令和6年度富士総合火力演習の後段演習の無線通信とナレーションを文字に起こししてみます。聞き取れない単語は図形(◆○など)で、全体的に聞き取れない部分やノイズの部分は~で表記しています。私が聞き取れなかった個所がわかりましたら、是非お教えください。また、間違い等あると思いますので、見つけた際はご指摘いただければと思います。

今回は状況の説明・状況開始から障害処理の準備までになります。

 

 

次に後段演習の想定及び後段の状況開始の彼我態勢について、説明します。

本演習の想定は、日本領土のある島に上陸した1コ混成機械化大隊規模の敵に対する陸上自衛隊1コ師団による反撃の場面です。

これより前方の畑岡一帯で実施するのは、彼我の作戦地域の1正面において、応急的に陣地防御する敵1コ機械化中隊基幹に対する増強即応機動連隊による陣地攻撃です。

状況開始の彼我の状況については、敵1コ機械化中隊基幹が陣地前方に障害を構成し、陣地を占領した状態です。我については、斥候などがすでに潜入を完了し、敵の防御要領を解明中です。また、我の先遣部隊は皆様の前方、左の稜線から右の稜線で接触線を維持。連隊主力は現在、攻撃準備中です。連隊長は、斥候、UAV、接触部隊などから得た敵情を収集し、主力の攻撃を有利にするため、重要目標に対する事前制圧や攻撃のための諸準備を実施中です。状況開始以降、目標情報に基づく重要目標に対する事前制圧、攻撃準備射撃前段における敵の減殺及び攻撃準備射撃後段の障害処理に係る火力戦闘を実施します。

 

「演習の状況を只今から開始する。状況開始」

 

「02、63。目標2件送る」

「送れ」

「1件目。時1115、3段山左の台、座標02060812。敵自走軽榴弾砲×2、射撃陣地占領中。2件目。時1115、3段山中の台、座標02200817。敵自走高射機関砲×2、射撃陣地占領中。送れ」

「02了」

「80、03。HVT目標。60の台、自走軽榴弾砲×2。70の台、自走高射機関砲×2。射撃せよ」

「80了」

「80B、80。射撃任務2件。1件目、座標02060812、陣地占領中の自走軽榴弾砲×2。2件目、座標02200817、陣地占領中の自走高射機関砲×2。射撃諸元送れ」

「80B、了解」

「HVT射撃、初弾発射せり」

「弾着、いま」

「02、63。敵情2件送る」

「送れ」

「1件目、3段山左の台、敵自走軽榴弾砲1門小破、1門大破。2件目、3段山中の台、敵自走高射機関砲2門大破。送れ」

「02了」

「100、110。現在までの100正面の状況送れ」

「60の台、自走軽榴弾砲、1門小破、1門大破。70の台、自走高射機関砲2門大破」

「連隊は引き続き畑岡正面の敵を警戒する」

「110、100。了解」

 

「●●●●100、放送する。師団は敵対空火器を含む所望の制圧を完了。引き続き、攻撃準備射撃を1123から前段・後段に区分し、後段に障害処理援護射撃を実施する。また、計画通りCASを3段山敵砲兵陣地に対し実施するとともに、AHによる火力戦闘を開始する。以上、放送終わり」

師団FSCCがF-2戦闘機の近接航空支援CASを指向します。無線ではF-2戦闘機を地上で誘導する前線航空統制官をFACとして呼び出します。

「FAC、こちら121。3段山一帯の敵砲兵陣地に対するCASを指向する」

「FAC了解。これより離陸、作戦地域に前進する」

「121、100。AH火力を2の台一帯に指向せよ」

「121、了解」

「アタッカー、こちら121。AH火力を2の台一帯に指向する」

「アタッカー了解」

「112、102。送れ」

「送れ」

「偵察隊情報、一件を送る。時1119、7の台方向、座標02360762、敵UAV3型1、畑岡2の台方向へ飛行中。送れ」

「了」

87式高射機関砲は、近距離かつ低空以下の目標に対処するため、射撃統制装置と2門の35㎜機関砲を搭載し、捜索レーダーにより、敵UAVを含む航空機などを捜索、目標を発見したならば直ちに射撃して撃墜します。

「こちら87AW、5の台方向、敵UAV発見。追随よし。射撃用意、射て」

「目標撃墜。射ち方待て」

「03、こちら62。5の台方向、敵UAV1機撃墜。引き続き警戒する」

「03了」

 

演即応機動連隊は主攻撃方向正面の敵戦闘力減殺を重視して、火力戦闘を行います。攻撃準備射撃は、攻撃開始に先立ち重要目標を撃破するととともに、相対戦闘力の優越を獲得するために実施しますが、本日は演習時間の関係から、所望の効果を得る時間を短縮して実施します。攻撃準備射撃の開始時刻となりました。

