってきた。
「まるで僕みたいでした」
「・・・そうか」
「はい」
握っていた俺の手を離し、左手首の傷口を押さえているタオルを外すと天井に向けて手を挙げた。
傷口からは血が徐々に流れ、古泉の腕を伝っていく。
「僕みたいだったので、僕もこんな風に壊れるのか試してみました」
「それで、どうだったんだ?その卵とお前は同じだったか?」
伝っている血を俺は二の腕から舐めとってやる。
鉄の味が口に広がる。
この味にも慣れたもんだ。
「分かりませんでした」
「そうか」
全ての血を舐めとりたかったが、どんどん流れくる。
深く切り過ぎだ、この馬鹿。
「救急車呼んだから、大人しくしてろよ」
そう言うと「病院には行きたくありません」と返ってきた。
この返答も何度聞いた事か・・・。
再び傷口にタオルをあて、腕を下ろさせる。
「今日は駄目だ、病院に行くぞ。またハルヒ達に心配かけたくないだろ?」
「・・・・・・それでも行きたくありません・・・」
「お前なぁ・・・」
ハルヒの名前を出せば六割方言う事を聞いてくれるのだが、今回は相当嫌らしい。
そして、俺も古泉が嫌がれば三割方言う事を聞いてやるのだが、今回の傷は深過ぎる。
押さえている所からドクドクという鼓動が伝わっている。

ピンポーン

インターホンが鳴り響く。
「来たみたいだな」
古泉を抱きかかえ、立ち上がる。
俺よりも背が高いくせに一般高校男児並の力しかない俺が抱きかかえて運べるほどこいつは軽い。
メシをちゃんと食え、メシを。
そして、あんまり暴れるなよ。
「い、や・・・ですっ・・・行きたく、ない・・・、す」
駄々をこねる子供のように首を振り、俺の手から逃れようとする。
「古泉っ!」
「いや、だぁ!」
俺の身体から離れるため、力一杯押し返し、俺はバランスを崩す。
倒れる瞬間、古泉に負担が掛からないように体勢を変えると、ドタドタっと床に顔面を打ち付けてしまった。
痛いなあ、畜生。
「あ、すみま、せっ・・・ごめ、んなさい・・・!」
地味痛みに耐えていると古泉が俺に縋り付いてきた。
青かった顔がより一層青くなっている。
「大丈夫、俺は大丈夫だから」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
何度も謝り続ける古泉を安心させる為、優しく抱き寄せた。
「怒らないで、一人にしないで、何でも言う事聞きますからっ・・・!」
ポタポタと涙が俺の服に落ちてくる。
これくらいのことで泣くな。
お前はもっと傷だらけなんだ。
「ほら、キスしてやるから病院に行こう、な?」
古泉の頬を伝う滴を舐め、唇を合わせる。
「ん・・・はぅ・・・」
舌と舌を絡み合わせ、クチュっと音を立てる。
いつもより、口の中が熱い。
「んふっ・・・は・・・・・・」
古泉の身体が、俺を欲しているのが分かる。
でも、今日は駄目だ。
病院行って、治療して、治るまではお預けだ。
それが嫌だったら、二度とするな。
「・・・やん・・・・・・んぁ・・・」
何回言っても聞かないよな、お前は。
まだ感じていたい古泉の唇を引きはがした。
「・・・もっ、と」
「傷、治ったら、またしてやるから今は我慢しろ。出来るだろ?」
頭を撫でてやると、悲しそうに頷いた。
「大丈夫、お前が壊れたら俺も一緒に壊れてやる」
お前一人で壊れた世界に置いていかないさ。
壊れる時は俺も一緒に壊れてやるのが恋人ってもんだろ。
お前が望む通りに壊してやる。
「・・・ほん、とうで、す・・・か?」
「ああ」
「キョ、ンく・・・ん」
そう言って古泉の身体から力が完全に抜けた。
気を失ったか・・・。
やっと古泉は俺を呼んだ。
もっと早く俺を認識しろ、この阿呆。
古泉をその場に寝かせ、玄関の方へ向かう。
鍵を開け、救急隊員を部屋に招き入れる。
玄関の前で待っていた救急隊員は一人だけで、何度もお世話になっていることもあり、名前は知らないが見知った人物だった。
気を失っている古泉の身体を軽く調べた後、バスタオルに包まった身体を抱きかかえ、玄関へ向かった。
「古泉は、どんな感じですか?」
「傷口は深いですが、身体が冷えていたおかげで傷の割に失血は少ない方です。体調を崩すかもしれませんが、命には別状ないでしょう」
「分かりました」
「怪我のこともありますが、精神状態も以前より悪化してる可能性がありますので一時入院させる予定です。入院先は森を通してお伝えしますので」
「そう、ですか・・・すいません、古泉をよろしくお願いします」
バタン、と玄関のドアが閉まると、点々と付いた血の跡と血だけのタオルを片付けた。
タオルを洗濯機に入れる前に血の付いた所を全て口に含み、わずかな鉄の味を飲み込んだ。


多分、あいつはこのまま壊れていくだけだろうな。

そして俺もきっと、壊れていく。



まったく、

惚れた相手に合わせるのは、大変だな。



──fin──











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CP、傾向ごちゃ混ぜ。



不快な思いをしたら読むのを即効止めることをお勧めします。



■短編小説

☆目次☆
No.1 壊れたキミの世界
     CP:キョン×古泉 傾向:12禁/シリアス/病み古泉
     自殺未遂を繰り返す古泉とそれを優しく受け止めるキョン











