諸君、ご壮健かな。
最近、動く歩道が増えた。ただでさえ被災地(職場)に向かう哀戦士(サラリーマン)たちが、その上で揺られる姿は、まるでベルトコンベアに乗せられる量産型ザクのようで寒々しい。
しかし、そこに華を添える女傑が現れた。オバーンでも汚ジーン、暴君オニーンでもなく。
悪ネーン(オネーン)。
ベルトコンベアは二列体系。左が静止、右が徒歩レーンだ(地方で異なるがここはこれでいきたい)
私は徒歩レーンを歩いていたが、そこはオサーン。石田純一ばりに一休み、静止レーンで元気な機体を見送り始める。
(老若男女…太っちょ…やせっちょ…)
ぼんやりと不敬なことを考えてると、死んだ魚の群れの中に光り輝く個体が。そう。
悪ネーン。
30前後だろうか。その辺りの感性は鈍く年齢予想はあてにならんのだが、ハツラツ。ケイン・コスギも原辰徳も松岡修造も顔負けなくらい活力に満ちた、素敵な女子。
スタ!スタ!スタ!
しかし、悪ネーン!横を見たりスマホを見たり前を見なければ、危ないぞ!辺りにも歩きスマホ禁止と所狭しと布告が貼ってある。
まさに唯我独尊!引かぬ!媚びぬ!顧みぬ!これくらいの意思がないと皇帝十字陵は建てられんか!
しかし渋滞は詰まるのが常。多分に漏れず、歩行レーンもつまり、悪ネーンの前に立ち止まる…。
巨大な漢!
(!)
彼が立ち止まるが、前を見ない悪ネーンは気が付かない。あっち見てこっち見て、まずい!そこはシグナルは赤!激突!隣の晩ごはん!
私は一人でハラハラドキドキ。富士急ハイランドの帰り道のような朝。
悪ネーン。一歩二歩と迫り、嗚呼!だめか…これが若さか…。
(!)
悪ネーンはさすが若き血潮。10センチにも満たない至近距離で急ブレーキ。私なら両脚つってビーンとなるくらいの緊急作動。
どちらにせよ、よかった…。
「チッ」
(!)
この時の私は、どんな顔をしていただろう。阿呆?力石徹?なぜなら。
舌打ちしたのは悪ネーン。
巨大な漢の背中を下から上に舐めるように見上げる…まるで全盛期の的場浩司か清水宏次朗のような、見事な三白眼とシャクレ。
メンチ。まさしくメンチ。ソースをかけて食べたくなるくらいの。
(ちっ!ちっ!ちっ!)
眉間に八の字の皺を寄せるその様、般若だ!正しく鬼子母神のごとき、守るべきものを…ないか。
鼻フックをしたみたいな表情だな。
そんなことをぼんやりと考える、日常の朝。