「攻撃準備射撃前段、初弾発射せり」

「弾着、いま。攻撃準備射撃、前段開始」

「7の台戦車、6の台装甲車、対榴正面射、射て。命中、射ち方待て」

「5の台戦車、対榴、2班正面射、射て。命中、射ち方待て。2班長、41A。撃破情報送信」

「40確認」

「03、こちら40。畑岡正面、戦車2、IFV1撃破。引き続き警戒する」

「03了」

敵第一線陣地、3の台付近に潜伏した敵指揮官を左の台前方の狙撃組が射撃します。

「射手、目標確認。◇◇調整、よければ報告」

「準備よし」

「射て」

「命中、射ち方止め」

「03、こちら68。3の台南則、敵指揮官撃破。送れ」

「03了」

「02、63。敵情送る」

「送れ」

「時1124、2の台、座標03150673、IFV×1、陣地占領中。送れ」

「02了」

「121、112。HVT目標、2の台、IFV1、陣地占領中。AH射撃頼む」

「121了解」

「アタッカー、こちら121。射撃任務。2の台、座標03150673。陣地占領中のIFV×1。時速やか。送れ」

「アタッカー了解」

会場上空に進入してきたヘリコプターは対戦車ヘリコプターAH-1S、コールサインはアタッカーです。20mm機関砲、対戦車誘導弾TOW及びロケット弾を搭載し、主に戦車を撃破します。

「2の台、IFV、現出。2の台、IFV、現出」

「アタッカー、目標2の台」

「3連射2回、爾後連射。発射用意、発射」

「射ち方止め」

「121、こちらアタッカー。2の台、IFV、停止、炎上確認」

「121、了解」

「112、こちら121。2の台、IFV×1、停止炎上。送れ」

「了」

「112、102。送れ」

「送れ」

「通信隊情報1件送る。時1126、3の台北西隠蔽部、座標541203110711、敵SAMらしき電磁波情報を確認。UAVにより敵情を解明してもらいたい。送れ」

「了」

「63、03。3の台北西隠蔽部、敵SAMらしき電磁波情報確認。UAVで偵察せよ」

「63了解。UAVにより敵情を解明する」

「4・5の台戦車、装甲車、対榴、2班正面射、射て」

「02、63。敵情送る」

「送れ」

「時1127、3の台北西隠蔽部、座標03140711、敵SAM×1確認。送れ」

「02了」

「80、03。3の台北西隠蔽部、敵SAM1。射撃せよ」

「80了」

「80B、80。射撃任務。座標03140711、SAM×1。用意次第送れ」

「80B了解」

「□□射撃、初弾発射せり」

「弾着、いま」

「最終弾、発射せり」

「弾着、いま」

「02、63。敵情送る」

「送れ」

「3段山、SAM×1大破。送れ」

「02了」

「1122」

「100、110。現在までの10正面の状況を送る。戦車×2、IFV×2、敵SAM×1を撃破。連隊は引き続き攻撃準備を実施する」

「110、100。了解。終わり」

「FAC、こちら121。敵SAMを破壊完了。計画通り、3段山にCASを実施してもらいたい」

「FAC了解」

敵SAMの制圧が完了したため、敵砲迫を減殺し、我の攻撃をより有利にするため、3段山の敵砲迫陣地に対して近接航空支援、通称CASが実施されます。また演即応機動連隊はCASに先立ち、70式地雷原爆破装置及び92式地雷原処理車をそれぞれ装備した施設分隊を投射準備地域である左の台及び右の台へそれぞれ推進します。

「80、70。火力要求。時速やか、障害処理援護射撃、煙弾混用、1分間頼む」

「80了」

「80B、80。射撃任務。障害処理援護射撃、用意次第送れ」

「80B了解」

「障害処理援護射撃、初弾発射せり」

「弾着、いま。障害処理援護射撃、開始」

「70、65。投射準備位置まで前進する」

「70了」

現在WAPCに先導されて会場に進入してきた車両は92式地雷原処理車及び70式地雷原爆破装置を搭載したWAPCです。92式地雷原処理車は陣前の地雷原を迅速に戦車用通路に開設することができます。70式地雷原爆破装置は陣前の地雷原に投射し、人員用通路を開設することができます」

「●●●●、100。放送する。師団は3段山一帯に対してF-2戦闘機によるCASを実施する。以上、放送終わり」

「▲▲▲、03。師団は3段山一帯に対しF-2によるCASを実施する」

「100、130。敵防空組織に対する通信電子攻撃を1135より開始する」

CASを安全に実施するため、敵対空火器などに対し通信電子による妨害を指示しました。F-2戦闘機によるCASを映像により紹介します。スクリーンに表示されている航空機は航空自衛隊のF-2戦闘機であり、米国のF-16戦闘機を日本の運用の考え方や地理的な特性に合わせ、日米の優れた技術を結集し、日米共同で改造開発した戦闘機です。CASの実施に当たっては、航空機の侵入経路上の敵の対空火器の制圧、通称SEADを事前に実施します。F-2戦闘機によるCASが実施されました。

「●●●●、100。放送する。我のCASにより3段山の敵自走軽榴弾砲3を破壊。師団は引き続き攻撃準備射撃を継続し、各正面の障害を強行処理して攻撃開始を準備する。以上、放送終わり」

 

【略称等】

UAV:無人航空機

CAS:近接航空支援

HVT:高価値目標(そもそもHVTで合っているのか自信がありません)

FAC:前線航空統制官

IFV:歩兵戦闘車

SAM:地対空誘導弾

対榴:対戦車榴弾

WAPC:96式装輪装甲車

AH:攻撃ヘリコプター

FSCC:火力調整所