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古泉一樹の絶望 Ⅲ





朝、いつもの時間に目覚ましのベルが鳴り、俺は嫌々起こされる。
今日は素敵な土曜日で惰眠を貪れる日だと言うのに、きっちりと起きてしまった自分が忌々しい。
今日は団活の予定は無い。
二度寝を決め込もうと目覚ましを止め、布団を被る。
目を閉じようとして、失敗する。
昨日の事が頭を過ってしまった。
病室で目撃してしまった、衝撃的な場面が脳裏に焼き付いて離れない。
そりゃあ病室であんな所みたら忘れられないさ。
まあ、あいつが男とああいうことをしていようが、俺には関係ない。
関係無いし、興味も無い。
そのはずなのに、俺は昨日からずっとイライラとモヤモヤでパンク寸前になっている。
「キョンくーん、おはよー」
ノックも無しに部屋に入ってくる我が妹。
どんなにロリ顔と言っても小学校低学年じゃないのだから、兄の部屋に入る時はもう少しこう•••いや、何も言うまい。
「あれぇ?もう起きてたんだー、ざんねーん」
俺を起こしたかったらしいが、残念ながら今日は平日以上に目が覚めてるよ。
妹は俺の部屋で丸まっているシャミセンを持ち上げ、部屋を出て行った。
騒がしい奴だ。
重い身体を持ち上げ、顔を洗おうとベッドを離れるとピルルと携帯電話が鳴った。
こんな朝早く電話してくるのは一人しか思い浮かばない。
またなんかする気か?
ディスプレイを見ると、予想は外れた。
通話ボタンを押し「もしもし」と出る。
「・・・・・・」
返事が返ってこない。
相変わらずだな。
「長門?」
『・・・・・・』
電話の向こうで微かな音が聞こえた。
もしかしたらコクンと長門が頷いたのかもしれない。
だが、長門。
電話ではその姿が見えないんだ。
出来れば声を発してくれ。
・・・という、一連の流れを以前経験したような気がする。
またデジャヴか?
エンドレスサマーならぬエンドレスウィンターなんてことだったら、勘弁してくれ。
『あと七日で古泉一樹はこの世界から消滅する』
「は?」
突然、何を言っているんだ、長門。
古泉が消滅?
さっぱり意味が分からない。
こんな朝っぱらから冗談なんて言われても対応しきれないぜ?
『すでに局地的非浸食性融合異空間は完成、固定されている。あとは古泉一樹がそれに同化するだけ』
「待て、長門。全く話が見えないし、理解出来ない。なんで古泉が消滅するんだよ」
『涼宮ハルヒの力を無効化する為。古泉一樹が所属している『機関』は涼宮ハルヒが創り出した次元断層に新たな異空間を創り共に消滅させようとしている。その異空間の発信源が古泉一樹』
「つまりハルヒが生み出している閉鎖空間の中に古泉の創った閉鎖空間を発生させて、ハルヒの閉鎖空間を消すってことか?」
『そう。それによって涼宮ハルヒは次元断層を生み出す力は消えると考えられている。ただし、涼宮ハルヒの力は強大。涼宮ハルヒの生み出した次元断層を消滅させるには異空間の発信源も消滅しなければならない』
なんだよ、それ。
つまり、閉鎖空間を消滅させると古泉も巻き込まれるってことじゃねえか。
「それを止める方法は?どうすれば古泉を」
『出来ない』
俺が言い終わる前に長門は答えた。
『情報統合思念体からアクセスを拒否されている。古泉一樹の同化は規定事項』
「古泉が・・・消滅する事が規定事項ってどういうことだよ!?」
『古泉一樹の消滅は未来の為に必要な事。それを阻止することは許可されてない。それは朝比奈みくるも同じ』
「あいつは•••古泉はその異空間とやらに同化するとどうなるか理解しているのか?いや、そもそも古泉は同化する事を知っているのかっ?」
『理解している。そして、古泉一樹は同化する事を望んでいる』
望んでるって・・・どういうことだよ。
消滅するんだぞ?
死ぬ、ってことだぞ?
それを望んでいるのか?
『疑似的な空間でも通常有機生命体では空間を維持する事は負荷が掛かる。古泉一樹が先日倒れた原因は、局地的非浸食性融合異空間が完成した為と思われる』
「・・・どうしてそれを俺に伝えたんだ?」
お前は古泉が異空間と同化を阻止する事は許されていないんだろ?
俺に伝えなければ俺は何も知らなかったんだ。
そう、何も知らずにいつも通りの日々を過ごす事になったんだ。
『私はあなたに対して情報操作を二度行っている。そして今、その情報操作の解除が出来ない。だから私が行える範囲での情報調整をしている』
「長門、お前・・・」
『二月二十五日、異空間は閉じる。それが期限』
俺にどうしろって言うんだ。
『それは、あなたが考えなければいけない事項』
そして俺が何か言う前に通話は中断した。
電話の向こうからはツーツーという音しか響いてこなかった。
なんだよ。
何が起きているんだよ。
古泉が消滅するっだって?
それが規定事項で、宇宙人も未来人も関わる事が禁止されて、黒幕はアイツが所属する『機関』そのもの?
それに、長門が俺に対して行ったという情報操作も気になる。
勘弁してくれ。
こんな事だったらエンドレスウィンターの方がまだマシだった。
可愛いものだ。
助けるか否か・・・そんなの決まっているじゃないか。
半年以上同じ団員として過ごしてきたんだぞ。
規定事項なんて知るかよ。
「あー、イライラする!」
ただでも理由不明なイライラが俺の中で渦巻いていたのに、さらにイライラが追加されてしまった気分だ。
本当はなるべく行きたくないが、あんな話を聞かされたんだ。
行くしか、ない。
あの、病院へ。
忘れようとした記憶がまた甦って来た。
考えるな、考えるな、考えるな。
まずは顔を洗おう。
そして、あいつの所へ行こう。
止めなければ。
古泉、お前になんの覚悟があって、消滅なんて望んだのか俺には理解出来ないが、そんな事させねぇよ。


