リジェネ・レジェッタは、リボンズに付き従う部下のイノベイドのひとりだ。しかし、他のリヴァイヴやヒリング達に比べると、リジェネのリボンズに対する態度は、2ndシーズン当初の頃からちょっと挑戦的で生意気な感じが漂っていたと思う。そして、リボンズ自身はそれを受け流したりからかいながらも、途中までは意外と大目に見て容認してきたようにも思う。それは一体どうしてだったのか?
リボンズの配下に居る主要なイノベイドは、何故か同じDNA(塩基配列パターン)を持つ者が二人ずつ作られている。その理由は何だかよくわからないが、ともかくリヴァイヴとアニュー、リボンズとヒリング、ブリングとデヴァインといった感じで二人セットになっている。しかし、リジェネだけは相方が側にいなくて、敵対する側のティエリア・アーデとなっている。リジェネだけは兄弟同然の存在が、味方にいないのだ。同じ塩基配列で生み出されたイノベイド同士は、脳量子波の同調も格別だし、存在自体を互いに特別なものと感じる傾向があるようだ。普通の人間と異なって肉親が存在しないせいかも知れない。他に血縁を感じる相手がいないイノベイドにとっては、同じDNAであることが唯一の血縁のように感じるのかも。それ故に、リジェネはリボンズ軍団の一員としての自覚がどうしても強くならず、外に意識が向きやすいのかも知れない。それが反抗的な態度に表れてるのかも。
そして実は小説での描写によると、リジェネはリヴァイヴやヒリングよりも先に生み出されている。よって、ヴェーダ掌握後のリボンズが、人間世界の掌握(地球連邦への介入等)に暗躍し始めた際にも、リジェネは当初から数々の工作活動を担って、リボンズに貢献して活躍し働いている。ルイスを誘導してリボンズ側に引き込んで、数々の資金援助をルイスから得たのもリジェネの働きだろう。連邦や軍の上層部とリボンズの間にパイプを作り、アロウズの結成を働きかける等の数々の裏工作において、リジェネは非常に優秀な働きを見せて、リボンズから一応は一目置かれる立場になったのではないか。他のイノベイドも後から加わり、リボンズの手足として指示通りに働いただろうが、初期の頃のブレインとして役に立ったリジェネは、多少はカタチだけでも特別扱いされたのだろう。
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リジェネは、その当初の貢献により自分に自信を持つようになった気がする。それ故に、ヴェーダをレベル7まで掌握しているリボンズに対して、色々と議論を持ちかけたり自分なりの意見を進言したりしたように思う。時にはリボンズに対する軽い挑戦を試み、世界の動向等に対する自らの予見が、リボンズとヴェーダによる予見と比較して、どちらが優れているかを競ってアピールしたり。自分はヴェーダを掌握するリボンズに次ぐ見識や能力を持っているはずだと。ヴェーダさえあれば、むしろ自分の方がリボンズよりも優れているかも知れない等と思う面もあったのでは。リボンズはそのリジェネの挑戦を面白がりながら、少しからかって弄んだり挑発したりしながら楽しんでいた気がする。自分はヴェーダを掌握して普通のイノベイドよりも優位にある。リボンズはその余裕の上で、リジェネを転がしながら知的ゲームのように遊んだりもしたのでは。
しかし、自分の方が優れていると思い込みながら、リボンズに挑発されたり受け流されたりするリジェネの方は、少しずつ苛立ち業を煮やすようになったのではないか。ヴェーダがあるからといっていい気になっているリボンズが疎ましく感じたりもする。リボンズはもっと自分を高く評価すべきなのに、どこか軽んじて見えるのは面白くない。リヴァイヴやヒリング達の登場でイノベイドの人数が増えたのも、リジェネの重用を薄める要因になっただろう。以前に比べるとリボンズは自分を軽んじているところがある。自分にだって、ヴェーダさえあればリボンズを上回る事は十分可能なのに。
