諸君、ご壮健かな。
新型コロナウイルスは相変わらず猛威を奮っているが、世の中はそれに順応してきている。
「慣れていくのね、自分でもわかる」
アルテイシア…。
変わりゆく寒い時代ではあるが、私は映画館に行った。たまには良いものだ。
「それでも男ですか!軟弱者!」
おいおいアルテイシア、すぐに人を叩くのは感心しないな。しかもそれは私ではない、カイ君だ。
最近は一つおきに座るのが主流であったが、どうやらその時期は過ぎ去ったようだ。何故なら。
間隔あけない密集態勢。
それはいい、私を悩ますのはそこではない。では何か。
座席左右のどちらのカップホルダーを使えば良いか、だ。
左だったかな、余りにも久しぶりすぎてしきたりを忘れてしまった。
「兄さん、あなたなら出来るわ」
おだてないでください、おっとキャラを間違えた。アルテイシア、私がプレッシャーをかけられている!?
はたとみると、4個左に座る男性が右のカップホルダーを使っているではないか!ううむ、ここは右を使用すべきか。
しばらくすると、ある青年が入ってきた。
「えぇっと、俺の先はってね」
「この…なんじゃく…」
アルテイシア、出てこなくていい。ここは穏便に済ませたいのだ。
青年は私の左2つ先に座り、カップホルダーを左に。つまりだ。
三つ先の席に座る人は、両方のホルダーが埋まっているのだよ。
「圧倒的ではないか…ふふふ、圧倒的ではないか。
圧倒的、圧倒的ぃぃ!」
恐ろしい事態に、流石の私も恐れおののいた。その閉塞的な席に来るのは誰か?そして如何なるいさかいを魅せるのか?
「2人が戦うことなんてないのよ!戦争だからって2人が戦うことは!」
ええぃ!ままよ!アルテイシア…私とて万能ではない。どうしようもないことだってあるのだよ!
で、どうなったか!!!
その席には誰も来なかった。
…。