この時、俺は古泉に対して「何もかも一人で背負い込んじゃねぇよ」とか「少しくらい俺に、いや俺達にもその『荷物』預けてみろよ」なんて思っていた。
まるで自分がヒーローみたいに、困っているであろう古泉を助けてやろうなんて思っていた。
でもそれは、大きな勘違いだった。
大きな勘違いだったとこの時の俺に言ってやりたいね。



NexT...The Despair of Itsuki Koizumi 4nd









古泉愛してるぜ
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古泉一樹の絶望 Ⅱ




白い部屋、白いベッド、白いカーテン。
二ヶ月ほど前、俺がお世話になった病室に今、古泉がいる。
病院に到着して三十分以上経ってから病室に案内され、古泉はベッドで身体を起こしていつもように笑って俺らを迎えた。
個室にあるソファに俺とその向かいに長門が静かに座り、ハルヒはと言うと折り畳みイスに腕を組みながら腰掛けている。
朝比奈さんはハンカチを握りしめながら古泉が寝ているベッドの横で「もう大丈夫なんですか?」と聞いた、気がする。
泣きながら発する言葉はすでに言葉として聞き取ることは至難の業だ。
そんな言葉を聞き取った古泉は、あははと笑い、すいませんと言いながら答える。
「ご心配をお掛けしました。少し体調を崩したようで・・・」
体調を崩した、なんてもんじゃなかったぞ。
「この時期は体調を崩しやすいって言うけど・・・それにしてもこれは一大事よ!体調管理が出来なくちゃSOS団副団長として失格なんだから!罰として古泉くんは二週間団活禁止!!」
おいハルヒ、ここは素直に休め、と言ってやれ。
「それはお厳しい」
お前も普通に答えるな。
「もう、みくるちゃん。いい加減泣き止みなさい!」
「だってぇ」
「キョンといい、古泉くんといい、救急車で運ばれるなんて軟弱者よ、軟弱者」
俺は違うぞ。
お前の知らない所で世界の変革を止めたりして大変だったんだからな。
「古泉、お前しばらく入院するのか?」
「ええ。僕としましては入院しなくても大丈夫だと思っているのですが、叔父が入院させるようにと担当医師に言ったらしく二、三日検査入院をするみたいです」
そう言えば、この病院の理事長が古泉の叔父と知り合いという設定だったな。
その設定はまだ継続中らしい。
「丁度いいわ。きちんと検査して万全の状態で復帰しなさい。そうしたら少し早く団活に参加することを許してあげる」
「それでは早く治さないとはいけませんね」
和やかと言うには相応しくない場所ではあるが、タクシーに乗っていた時のような暗い空気はすでに無くなっていた。
ただ、長門の様子がどうも気になる。
なんて言い表せればいいのか分からないが、何か警戒しているような、危惧しているようなそんな感じをかもし出している。
俺の気のせいか?

コンコン

病室の入口からノックが聞こえ、その場に居た全員が音のする方へ視線を向けると、そこには見知らぬ青年が入ってきた。
「一樹、倒れたって聞いたけど・・・おっと」
二十代後半と思われる青年は言葉を区切った。
おそらくコイツら誰だ?と疑問に思っているのだろう。
もちろん俺達もこの人誰?と思っている。
「この子達は・・・一樹のお友達かな?」
にっこりと爽やかスマイルで古泉に語りかけた。
「あ、はい、そうです」
一瞬、言葉に詰まったように感じたが、古泉はすぐに答えた。
「なるほどね。一樹の学担からお見舞いに来てくれたお友達が居るって言ってたけど、まさか四人も居るなんて思わなかったよ」
で、コイツは誰なんだ?という俺の心の声が聞こえたのか古泉は俺達にこの青年の紹介をした。
「あ、あの、彼は僕の・・・」
「従兄弟で佐伯涼介です」
本当に従兄弟なのか怪しいが、雰囲気は古泉に似ている。
「いい友達を持ったね、一樹」
「え、ええ」
なんだろう、古泉はこの従兄弟と名乗る青年と目を合わせないようにしていないか?
「さっき一樹のお父さんから連絡あったんだけど、やっぱり仕事が忙しくて来られないみたいだから今日は俺が付き添うよ」
「あ、ありがとうございます」
「そう言えば、君達はここまでタクシーで来たんだってね?先生から聞いたよ。これ、帰りのタクシー代に」
財布から万札を三枚ほど取り出し、何故か俺に握らせた。
古泉を除いて、男である俺が払ったと思ったのだろう。
まあ、払ったのは確かに俺なのだか間違ってはいないが。
「いや、そんな悪いです」
「一樹の為にわざわざお見舞いに来てくれたんだから、タクシー代くらいは受け取って欲しいな。お釣は、また一樹が何か迷惑を掛けた時に使ってくれればいいから」
「分かったわ、ありがたく頂戴するわね」
おいおい、頂戴するな。
タクシー代なんて往復でも稲造一枚で済むんだぞ。
「それじゃあ、そろそろあたし達は帰るわね。無理しちゃダメよ、古泉くん」
「あ、はい。今日はありがとうございました」
「ほら、みくるちゃん!行くわよ」
「はい~。古泉くん、またお見舞いに来ますね」
「じゃあな、古泉」
「はい」
俺達がいそいそと帰り支度していても、長門が全く微動だにしない。
長門の視線の先には古泉の従兄弟。
そして顔を動かし、古泉の方を向いた。
それに気付いた古泉は何か長門に伝えたいのかその視線を受け止めている。
おいおい、どうしたんだ?
「有希、行くわよ」
「・・・・・・」
長門はスッと立ちハルヒの後を付いて行く。
「それでは、失礼します」
「さようなら」
俺は病室のドアを静かに閉めた。


