小説 小はん殺し結城純一郎の演説 (18)
「押すなよ、カメラを壊す気か!」
「国民の知る権利をあんたらは犯すつもりかよ!」
「何で大会を報道させないんだよ!」
「マスメディアを敵に回したら、後で後悔するぞ!」
正義面をしたマスゴミの抗議に防衛隊員は無言で報道マンを外へ排除していく。
外で、旧右翼と左翼による九段会館への突撃シーンを切り取る準備をしていた、各社の
報道チームが入り口での押し問答を撮るべく殺到した。排除されまいとロビーで最後まで
がんばっていた報道2001の白岩も防衛隊員によって外へ連れ出された。
「白岩さん、あぶない」
伊藤ゆかりがこけそうになった白岩を見て叫んだ。そして群れをかき分け白岩のところ
まで走っていった。
「だいじょうぶですか?」
伊藤ゆかりが声をかけた。
「ひでえことをしやがる、靖国の旧右翼と駿河台の左翼が九段会館に突撃してくるもんで、
やつら疾駆八苦なんだ」
白岩が国家生活党防衛隊をののしって言った。
「まずはウチの報道車のところまで行きましょう」
伊藤ゆかりは白岩の体を支えながらフジテレビの報道車をめざし歩き出した。フジテレ
ビの報道車は大きな楠木の横にあった。九段会館大ホール入り口前の駐車場と内堀通り歩
道に面した九段会館は千名の臣民軍兵士によって囲まれていた。いつのまに動員したのか
しら、伊藤ゆかりはフジテレビ報道車のドアを開けながら後ろをふりかえる。白岩の後か
ら報道車に乗り込むと中にはカメラマン小泉とクルーキャプテンの中村がいた。時間は午
後三時四十分になっていた。伊藤ゆかりは報道車の窓から、ヤマト宅配車が九段会館の駐
車場の鉄扉の前でガードマンに停められているのを見ていた。
「飲料水をお届けにあがりました」
クロネコヤマトの緑色の制服を着た男がガードマンに言った。ガードマンは大ホール玄
関口を指差した。上は墨が一滴入ったクリーム色、下は草色でそこの黄色のロゴで宅急便
という太い文字があり、両方のドアには親猫が子猫を大切に運ぶクロネコヤマトのマーク。
そのヤマト運輸の車が九段会館の駐車場に三台入ってきた。大ホール玄関口に停車したヤ
マト運輸の宅配車から、つぎつぎと臣民軍兵士によってボトルが入ったダンボール箱が九
段会館大ホールのロビーに運ばれる。ダンボール箱は昭和館にも運ばれていった。車から
積み下ろしが終わると、ヤマト運輸の宅配車は内堀通りへと消えていった。ダンボールの
中身はもちろん臣民軍兵士が投げるバルサンやラッカーシンナー入りボトルだった。
時間は午後三時五十分になった。隊列となって国家生活党の大会代議員一千名は、九段
会館大ホールの裏口から牛ヶ淵ぞいに千代田区役所の裏を抜けていった。九段会館の前の
歩道は、日本遺族会入り口から千代田公会堂前まで臣民軍が防衛していた。
ホリホリモン江掘貴之を先頭にしたカラス軍団はちょうど、九段下交差点にさしかかっ
たところだった。専修大学方向に向かっている。ホリホリモンはまだ公安に面われしてい
なかっただけでなく、顔情報は黒いヘルメットに白いマスクで隠していた。カラス軍団の
三列縦隊は遥か武道館方向まで伸びていた。北の丸公園で集結し、そこから行進してきた
のだと亀井静香は推測した。カラス軍団が何処の党派かを特定することが先決だった。党
派を特定できないことにはカラス軍団の政治目的がわからない。亀井静香は九段会館ウオ
ッチ公安私服情報部隊の半分をカラス軍団に差し向けることにした。そして公安総務課の
デスクに共産党担当とオウム担当の私服を現場に今すぐ派遣することを無線で要請した。
カラス軍団の数を特定しろ! 亀井静香は部下に無線で指示した。十人ほどの私服が九段
坂の歩道を登っていった。カラス軍団は田安門から続々と陸橋を渡り靖国神社から東京理
科大学前の九段坂車道を行進してくる。時間は三時十五分になっていた。四千名の部隊が
