不思議な話である。
余りに固い職業に付いていると、このようになるのか?
本名でメールしたら何も問題が起こらず、
振られて終わりか、その後の発展か・・・分るだろうに。
-------------------------------------
職場の部下A子さんに“匿名妄想メール”を送り続けていた現職裁判官は、ストーカー規制法違反の罪で甲府地検から起訴された。
かつての職場に「被告人」として送り込まれるこの裁判官はいぜん容疑を否認しているというが、判明したメールの中身はやはり異様だ。(道丸摩耶、油原聡子)
通常なら「略式」事案だが…
起訴されたのは現職裁判官の下山芳晴被告(55)。
ストーカー規制法違反の罪で適用される罰則は「6月以下の懲役または50万円以下の罰金」と規定されており、
通常ならスピード違反と同様に簡易裁判所が書面のみを審理して判決(略式命令)を出す「略式起訴」の対象となる事案だ。
それでも、甲府地検は6月10日、起訴に踏み切り、本裁判で被告を追い込む選択をとった。
「公判請求すべき事案で、罰金事案には当たらない」
甲府地検がそう言い切る理由は、やはりメールの内容にあった。
起訴状によると、下山被告は今年2月19日夜から1カ月間、都内の漫画喫茶などから16回にわたり、A子さんの名誉を害し、行動を監視していると思わせるメールを送るストーカー行為をした。
最初のメールは、被告の自宅のパソコンから送られている。
タイトルは「楽しかったよ~」。
《こんばんわ! 今何してる? もうお風呂入った? 今日のお昼は楽しかったよね。体の相性ばっちりって感じ! 悩んでるって? とっても気持ちいいよ! 今度いつ会えるかなぁ つきまとってるウザイ彼やボーイやオヤジをまいちゃって会うなんてスリルがあっていいよね。じゃあ オヤスミ~》(19日午後11時36分)
素直に読めばあたかもこの日の昼に被告がA子さんと会い、楽しいひとときを共有したことを振り返っているメールだ。
ところが、これが被告の“妄想”だというのだから怖い。
いきなり「お風呂に入った?」「体の相性」「とっても気持ちいいよ」と妄想を爆発させ、「ウザイ彼やボーイやオヤジ」と謎の第三者も登場。しかし、55歳の妄想はこれだけでは治まらない。このメールは、ほんの序章に過ぎなかった。
「入るの見ちゃった~」監視をにおわせ
被告がA子さんに送った16件のメールのうち、13件は2月19日から3月1日までの12日間、連夜送られたものだ。
送信者の特定を避けるかのように、送信場所も甲府市内のインターネットカフェ、東京都八王子市と千代田区の漫画喫茶…と、4カ所にまたがっている。
注目すべきはその内容だ。日を追うごとに、単なるいたずらとは思えない、「監視」をにおわせる内容に変わっていくのだ。
《土曜日も仕事するんだっけ? それとも、職場の駐車場を待ち合わせ場所にしてるのかなぁ…》(2月23日午後10時1分)
土曜の夜に送られたこのメールは、被害者の行動を本当に監視していたかのようだ。
被害者が実際に、駐車場で誰かと待ち合わせをしたかどうかはわからない。
しかし、被告が翌日送ったメールは、嫉妬からか、脅しともとれる文面が混じっている。
《昨日の夜は楽しかった? 遅くにお出かけするもんだから、きっと近場だ~と思って待ってたら……ビンゴ! 入るの見いちゃった! ついでに写真撮っちゃった! よく撮れてると思うけど、どうしようか? この写真、送ってみよーか? でも、困っちゃうかぁ… 車も写ってるし… 顔と車塗りつぶして送るかなぁ?》
(24日午後11時18分)
審理が開かれない貴重な休日を、被告はA子さんへのストーキング行為に費やしていたのだろうか。
被害者を「二股」呼ばわり
《遊び方うまいよね 時間差攻撃なんてすごいって感じ 男の子たちには、うま~くごまかしてるから 1日で2人、3人当たり前ってところがスゴイじゃん
何か言われたら、そんなの嘘うそ!って言えばたいていの男って信じるよね(笑) 例の写真、彼の家の近くの自販機のところに貼るってのはどう?》
(27日午前1時7分)
《彼は、A子を真面目って信じてるっぽいよな~ 最近周りには頭悪そーな連中多いよね(笑) そうそう、昨日は家に帰らなかったの? 心配しちゃったぁ 見いちゃった~》
(27日午後9時59分)
連日のメールは、被害者の交友関係に言及したものが多い。嫉妬心からか、性的な内容や表現も増えていく。
《これから相手する男の子のために、A子の弱いところの解説書を作っちゃったりして… あっ、昨日××(場所)にいたよねぇ》