病院前のタクシー乗り場にはちょっとしたタクシー待ちの行列が出来ていた為、俺達は最後尾に着いた。
さっきから長門の様子が変だったが、朝比奈さんもそわそわしている。
「朝比奈さん、どうかしたんですか?」
「ふえっ!?」
朝比奈さんは明らかにあたふたして、「な、な、な、な、なんでもないすぅぅぅ」と手と首をぶんぶん回していた。
どうみてもなにかある、という態度だ。
だからと言って追求するつもりも無い。
何かあったら、朝比奈さんから言ってきてくれる、はず。
全く、宇宙人といい、未来人といい、ついでに超能力者といい、俺の知らない所で変なのに巻き込まれないでくれよ。
はぁ、と溜め息をついた時、異様に首もとが寒いと感じた。
「・・・マフラー忘れた」
古泉の病室に置いてきてしまった。
「何やってるのよ、バカキョン。だから平団員なのよ。早く取って来なさい」
どうして忘れ物しただけでそこまで言われにゃならんのだ。
「すぐ戻る」
俺は駆け足で病室へと戻る。
たしか入口のすぐ近くにハンガーで掛けていたはずだ。
あの病室は入口につい立てがあってベッドから見えない。
そっと入ってそっと帰ろう。
エレベーターが来るのが遅くて五階まで階段で行って少々息が切れる。
病室の前に着いて呼吸を軽く整え、ドアをそっと開き、ハンガーに掛かっているマフラーを回収した。
よし、あとは戻るだけだ。
早く戻らないとハルヒが煩い。
身体を小さくし、病室を出ようとした時。

「んふ・・・は・・・ぁ」

なん、だ?
病室の奥から艶かしい声が聞こえた。
動きを止め、自然に聞き耳を立てるとビチャビチャという音も微かに聞こえる。
気のせいだ、と言い聞かせこのまま病室を出ようと思っているのに、身体が勝手につい立てから覗こうと動く。
そっと顔を出すと、ベッドには古泉の姿が無かった。
視線を移し、反対側にある俺が座っていたソファの方に古泉とその従兄弟•••たしか佐伯という名前だったか•••を発見し、俺の身体は硬直した。
俺の目にはソファに座る古泉の従兄弟、佐伯涼介の足下で古泉がビチャビチャと男になら誰でも付いているアレをしゃぶっていた。
しかも古泉の下半身は下着すら身につけていない。
「・・・ん・・・・・・ふ・・・」
ここからでは後ろ姿で古泉の表情は見えない。
「いい子だ、一樹・・・」
従兄弟が古泉の頭を撫でた瞬間、佐伯涼介と目が合った。
やばい、どうする。
身体が震える。
早くここから立ち去りたいのに身体が動かない。
慌てる俺に対して、従兄弟は軽く笑い、わざとなのか俺に聞こえるように古泉に喋り掛けた。
「一樹、このまま口で受け止めるか、中で受け止めるか•••好きな方を選べ」
古泉は一瞬動きを止め、ゆるゆると顔を上げた。
「・・・・・・」
何も言わず、上に跨がってゆっくり腰を下ろしていく。
「ああ・・・んっ・・・ああああ」
目の前に起きている出来事が俺の脳内に焼き付いていく。
「動け」
「は、い・・・ああっ!はぁっ・・・あっ••あっ・・・あっ・・・!」
上下に身体が動く度に声が漏れ、時々ふるふると震え、身体が反り返っている。
「や・・・ぁ・・・はぁ・・・ん・・・」
「いつもより動きが鈍いな」
「・・・あ、すい、ま・・・せん・・・はぁ、あ」
「まあいい。ちゃんと受け止めろよ」
「ふ・・・あああああああああっ!」
古泉の声が病室中に響き渡る。
ビクンビクンと揺れる身体を佐伯涼介は抱き寄せた。
多分キスをしている。
クチュっという音が聞こえた。
ダメだ、早くここから消えてしまいたい。
ようやく、足が動いた。
早く出よう、早く出よう、早く出よう。
一歩、足を後ろへ動かした瞬間、古泉は振り返った。
そして、俺を、見た。
「あっ・・・」
初めて見る、古泉の表情。
目を大きく開き、言葉を繋ごうとして失敗している。
「あ、のっ・・・」
「・・・・・・!」
俺はとにかく走り出した。
何度も転びそうになって、何人かの看護士さんに走るなと注意されても止めることは出来なかった。
ハルヒ達が待つタクシー乗り場まで辿り着いて「どうしたのよ!?」「大丈夫ですか?」と聞かれてもまともに答えることが出来なかった。
ずっと心臓がバクバクと鳴っている。
それからタクシーに乗り、女子三人をそれぞれ送ってから自分の家に着くまで何も考えられなかった。
いや、家についてからも何も考えられなかった。
あれは夢だ、幻だ。
どうにかあの光景を消し去りたくて、俺はベッドの中でずっと自分に言い聞かせた。



