前回の記事でも書いたが、日本が先日10月27日(ニューヨーク時間)回国連総会第1委員会で非核保有国が主導した「核兵器禁止条約」交渉開始を定めた決議が採択で反対票を投じたことについて産経新聞を始め、米国の「核の傘」に入る日本は同盟国である米国への配慮を優先したとの報道がされている。
だが、メディアは今回の問題にもっと切り込んで報道をすべきだ。

ここ何年も、日本の国民向けのメッセージと海外で発信し続けているメッセージの矛盾している問題の内容にもっと焦点を当て報道する時期に来ている。。。というか2年前にその報道を大々的にすべきだった。


2014年、12月、オーストラリアのウィーン旧市街にある宮殿で第3回「核兵器の非人道性に関する国際会議」が開催された。


会場には過去最多の158カ国が席を連ね、各国の非政府組織(NGO)も出席していた。
議題は「核兵器が使われた場合のシナリオ、課題、対処能力」。
核兵器が意図的または偶発的に使用されたり、何らかの意図せぬ事故で核兵器の爆発が起きた場合に、どのような対処が可能であるかということがセッションの議題だった。
天然資源防衛評議会(NRDC)のマシュー・マッキンジー、アメリカ科学者連盟(FAS)のハンス・クリステンセン、米国科学アカデミー(NAS)のミカ・ローウェンタル、南アフリカ代表団のノエル・ストット、国連人道問題調整事務所(OCHA)のルドルフ・ミューラーの各氏が報告をし、質疑応答のなかで佐野大使はこう発言している。

 

国家または国際機関による緊急対応能力に関して簡潔にコメントさせていただきます。積極的安全保証(positive security assurance)という概念は冷戦期の1968年に初めて国連安保理決議255によって登場し、1995年の安保理決議984によっても再確認されました。しかし、ミューラー氏が引用したオスロ会議の議長総括に含まれる事実認定は、緊急対応能力について少し悲観的であります。同様の文言はナジャリット会議の議長総括にも盛り込まれています。しかし、ローウェンタル博士や他の方々の報告を聴くにつけ、私は、被害国に対する技術的、医学的、科学的また人道的援助が無理であるといってこれを妨げる(discourage)のではなく、むしろ促す(encourage)ことができると思います。それゆえ私は、オーストリアの議長が、この問題を後ろ向きにではなく前向きな角度からとらえることを期待します。ありがとうございました。

 

原文(会議の公式ビデオリンク、発言は1:05:14~1:06:50

 

I have a short comment on the capacity of emergency preparedness to respond by the states or international organizations. The concept of positive security assurance appeared first in 1968 in the UN Security Council resolution 255 during the Cold War and that was repeated in the 1995 in the Security Council Resolution 984. But the one of the findings in the Oslo Chair's summary which was quoted by Mr. Mueller seems to me a little pessimistic about the capability of emergency preparedness. You can find the similar languages in the Chair’s summary in Nayarit, but having listened to the presentation by the Dr. Lowenthal and others, I think we could encourage instead of discourage the states and international organizations to start building up the capacity for providing technical, medical, scientific on humanitarian assistance for the victim countries. So that I hope that Austrian Chair will look at the issue not from the negative angle but from the positive. Thank you very much.

 

この会議には多くのNGO代表者も出席していたわけだが、米国のNGO代表として会議に参加したジャッキー・カバッソさん(62)=米カリフォルニア州=はこの発言に失望をあらわにし、「日本ほど裏表のある国は他に知らない」とコメント。

 

また、カナダを拠点に被曝証言を続け、ノーベル平和賞の候補としても名前が報じられたことのあるサロー節子さんは、

この発言がされた時、「周りの平和活動家や外交官が悲鳴を上げたの。『信じられない』って」と明かし、彼女自身も被爆国にはもっと別の役割があるはずと憤りをあらわにした。

サローさんは佐野大使に詰め寄り抗議の意思も伝えその様子は朝日と中国新聞が小さな記事を載せる程度で日本では話題にもならなかった。

 

佐野利男軍縮大使が「少し悲観的すぎる。もっと前向きにとらえるべき」と強調した事で、2007年以来非核保有国が努力を重ね核禁止の動きが高まる中開催されたこの会議で日本が水を差し、この流れを妨げているのは被爆国である日本という印象を世界に発信した。
岸田文雄外相(広島1区)は後日、「わが国の立場に誤解が生じた。遺憾だ」と述べ、佐野氏を注意したことを明かした。

ここで日本国民が知らなくてはならない事は、佐野氏の発言が日本政府の政策に相反していないという事だ。


核兵器の非合法化について、外務省は「時期尚早」との公式見解を続けている。