ネクソンは2011年度の決算を発表した。ネクソンの会計年度は1月1日?12月31日までの区切りとなっているので通期のされている。  2009年にネクソンが日本企業となり,を行ったのは記憶に新しいが,決算に伴って詳細な資料が公開されている。ここでは興味深いものをピックアップしてお伝えしてみたい。  まず,決算の内容だが,通年での売上高は876?300万円,純利益257,Diablo3 RMT?500万円となっている。12月末までの1年間の業績だが,12月14日時点で発表されていた通期見込みの売上高を24儍疑匣丐虢Y果となっている。  が決算報告を掲載する場合は4月から始まる会計年度に合わせているので,今回もその例に倣ってグラフを作ってみた。今回の発表資料も,2011年度第3四半期分として扱っているので注意してほしい。 過去の決算グラフと形式を合わせたため,左側が空白なのはご容赦を  データが5四半期分しかなくて推移は読みにくいのだが,凸凹はあるものの,かなり高い利益率を保っていることはよく分かる。  公表されている資料だけだと四半期ごとの過去の推移が分からないのだが,年度単位の数値は公開されているので,そちらのグラフも提示しておこう。 左:4年間のデータ 右:純利益の項目はないが10年間の売上高推移  非常に見事な右肩上がりの成長を続けていることが分かる。  今期の決算を地域別に見ると,中国の伸びが非常に大きく,前年比46%増という成長を達成している。中国での人気作は「アラド戦記」(Dungeon & Fighter)と「カートライダー」などで,新しくサービスされた「マビノギ英雄伝」も好調とのこと。  また,課金ユーザー一人当たりの収益では,日本が中国に対して5倍程度になっている例がある一方(「メイプルストーリー」),ユーザー数では中国が日本の50倍を抱えている例(「カウンターストライクオンライン」)のような興味深い情報も記載されている。  韓国での売り上げも伸びており,新アクションゲーム「」が非常に好調のようだ。  グラフではどの地域もほぼ増収なのだが,よくよく見ると,北米のみ横ばい(実は微妙に下がっている)となっている。これは大規模なサイバー攻撃によってホリデー期間にサービスが停止していたことによる影響とのこと。  日本ではアラド戦記とメイプルストーリーに牽引され過去最高の売上高を記録している。マビノギ英雄伝も堅調。売上高は9月?12月の3か月間で32?400万円。1月から8月までの合計が93?500万円だと上場時に公開されているので,国内の年間売上高は125?900万円ということになる。日本市場の分析では,今後はコンシューマ&パッケージの市場からオンラインゲームや基本無料を採用する市場に転換するのは避けられないとしている。  昨年,韓国などで発生した,ハッキングによる大規模なアカウント流出については,グローバルなセキュリティーオフィスを設け,各国で行われていたセキュリティへの取り組みを統合して管理することで,トップレベルのセキュリティを確保するとのこと。  決算と同時に発表された会社説明資料にも興味深い内容があったので紹介しておこう。  今後,中長期での成長を持続するため,ネクソンが挙げている戦略は5つあるという。  既存ゲームタイトルの成長  地域/マーケット拡大  新規タイトル開発  新プラットフォーム展開  M&A  上にそれぞれのスライドを引用しておいたが,日本のマビノギの伸びが着実に持続していることと,全世界に占める割合に驚かされる。猫島などが追加されるのも頷ける話だ。  新規タイトル開発では「メイプルストーリー2」や「マビノギ2」の名前と(小さいが)スクリーンショットが見える。メイプルストーリー2は3D表示のゲームに,マビノギ2は英雄伝系のリアルなキャラクターのゲームになるようだ。  M&Aでは,FF11 RMT,過去に買収したWizetがいまや非常に大きな価値を持ったものになったことを挙げて,初期IPを取得していく方針を掲げている。  ちょっと気になるのは,増収増益ではあるのだが,今期の配当は無配と決まったことだ。株式公開時に株式分割される前の配当実績(100倍の金額)が提示されていたこともあり,配当のよい会社だと思っていた人には肩透かしの形となった。剰余金は上場益などと合わせてM&Aや新規事業などへ投資するとされているが,7000万株公開という上場規模から考えると,非常に大規模な事業計画が用意されているのかもしれない。  公開された資料全体が,パッケージゲームから基本無料ゲームへ移行する時代の趨勢を強く訴えたものとなっており,上場の波に乗る同社の勢いが感じられる決算といえるだろう。
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