NexT...The Despair of Itsuki Koizumi 3nd









古泉愛してるぜ
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Legend of the Galactic Heroes
~daybreak~




西暦二八〇一年、宇宙歴一年とした遥かな未来その勢力圏を銀河系にまで拡大させた人類は人類統一政府である銀河連邦を成立させるが、やがて進取の精神を失い、その政治体制は長い年月を経て腐敗していった。社会の閉塞感を打破する強力な指導者が求められる中、各地に出没して人々を悩ませ続けた宇宙海賊を壊滅させた連邦軍の英雄は、やがて政界に転ずると民衆の圧倒的支持を得て強大な政治的権力を掌握し、首相と国家元首を兼任して終身執政官を自称、独裁政権を確立した。宇宙暦三一〇年に至って、「神聖にして不可侵たる」銀河帝国皇帝に即位して銀河帝国を建国、新たに帝国暦一年とした。みずから信奉する正義を疑わぬ英雄は、共和主義者を中心とした反対派を弾圧・粛清し、議会を解散して専制政治へと移行させた。共和主義者を排斥し弱者を社会から排除するその支配は苛烈を極める一方、自身を支持する「優秀な臣民」に対しては特権を与え、帝国を支える強固な貴族階級を形成した。英雄の死後も、至高の権力をえるのはその子孫にかぎられ、世襲だけが権力の移動のあるべき姿になったかにみえた。