(29日午前1時29分)
《昨日は、夜ずっとうちにいたの? んなわけないよね! でも、昨日は彼じゃぁなかったみたいだね。昨日話した解説書なんだけど、口説き方とかから書いたほうがいいかなぁ…》
(29日午後9時10分)
「メールの中には、これ以上にわいせつな表現もあった」(捜査幹部)というからおそろしい。
エスカレートするメールは、3月1日夜のメールを最後に、一時途絶える。
《昨日はお昼に旅行会社にいたけど、どこかに旅行するの? 誰とどこに行くのかなぁ… 彼と行くのかな? それとも別のまじめっぽい男と行くのかな? 最近マンネリだから、ちょっと面白いことになりそうだね…
マンネリ気味だといけないので、ちょっと作戦練り直そうかなぁ…》(1日午後9時10分)
「面白いことになりそう」「作戦を練り直す」というのは何を指しているのだろうか。
「怒らせちゃった?」姑息な“終結宣言”
これまでの調べで、被告は匿名でメールを送信しながら、自分のメールでは被害者の相談に乗っていたことがわかっている。
「被告は被害者から相談を受け、悩んでいると知っていたはずだ。それでもメールを送り続けるなんて、悪質きわまりない」
そう捜査幹部は憤る。
1日夜の送信を最後に途絶えていた下山被告のメールが復活したのは、12日夜のことだ。
《身体きれいに洗っておいてね~ 会いに行くからさぁ これから彼と会うのかな? それとも、もう会ってるのかな~? あとで、彼に確かめよ~っと(笑)
でも、会わないほうがいいかもよ~。今度はごまかせなくなっちゃうかもしれないし…写真を前にして、汗かいてる彼の姿想像してよ。
ついでに、ほかの写真も見たら、とんでもないのと付き合って!って騒いだりしてネ(笑) 1つぶで3度おいしいグリコだね》
《もうすぐホワイトデーだけど、前日の13日からホテルでお泊まりしよーか?》
(12日午後10時33分)
メールを送る一方で、被告は悩むA子さんのために、知人の警察庁幹部に相談を持ちかける。
その結果、3月17日に山梨県警本部長が被告に相談内容を確認することになったのだから皮肉だ。
それでも、下山被告はメールを送り続けた。
ある捜査関係者は、「ここでメール送信をやめたら、自分だとばれてしまう、という気持ちもあったのかもしれない」と被告の心理を分析する。
《最近いろんな車使ってるみたいだけどね…彼のサル知恵かい?》
(18日午前0時9分)
県警は翌18日、A子さんから直接事情を聴く。その夜、被告から最後のメールが送られてきた。
《今日、県警本部に何しに行ったのかなぁ… ずいぶんと長い時間いたよね。怒らせちゃったかなぁ…支部長っていう人には怒られるし… いろいろ考えたんだけど、送るつもりだった写真や動画のすべてを廃棄・消去することにしたヨ。メルアドも消します。だから、このメールが最後になっちゃうよ。それじゃぁ、おやすみ~》
文面にある「支部長」というのは自分のことだ。
「メールを送っているのは同じ職場の人間ではないか」と疑っていたというA子さんに対し、「支部長に怒られた」と書くことで、送信者は自分ではないと言いたかったのだろうか。
法廷は荒れる? 被告はいまだに否認
捜査幹部が言う。
「メールを送ったことは否認しようがなく、はじめから争っていなかった。だが、恋愛感情については、メールの内容を繰り返し見せてようやく『恋愛感情みたいなものがあるといわれたらある』と認めるようになった」
ずいぶん消極的な認め方だが、被告は次に、「恋愛感情を満たすためではなく、女性として幸せになってほしいと思った」と、恋愛目的でメールを送ったことを否認するようになったという。
ストーカー規制法は、特定者への恋愛感情を満たすために、繰り返し面会を求めたり監視を告げる行為などを「ストーカー行為」と規定している。
被告の供述は、恋愛目的ではないから、罪に問えないという理屈だ。
甲府地検は、「認否については明らかにしない。弁護活動に影響する可能性があるので」と慎重な対応だ。
法律の解釈などを巡り、法廷で弁護側と激しい論争となる可能性が高いとみているからだろう。
被害者からの告訴が取り下げられれば、立件できなかった今回の事件。
下山被告は4月上旬、被害者の女性に会い、犯行を打ち明け、謝罪した。
それでも被害者は告訴した。
「被害者の処罰感情は激しい」(捜査関係者)という。
“論争”の舞台は今後、甲府地裁に移る。かつての同僚を裁くことになる地裁は、今回の事件をどう見ているのだろうか。