深夜3時。

芝浦PA。

レンは一人、CBR400RRの横に座っていた。

夜風が静かに吹いている。

他のメンバーはまだ来ていない。

レンはぼんやりと首都高の方を見ていた。

頭の中には、あの白いバイクのことしかなかった。

ファントム。

パールホワイトのマシン。

そして――

あのライダー。

「……似てる」

何度も同じ言葉が浮かぶ。

レンは立ち上がり、バイクのミラーを見る。

そこに映る自分の顔。

そして、あの瞬間を思い出す。

暗いバイザーの奥。

ほんの一瞬だけ見えた影。

レンは小さく呟いた。

「……俺に」

言葉が止まる。

少し考えて、首を振る。

「そんなわけない」

その時だった。

背後から声がする。

「何がそんなわけないんだ?」

振り向くとカイトだった。

FZR400RRが静かに止まる。

レンは少し迷ったあと、口を開く。

「なぁ、カイト」

「ファントムってさ…」

カイトは何も言わずに待つ。

レンは言いづらそうに続ける。

「未来のバイクだと思うか?」

タカシなら笑う話だ。

だがカイトは違った。

少し考えてから答える。

「あり得る」

レンは驚く。

「マジで言ってんのか?」

カイトは静かに言う。

「加速も制御も、今のバイクじゃ説明できない」

「だったら、未来の技術だ」

レンは黙る。

カイトが続ける。

「それに」

「お前、気づいてるだろ」

レンの心臓が少しだけ強くなる。

「何を…」

カイトはレンを見る。

「自分に似てるってこと」

レンは言葉を失った。

夜の空気が一瞬止まったように感じる。

レンは小さく言う。

「……やっぱりそう見えるか?」

カイトはうなずく。

「雰囲気だがな」

「走りも似てる」

レンは首都高の方を見る。

遠くの闇。

あの白いバイクが走っている場所。

レンはゆっくりと言った。

「もし…」

「もしあれが」

一度、言葉を止める。

そして小さく言う。

「未来の俺だったらどうする?」

カイトは少しだけ笑った。

「その時は」

「抜くしかないだろ」

レンは一瞬驚いて、そして笑った。

「だな」

その時。

遠くの高速道路から、あの音が聞こえた。

ヒュイーーーーーン。
芝浦PAでバイクに跨る二人、夜の首都高を疾走

レンとカイトが同時に振り向く。

白い光。

C1の闇を走るパールホワイトのバイク。

ファントム。

レンはヘルメットをかぶる。

「行くぞ」

CBR400RRのエンジンが目を覚ます。

キィィィィィン!!

カイトもエンジンをかける。

FZRの音が響く。

白いバイクを追って、二台は夜の首都高へと加速した。

――――――――――

次回
「対峙」

 

翌日の夜。

芝浦PA。

レンは一人でバイクの横に立っていた。

ガンメタのCBR400RR。

静かな夜の空気の中で、レンは昨日のことを思い出していた。

白いバイク。

ファントム。

あの加速。

そして――

あのライダー。

レンは小さく呟く。

「どっかで見たことある…」

その時、後ろから声がした。

「またその話かよ」

振り向くとタカシが笑っていた。

「お前昨日からずっとそれ言ってるじゃん」

ケンジもバイクから降りる。

「顔なんて見えなかっただろ」

レンは首を振る。

「ほんの一瞬だけ」

ミサキが言う。

「ヘルメット越しに?」

レンは少し考える。

「いや…」

「顔っていうより…」

言葉を探す。

「雰囲気?」

タカシが笑う。

「そんなの分かるかよ」

カイトは黙っていた。

レンはバイクのミラーを見る。

そこには自分の顔が映っている。

ふと、昨日の瞬間が頭に浮かんだ。

白いバイク。

パールホワイトのカウル。

暗いバイザー。

その奥の影。

レンは自分の顔を見ながら呟いた。

「……似てる」

タカシが聞き返す。

「何が?」

レンはすぐに首を振った。

「いや、なんでもない」

その時だった。

遠くの高速道路から、かすかな音が聞こえた。

ヒュイーーーーーン。

全員が振り向く。

白い光。

C1の向こうを走る一台のバイク。

ファントム。

ほんの数秒で、その光は闇に消えた。
夜景とバイク、若者たちの集まり

カイトが静かに言う。

「また走ってるな」

レンは白い光が消えた方向を見つめた。

そして小さく呟いた。

「……やっぱり似てる」

誰にも聞こえない声だった。

――――――――――

次回
「影」

 

深夜2時過ぎ。
首都高の夜景とバイク5台

C1を走り終えたゴーストキッズの5台は、再び芝浦PAへ戻ってきた。

エンジンを止めると、さっきまで響いていた高回転の音が消える。

キィィィィィン……

静かな夜の空気が戻ってきた。

タカシがヘルメットを脱ぎながら言う。

「くそー…」

「全然追いつけなかった」

ケンジもバイクから降りる。

「加速が違いすぎる」

ミサキが腕を組む。

「コーナー出口で一気に離された」

カイトは何も言わない。

ただ黙ってC1の方を見ていた。

レンはまだバイクにまたがったままだった。

頭の中で、さっきの瞬間が何度もよみがえる。

白いマシン。

パールホワイトのカウル。

青いライン。

そして――

あのライダー。

レンは小さく呟いた。

「どっかで見たことある…」

タカシが振り向く。

「え?」

レンは少し考えてから首を振る。

「いや…気のせいか」

ケンジが言う。

「顔見えたのか?」

レンはゆっくり答える。

「一瞬だけ」

「でも…」

言葉が止まる。

ミサキが聞く。

「でも?」

レンは遠くの高速道路を見つめる。

「なんか変なんだ」

カイトが初めて口を開く。

「どう変なんだ」

レンは少し笑った。

「分かんない」

「でも…」

そして小さく言う。

「知ってる顔だった気がする」

タカシが笑う。

「そんなわけないだろ」

「あんなバイク見たことないし」

ミサキが言う。

「未来のバイクかもね」

タカシが笑う。

「映画じゃねーんだから」

その時だった。

遠くの高速道路から、かすかな音が聞こえた。

ヒュイーーーーーン。

全員が振り向く。

白い光がC1の向こうを走り抜けていく。

パールホワイトのバイク。

ファントム。

ほんの数秒で、その光は闇に消えた。

レンはその方向を見つめたまま呟く。

「……やっぱりどこかで見たことある」

夜の首都高を、白いバイクが走り続けていた。

――――――――――

次回
「違和感」