・・・どこぞの百科事典から抜粋したような説明は全く耳に入らないな。
ちなみに、この世界を完璧に理解するには約十二年の年月が必要とする。
俺の実体験だから間違いない。
さらに言うと、説明を理解出来たところで大して役に立たん。
これも実体験だから間違いない。
『ちょっと、キョン!さっさとミーティングルームに来なさい!!』
俺が自室で微睡んでいると携帯通信機から大音量で、このSOS同盟軍第一艦隊の司令官・涼宮ハルヒ閣下から呼び出しを食らった。
どうしてこんな奴が司令官なのか未だに分からない。
そして、どうして同盟軍の士官学校を合格過程ラインをギリギリで卒業出来た俺が同盟軍第一艦の隊作戦参謀という役職に就けたのか、本当に分からない。
噂によればハルヒ直々の任命だったらしいが、俺にとっては迷惑千万な話だ。
『ちょっと、聞いてるの!?』
「聞こえてるさ」
『だったら早く来なさい!』
「・・・イエス・マム」
これが大事な会議だったらハルヒに言われなくとも招集されているさ。
しかし、これは絶対違う。
声を大にして断言出来る。
またくだらない事を考えているに違いない。
配属後初の任務、国境線敵国偵察の為、最前線で宇宙へ飛び立ち、それなりに困難を乗り越えようやく先日故郷の星へ帰還することが出来、一週間の休暇を頂いたというのに早くも休暇二日目で平和が宙へと四散するとは・・・横暴もいいところだ。
重い腰を上げ、ミーティングルームへと足を運ぶ。
何人かの士官候補生とすれ違い、ミーティングルームのドアが開くとそこにはハルヒの他に情報参謀の長門と補給部隊長の朝比奈さんが招集されていた。
あー、このメンバーだと確実に良からぬ事をさせようとしているな・・・。
「遅ーい!他の二人は時間通りに来たっていうのに!!」
「お疲れ様です。今お茶をご用意しますね」
「・・・」
三者三様の反応で例え説明しなくても誰が誰だか分かってしまう。
開口一番怒鳴りつけたのは、ハルヒ。
来てやっただけでも感謝して欲しいね。
俺を素敵な笑顔で出迎えてくれたのは、朝比奈さん。
あなたの入れたお茶を飲めるだけで幸せです。
最後に無表情かつ手元の本から目線を外さないのが、長門。
うん、お前はそれで良いと思うぞ。
「はい、お茶です。熱いので気を付けて下さいね」
「ありがとうございます」
その笑顔でこの星は平和になるんじゃないだろうか。
「馬鹿な事言ってないで、モニターを見なさい!」
ハルヒ、お前はひとときの幸せも俺から奪うのか?
「ほら、みくるちゃんも早く座りなさい!」
「はぁい」
パタパタと慌てて朝比奈さんは席に着いた。
「これでみんな揃ったわね?」
「で、今日はどうしたんだ?」
なんの怪しい活動をするつもりだ?
「聞いて驚きなさい!SOS同盟軍第五艦隊に新しい副司令官が配属されたわ」
「それがどうした?」
人事異動なんて珍しくない。
「馬鹿ねー。あんたみたいなへなちょこ軍人ならいつどんな時にどんな場所へ飛ばされても気にしないわ」
そのへなちょこをここに配属させたのはお前だがな。
「でも第五艦隊の副司令官よ!第五艦隊と言えば司令官が第三艦隊兼任だから実質第五艦隊の司令官ってことになるの!しかも配属された人物っていうのがね、同盟軍で一度も軍歴がないらしいのよ。ってゆーより軍経験が一度も無いって聞いたわ。士官学校も出てない、ごく一般人!そりゃあ、たまにいるわよ。でも軍歴ゼロでいきなり副司令官だなんてすっごく怪しいでしょ?だから今からその人に会ってみようと思うの!」
「涼宮さん、その方に会ってどうするんですか?」
「実力があるのならあたしの隊に配属させるに決まってるじゃない」
「お前、何考えてるんだよ。第五艦隊に配属されてるんだろ?俺達の艦隊に配属させる事なんで出来ないって」
そしてその副司令官殿にも迷惑がかかる。
「甘いわね、キョン。第一艦隊のトップはあたしなの。そのあたしが欲しいって言ったら第五艦隊の司令官に拒否権が無いのも当然でしょ!もちろんそいつが使えない奴だったり、あたしの気に入らない奴だったらそのまま第五艦隊の副司令官としてこき使ってやるわ!」
どっちにしても副司令官はハルヒにこき使われるわけだ。
御愁傷様ってヤツだな。
まあ、会うだけならまだ迷惑にはならないな。
同じ同盟軍としていずれ顔合わせも必要になるし。
「その副司令官殿は何処にいるんだ?」
「それは有希が調べてくれるって言ってたから有希が知ってるわ」
「・・・今はシュミレーションルームで作戦会議をしている」
「丁度良いわ!あそこならシュミレートマシーンがあるから実力が分かるわね。さっそく行くわよ!」
ハルヒは誰一人の意見も聞かずシュミレーションルームへ足早と向かって行った。
やれやれ。
取り残された俺達三人もハルヒの後を遅れて付いて行く。
「それにしても、噂が本当だったらすごい方ですよね」
朝比奈さんの言う通り、確かにすごい人物だ。
そしてすごく怪しい。
軍経験ゼロでいきなり副司令官なんてどっかのコネが無けりゃありえない。
「長門、お前は副司令官の詳しい情報知ってるのか?」
「涼宮ハルヒに情報収集の依頼をされた日から現在までの行動範囲は把握している。但し、配属以前の経歴及び個人情報は一切存在しなかった。第一級機密事項と判断し、それ以上の情報詮索はしていない」
えーっと、つまり詳しい事は分からないってことだな?
「そう」
長門ですら情報把握出来ないって・・・ますます怪しいじゃねえか。
もしそんな人物が自分の上司となったら・・・面倒な上司は一人で充分だ。
ミーティングルームから五分ほど掛けてシュミレーションルームへ移動すると「みんな遅いわよ!」とハルヒの声が響いた。
そしてハルヒの隣に腕をガッシリと掴まれている青年が少々困った顔で笑っている。
「この三人があたしの部下その一と二と三。みんな先の国境線敵国偵察で苦楽を共にした仲間だわ!そしてあなたがその四なるかどうか今からシュミレートするからよろしくね!みんな、彼が第五艦隊副司令官予定の古泉くんよ、仲良くしなさい!」
ハルヒの捲し立てる説明を、さも当たり前のように聞き入っている爽やかスポーツマンが俺に対して手を差し出してきた。
想像していた人物と大きく違っていた。
とんでもない噂をもっている副司令官だったからおそらく少しは若い人間だと思っていたが、歳は俺とそう変わらない風貌だ。
恐ろしく童顔、という説もなくはないが、それにしても若すぎだろう。
ちなみに、ハルヒは俺と同じ歳で第一艦隊司令官だが、こいつはくそ汚い手でこの地位に就いたのだからノーカン扱いだ。
「はじめまして、古泉一樹です。至らない事ばかりかと思いますがよろしくご教授願います」
「お、おう」
出された手を振り払う理由が無いから、俺も右手を差し出し軽く手を握る。
「俺は」
「それはキョン。ウチの作戦参謀よ。まあ、大して役に立ってないから気にしなくて良いわ」
俺の紹介にハルヒが割り込んできた。
おい、こら。
そんな紹介があるか!
「そんでその隣にいるのがみくるちゃん。補給部隊長兼マスコットキャラ」
「ふぇぇ、ま、ま、ま、マスコットキャラなんですかぁ~」
朝比奈さんはフルフルと両手を振った。
「最後に、後ろにいるのが有希。とっても頼りになる情報参謀なの」
「・・・・・・」
長門は相変わらず無表情。
「さて、紹介も済んだしちゃっちゃと始めましょうか!」
ハルヒはズンズンとシュミレートマシーンへ乗り込んで行く。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
ハルヒの暴走を止めたのは第三艦隊及び第五艦隊の司令官だった。
「勝手に話を進めないでくれ!古泉副司令官は我々の・・・」
「うっさいわね、文句があるなら勝負に勝ってからにしなさい!いい?これから古泉くん含めたあたし達五人とそっちの隊選抜五人でシュミレート対戦してあんた達が勝ったら大人しく諦めてあげるわ。まあ、あたしが勝つに決まってるけど、古泉くんが足を引っ張ったり協調性に欠けてるようであればコッチが勝ってもいらないけどね。とりあえず、話は対戦してからだわ。キョン、有希、みくるちゃん!さっさと準備しなさい!」
ハルヒは第三艦隊及び第五艦隊司令官に一方的に条件を押し付けた。
申し訳ございません、司令官。
俺達に拒否権はないんです。
「ほら、ちゃっちゃと始めるわよ!」
斯くして俺達は副司令官争奪シュミレート対戦をおっ始める事となった。
対戦内容としては各艦隊数機を自分の駒として操作し、大将の戦艦を陥落させた方が勝利という至って簡単なもの。
簡単なものであり、チームワークが大切となる。
「それじゃあ、行くわよ!レディ、ゴー!!」
スタートと共に敵艦から総攻撃を食らった。
遠方からの攻撃の為、ダメージは少ないがこちらのわずかに命中することによって今現在の位置を相手に教えてしまう事になる上、動きに関する選択肢がぐっと減る。
そうなると先読みされやすくなり、いずれは追いつめられるだろう。
さすが連携のとれた艦隊だ。
「もう、キョン!何やってるのよ、さっさと砲撃用意しなさい!」
「馬鹿、今攻撃したら命中率が悪くなる上に弾が無くなるだろ」
スタートと同時に総攻撃、という手は早いもん勝ちだ。
今からやったところで無駄弾を使うだけだ。
「長門、偵察機出せるか?」
「すでに三十基、索敵操作してる。しかし全て把握するにはまだ時間が掛かる」
「そうか。朝比奈さん、補給艦隊は長門のすぐ後ろに付けて下さい。あと、向こうの偵察機を発見しましたら全て撃墜してください」
「わ、分かりました」
長門の索敵結果はまだ時間が掛かる。
それまでなるべく弾数を消費しないようにし、最後に総攻撃を仕掛ければなんとか勝率は五分五分となるだろう。
少々雑な作戦だが、本来副司令官殿は向こうの副司令官となる為に配属されたのだから、負けても大して問題無い。
「ちょっと、何ちまちまやってるのよ!もういいわ、あたしが前線に出て戦うわ!『ハルヒ☆閣下☆艦隊』全速前進よ!」
「勝手に動くな!」
作戦をなんだと思っているんだ。
これがハルヒの悪いクセだ。
とにかく前線に出たがる。
というか、ハルヒはただ単に派手に動きたいのだ。
先日までの国境線敵国偵察も、本来ならそれほど難しくない任務だと言うのにハルヒの突拍子も無い行動を思いとどまらせる為に一番困らされた。
「黙ってお前は後ろでふんぞり返ってろ」
「何よ、その言い方!」
「あ、あの、喧嘩はだめですよ~」
一気に氷点下の世界になった。
その間にも敵艦は迫ってくる。