九段下交差点を神保町方面へと横断していったのは午後三時三十五分だった。
「国民の知る権利をあんたらは犯すつもりかよ!」
「何で大会を報道させないんだよ!」
「マスメディアを敵に回したら、後で後悔するぞ!」
正義面をしたマスゴミの抗議に防衛隊員は無言で報道マンを外へ排除していく。
外で、旧右翼と左翼による九段会館への突撃シーンを切り取る準備をしていた、各社の
報道チームが入り口での押し問答を撮るべく殺到した。排除されまいとロビーで最後まで
がんばっていた報道2001の白岩も防衛隊員によって外へ連れ出された。
「白岩さん、あぶない」
伊藤ゆかりがこけそうになった白岩を見て叫んだ。そして群れをかき分け白岩のところ
まで走っていった。
「だいじょうぶですか?」
伊藤ゆかりが声をかけた。
「ひでえことをしやがる、靖国の旧右翼と駿河台の左翼が九段会館に突撃してくるもんで、
やつら疾駆八苦なんだ」
白岩が国家生活党防衛隊をののしって言った。
「まずはウチの報道車のところまで行きましょう」
伊藤ゆかりは白岩の体を支えながらフジテレビの報道車をめざし歩き出した。フジテレ
ビの報道車は大きな楠木の横にあった。九段会館大ホール入り口前の駐車場と内堀通り歩
道に面した九段会館は千名の臣民軍兵士によって囲まれていた。いつのまに動員したのか
しら、伊藤ゆかりはフジテレビ報道車のドアを開けながら後ろをふりかえる。白岩の後か
ら報道車に乗り込むと中にはカメラマン小泉とクルーキャプテンの中村がいた。時間は午
後三時四十分になっていた。伊藤ゆかりは報道車の窓から、ヤマト宅配車が九段会館の駐
車場の鉄扉の前でガードマンに停められているのを見ていた。
「飲料水をお届けにあがりました」
クロネコヤマトの緑色の制服を着た男がガードマンに言った。ガードマンは大ホール玄
関口を指差した。上は墨が一滴入ったクリーム色、下は草色でそこの黄色のロゴで宅急便
という太い文字があり、両方のドアには親猫が子猫を大切に運ぶクロネコヤマトのマーク。
そのヤマト運輸の車が九段会館の駐車場に三台入ってきた。大ホール玄関口に停車したヤ
マト運輸の宅配車から、つぎつぎと臣民軍兵士によってボトルが入ったダンボール箱が九
段会館大ホールのロビーに運ばれる。ダンボール箱は昭和館にも運ばれていった。車から
積み下ろしが終わると、ヤマト運輸の宅配車は内堀通りへと消えていった。ダンボールの
中身はもちろん臣民軍兵士が投げるバルサンやラッカーシンナー入りボトルだった。
時間は午後三時五十分になった。隊列となって国家生活党の大会代議員一千名は、九段
会館大ホールの裏口から牛ヶ淵ぞいに千代田区役所の裏を抜けていった。九段会館の前の
歩道は、日本遺族会入り口から千代田公会堂前まで臣民軍が防衛していた。
ホリホリモン江掘貴之を先頭にしたカラス軍団はちょうど、九段下交差点にさしかかっ
たところだった。専修大学方向に向かっている。ホリホリモンはまだ公安に面われしてい
なかっただけでなく、顔情報は黒いヘルメットに白いマスクで隠していた。カラス軍団の
三列縦隊は遥か武道館方向まで伸びていた。北の丸公園で集結し、そこから行進してきた
のだと亀井静香は推測した。カラス軍団が何処の党派かを特定することが先決だった。党
派を特定できないことにはカラス軍団の政治目的がわからない。亀井静香は九段会館ウオ
ッチ公安私服情報部隊の半分をカラス軍団に差し向けることにした。そして公安総務課の
デスクに共産党担当とオウム担当の私服を現場に今すぐ派遣することを無線で要請した。
カラス軍団の数を特定しろ! 亀井静香は部下に無線で指示した。十人ほどの私服が九段
坂の歩道を登っていった。カラス軍団は田安門から続々と陸橋を渡り靖国神社から東京理
科大学前の九段坂車道を行進してくる。時間は三時十五分になっていた。四千名の部隊が
九段下交差点を神保町方面へと横断していったのは午後三時三十五分だった。