初期の頃から重要任務に就いていたリジェネは、もしかするとイオリア計画に関しても他のイノベイドよりも深く広く知る機会があった可能性もある。イノベイドは全員漏れなく「イオリア計画の遂行」を最優先事項としてヴェーダに刷り込まれて生まれてくる。計画を歪ませる事なく正しく実行することこそが、イノベイドにとっての存在意義だといってもいい。その面で本当に熟慮して現状況を見た場合、果たしてリボンズのやり方は計画の主旨通りになっているのだろうか?それをリジェネは常に考えるようになっていたとも思える。リボンズはヴェーダのレベル7領域までを掌握しているという根拠で、自分の言葉は即ちヴェーダの意思でありイオリア計画そのものだと言う。しかし、それが真実かどうかを確かめる手段はリジェネ達にはない。その事がリジェネにとっては歯痒かったのだろう。
2ndシーズン第8話「無垢なる歪み」の中でもリジェネはこう独白している。…「イオリア・シュヘンベルグは、第3段階までの計画を練りながらも、第1段階の戦争根絶に執着してた。リボンズ・アルマークの計画か、ソレスタルビーイングの理念か…」
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そもそも自分の分身とも言えるティエリアはリボンズの側に与していない。そして、ティエリア達はリボンズすら知り得てないツインドライヴシステムをイオリアから託されている。オリジナルGNドライヴもティエリア達が全て保有している。この状況はリボンズに対する疑問や不満を抱えているリジェネにとって、「本物のイオリア計画とは何なのか?」という疑惑と好奇心と野望を持たせることに繋がったのではないか。本物のイオリア計画の遂行者は、リボンズであるかどうかは疑わしい。むしろリボンズでなければならない確固たる理由も無い。どうせなら、自分こそがイオリア計画の真の遂行者であっても良いはずだと。
リボンズは、リジェネのそんな思いをある程度以上気付いていたはずだ。しかし、リジェネには自分を本当に出し抜く事など出来ないとタカを括っていた。リジェネにはそんな能力も度量ないと思っていた。だから、リジェネの悪足掻きや独断行動を見て見ぬフリをして黙認し、遠巻きに様子を窺いながら笑い飛ばしていた気がする。リボンズには、どこまでやれるか見せてみな!というリジェネの挑戦に刺激を求めて楽しむ気持ちもあったのだろう。もしもリジェネのいたずらが過ぎるようであれば、自分はいつでもリジェネにお仕置きが出来る。リジェネの知らない能力を自分はヴェーダから与えられている。リジェネが自分に内緒にしていることも、自分には全てお見通しだ。自分がリジェネに負ける要素は何もない。だから、余裕をかましながらリジェネを泳がしていたのだろう。
以前はリボンズにとってのリジェネは、優秀な部下であり信頼も置けた。リジェネにとってのリボンズは、自分に重要な仕事と立場を与えて評価してくれる尊敬に値する存在だった。リボンズと共にイノベイターとしてイオリア計画を推進させる。そのことに誇らしさこそ感じても、何の疑問も問題も感じなかっただろう。しかし、いつしかそれは少しずつ変わって行った。リボンズはリジェネの扱い方を間違えたのかも知れない。逆にリジェネはリボンズを甘く見過ぎてしまったのかも知れない。結果的に、リジェネはリボンズに反旗を翻したが、リボンズの方が上手で返り討ちに。でも、リボンズもリジェネを少し舐め過ぎていた。まさかティエリアと結託して、一瞬の隙を突いて自分からヴェーダを奪う存在になるとは。
リボンズは、ガンダムマイスターとなったティエリアを甘く見ていたのもあったし、ティエリアと同じ塩基配列パターンを持つリジェネの、ティエリアに対する同類意識や脳量子波レベルの結びつきを軽く見積り過ぎていた気がする。ティエリアだけ、リジェネだけでは自分に太刀打ち出来ないとしても、その両方が能力を合わせた場合までは考慮してなかったのかも知れない。リジェネは当初からティエリアを仲間に引き入れようと画策していた。その当時はティエリアの行動を「イオリア計画の障害となっている」と諭して、リボンズ側に導こうとしたが、その後は結局リボンズの方こそ計画の障害だとリジェネは思ったのだろう。リボンズにヴェーダを掌握させ続けるくらいなら、自分の方からティエリア側に加担して、ヴェーダをリボンズから奪い取りたかったのでは。その思惑はティエリアにヴェーダを渡したいというよりも、ともかくリボンズから取り上げたかったんじゃなかろうか。