「閣下」

聞き慣れない声が、俺の耳に入る。
「閣下の素晴らしい統率指揮と武勲は我が同盟軍の栄光と共に語り継がれております。閣下が最前線で砲撃・指示をしながら勝利を手に入れる事はいとも容易いこと、と我が軍及び敵国の総帥すらも理解していることでしょう。しかし、今回は閣下の指揮下で任務を果たしてきた作戦参謀、情報参謀、補給部隊長と共に新参者である私がどのような術策を駆使するかを把握する為の戦いと聞き及んでいます。閣下は我々の後方に遷移し、全体の戦術指揮と私の術策の監視をお願いしたいと愚考する所存であります」
サイドモニターに映る副司令官は危機感のない笑顔でハルヒに進言した。
「確かにそうよね・・・古泉くんの言う通りだわ。あたしの腕をあいつらに見せたところで今更だもんね。でもあんまりモタモタしてるとあたしが全部撃ち落とすから肝に銘じておきなさい!」
「了解しました」
物は言い様というのはこの事だろうな。
上手くハルヒを思いとどまらせる事が出来た。
「作戦参謀殿」
単独モニターから俺のみに副司令官の通信が入ってきた。
「あと十分もすれば敵艦は我々の位置を把握するかと思います」
「多分そうだな」
朝比奈さんが偵察機を処理しているが、全てを撃ち落としているわけではない為、撃ち落とされなかった偵察機と撃ち落とされた偵察機の位置とタイミングを計れば今、俺達が何処にどのような配置で応戦しているか分かってしまうだろう。
「情報参謀殿が索敵終了するのに残り五分ほどと思われます。ここはひとつ賭けに出てみませんか?」
賭け、だと?
まあ、シュミレートだからどんな賭けでも出るには構わないが、これで負けるとハルヒになんて言われるか・・・。
「今、補給部隊長殿が敵艦の偵察機を全て砲撃していますが、一時中断させるんです。そして閣下と補給艦隊のみ此処に留まらせます。今まで偵察機への砲撃を素早く行っていたのをいきなり停止させれば、敵艦は我々が何かを仕掛けてくると思い、総攻撃に躊躇いが出ると思います。それに作戦参謀殿と情報参謀殿、そして私の艦隊はなるべく此処から離れ、敵艦の偵察機の索敵範囲を広げれば情報処理も送らせる事も出来ますので、その間に確実に体勢を整え総攻撃を仕掛けしょう。閣下は前線で戦いたいようですし、正面から撃てば敵艦大将は打ち取れるはずです。索敵結果が終了し、敵艦の位置情報を把握した瞬間、情報参謀殿のみ敵艦の後方に回り砲撃を開始させれば陥落も早いかと」
なるほど、その方がハルヒのイライラも解消出来るかもな。
さすが副司令官殿だ。
「いえいえ、作戦参謀殿の初期配備が適切だったからです。偵察機撃墜は単純故に荒さが出てしまうものですが、補給部隊長殿は丁寧に一定の距離で撃墜をして行く為、このような作戦が出来るのです。それに、一度に何十基も偵察機を操作するというのは並大抵のことではない所業ですが、情報参謀殿は索敵操作を短時間で行ってくれていますので、敵艦包囲が危なげなく出来ます。それもこれも、作戦参謀殿の全体指揮の素晴らしさというべきでしょう。おっと、長く話し過ぎましたね。それでは先程の作戦を皆さんに伝えて頂いてもよろしいでしょうか?」
「それは副司令官自ら指示した方が良いんじゃないか?」
「私よりも、ここは信頼されている作戦参謀殿から指示をした方が動きやすいかと。それに途中でアクシデントが発生する事も考えられます。その際の対策も作戦参謀である貴殿の方が私より適切な指示が出せるかと思います」
「了解」
通信を切り替え、副司令官から提示された作戦を伝えた。
その後は、描写が面倒な為、結果だけ報告すると副司令官殿の作戦が上手くいき、見事勝利した。
ハルヒも最後総攻撃でストレス発散したのかスッキリした顔でシュミレートマシーンから出てきた。
「決めたわ!やっぱり古泉くんはウチの艦隊に連れて行くわね!安心しなさい、古泉くん。あなたには第一艦隊幕僚総長の座を与えるわ」
待て待て待て、副司令官じゃないのか?
無理矢理引っ張ってきたんだからせめて役職だけでもそのままにしてやれよ。
「何言ってるの?幕僚総長よ、幕僚総長!副司令官なんて司令官の右手程度の扱いなの。そんなのあたしには必要無いわ!自分の右手があるからね。その点幕僚総長は司令官のあたしにも意見を言っても許される役職よ!古泉くん、良いわよね?」
ハルヒの言う事なんて断っても問題無いと思っていたし、断るだろうと思っていたが、副司令官もとい幕僚総長から出た言葉は、
「拝領します、閣下」
というものだった。
「いいのか本当に?」
俺は断るなら今だけだぞ、と忠告してやった。
今ならまだ間に合う。
「断るなんて、とんでもない。同盟軍きっての功績をお持ちになっている閣下直々に第一艦隊へ配属させて頂いた上に、幕僚総長という大役を頂いたのですからこれは名誉と言えるでしょう」
そんなもんかね。
俺ならのしを付けて送り返すね。
「来週からは古泉くんを加えての任務になるわ!それまでにみんな仲良くなってなさい!これは命令だからね!」


