怖い話教えてブログネタ:怖い話教えて 参加中
彼女を地元に残して大阪に出稼ぎに来ていた友人の話

派遣先の会社の勧める短期滞在に便利なウイークリーマンションに一人過ごす夜の楽しみは彼女との電話
毎日の長電話が相当な負担になるのは料金だけではなく携帯本体にもかかっている

充電しながらの通話で電話本体が熱く感じられるが、不調を感じても電話を切ることは出来ない
自分でも呆れるくらいに長電話をしていて気がついたが、時折異音が混ざる時があった
充電している筈なのにバッテリーの充電が切れる警告音とサインが出てくる様になったり、声の音量が小さくなったりもしていた

長電話して使い続けたので故障かと次の日に早速修理に持って行ったが、本体、バッテリー共に異常がないと後日連絡が来た
後は充電コードの異常くらいでしょうかと暫くはまた使えていたが、曖昧な説明に納得は出来ない
作業所から携帯ショップに寄り、家に戻ると何となくコンセントじゃないのかと思いついて疲れた体を折り曲げてコンセントを見てみたら、ただの黒い穴に見えるコンセントの穴から何かが出ている

爪楊枝で引っ掛けて見ると髪の毛が数本出てきた
黒く艶やかな柔らかな女性の髪の毛
女性と思ったのは掃除をしていて長い髪の毛が出てきたことがあるからだった
通勤の満員電車の中で髪の毛が服に付くのは珍しいが、ないことではない

毛が挟まって上手くコンセントが刺さってなかったのかなくらいに思いその日からそのまま充電コードを繋いで電話を続けていたが、その日を境に通話中の雑音がハッキリと混線した様な感じで人の声になり、隣から寝ている時に人の声がする様になったりした

日を追うごとに電話から聞こえる彼女の声は小さくなり、混線の雑音だらけのイガイガした声は大きくなるばかりで、流石に気持ち悪くなる
何より彼女との会話が上手く出来なくなる程だから携帯電話の買い替えを決心した

買い替えの前に写真データを確認しようとフォルダを繰っていると、二年前に肝試しで行った時に撮影された心霊写真風の写真が目に留まった
確か初めに見た時にはぼんやりと仄白く浮き上がる影でしかなかったものだったが、今は明らかに女性と判断出来るまでにその影は浮かび上がっている
長く艶やかな黒髪の下から僅かに光る瞳が見える気がして恐怖した

恐怖と同時に胸騒ぎがしてまたコンセントの穴を遠目から見てしまった
一度気になると人の衝動は収まらない…恐る恐るコンセントに近づくと暗い穴を覗きこむ
黒くて暗いだけの筈の穴が微かに光っている気がしたが、目が離せない

上の穴にはまたあの筋が見える
女性の髪の毛の艶やかな輝きがあり、下の穴を覗くとそこには髪の毛とは異なる黒く濡れた輝きがあった

芯から体が冷え切る恐怖から、部屋を飛び出して隣の会社の仲間の部屋へ転がり込んだ
事情を説明するも上手く言葉にならず、仕事仲間と共に部屋に戻ってもらいコンセントを確認する様に頼んだ

よく事情は分からないが、分からないから近づけたんだろうが、同僚がコンセントのカバーを外して後ろに飛びずさってきた

「ぅぅわぁぁああああ!」

カバーの外されたコンセント周囲の部分一杯に髪の毛がとぐろを巻く様に渦巻き、壁との間に埋め尽くす様に詰まっていた