こうして謎の幕僚総長、古泉一樹は俺達第一艦隊へ配属されたのだった。











古泉愛してるぜ
×一樹Rank



■涼宮ハルヒシリーズBL長編小説
・キョン×古泉/キョン古前提古泉総受け
・18禁/射手座の日設定/パラレル/シリアス


射手座の日設定。

完全パラレルの上、本文で書かれている用語、意味はまったくの嘘っぱちです。

タイトルの和訳は『銀河英○伝説』ですが、全く関係ありません。


不快な思いをしたら読むのを即止めることをお勧めします。


☆目次☆

第一話 daybreak
      ハルヒ閣下の独断で謎の幕僚総長が仲間になった。











古泉愛してるぜ
×一樹Rank



空にはのつく月が在る




月明かりがこんなにも煩わしいと思うようになったのは、いつからだろう。
コンラートは誰も居ない森の中で空を見上げた。
空には満月とそれを囲むように雲が浮いている。
今にも手が届きそうな月に思わず右手を伸ばした。
その瞬間、腹部に激痛が走る。
「──っ!」
なんとか声を押し殺し、耐えた。
「はぁ・・・はぁ・・・・・・」
数時間前に負った傷が痛みとなって全身を駆け巡る。


『人間の血を引く者は魔族ではない』

『早くここから立ち去れ』


日課のように受ける暴行。
しかし、抵抗は一切しない。
魔族もどきの自分は魔族に逆らってはいけない。
そして暴行を受けていることを隠し続けなければならない。
母にも、兄にも。
特に、教官であるフォンクライスト卿ギュンターには知られたくない。
弱い自分を見せたくない。
情けない自分を見せたくない。
一人で立てる事を証明したい。
助けは要らない。
・・・・・・助けを求めたら、全てを求めてしまう。
見捨てないで、と。
独りにしないで、と。
俺を愛して、と・・・・・・。
「ぐっ・・・・・・!」
痛みに耐え忍ぶ姿を月明かりの所為で暗闇に潜ませる事が出来ない。
「ギュン、タぁ・・・・・・」

気付いて。

「たす、け・・・て・・・っ」
全てが暗闇に溶け込む前に。
瞳から涙が流れ落ちる。
決して誰にも見せない、涙。
何度も何度も流した、涙。


「コンラート?」


聞き慣れた声。
「ギュ・・・フォンクライスト卿・・・」
目の前にギュンターが立っていた。
何故、ここに?
「どうしたのですか!?」
泣いているところを見られてしまった。
弱いことを、脆いことを知られてしまった。
「なんでもありません」
早くここから離れなければ・・・・・・。
ギュンターに背を向けるようにして立ち上がる。
身体中に痛みが広がり、歩くどころか立つだけでもやっとだった。
「そんな筈ないでしょうっ」
ギュンターの手が今にも倒れそうな身体を支えてくれた。
そして思わず抱きついてしまった。
「コンラート!?」
「嘘でも、嘘でもいいから俺を、愛して下さい」
全てが限界だった。
何もかもが辛かった。
「『愛してる』と一言、俺の為に言って下さい」
そうでもしないと本当に壊れてしまう。
「俺が何かを見失わないように、繋ぎ止めて下さい」
涙が絶えず流れでていく。
自分では何も抑えることが出来ない。
もし、ここでギュンターに見捨てられたら・・・。
「コンラート」
ギュンターの声が近い。
ゆっくり顔を上げるとギュンターは頬を舐めた。
「ギュン・・・ッん・・・・・・っ」
お互いの舌は絡め、何度も貪る。
「あなたに嘘の愛を与えることは出来ません。私があなたに出来ることは本当の愛を教えてあげることだけなのです」
唇をコンラートの首筋に移し、証をつけていく。
「ぅ・・・・・・ん・・・・・・」
コンラートは瞳を閉じ、ギュンターに身を任せた。
大きくて綺麗な手がゆっくりコンラートの服を脱がしていく。
「俺を愛して下さい」
ギュンターの胸は温かく、心音を聞くだけで落ち着いていく。



「愛していますよ、だからあなたは私を愛しなさい」



月は雲に隠れることなく、二人を照らし続ける。






─enD─







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