共同ニュースから

子供2700人の内部被爆なし 福島など、病院グループ調査

 福島県平田村のひらた中央病院などのグループは8日、東京電力福島第1原子力発電所事故を受け、福島県を中心に子供2707人の内部被曝(ひばく)を調べた結果、体内から放射性セシウムが検出されたケースはなかったと発表した。事故後、子供が対象の大規模な内部被曝調査は初めて。

 検査は同病院と南相馬市立総合病院、いわき泌尿器科(いわき市)の3カ所で実施。2013年12月~今年3月、体が小さい乳幼児も測定できるホールボディーカウンターを使って0~11歳の内部被曝を調べた。多くは福島県在住で、宮城県や茨城県の子供もいた。

 装置の検出限界値は50ベクレル。不検出だったことで、1年間の被曝量は16マイクロシーベルト以下と推計できるという。

 また、福島県産のコメや野菜、水道水を日々の食事に使っているかどうかを調べたところ、内陸の三春町で「コメ、野菜、水道水すべてを避けている」と答えた保護者は約4%にとどまるなど、検査対象者には福島県産を食べている子供が多いことも分かった。

 グループの坪倉正治・東京大医科学研究所特任研究員は「福島の食材を口にしている子も、内部被曝のリスクが低いと分かった。今後も検査を続け、不安の解消につなげたい」と話している。



市民と科学者の内部被曝問題研究会

1-1 本章の解明課題

 早野龍五氏らによる『福島県内における大規模な内部被ばく調査の結果

― 福島第一原発事故7-20ヶ月後の成人および子供の放射性セシウムの体内量―』に用いられた検査手段が、あまりにも短い測定時間で感度の悪いホールボディーカウンター(WBC)であることがこの調査の最大の特徴である。

この調査ではたった2分間しか測定せず、結果として300Bq/全身と、きわめて検出限界を高くして使用している。検出限界が300Bq/全身であるということは、計測目標が1200 Bq/全身以上の高度汚染者を対象とした計測設計(測定する目標をどれほどの汚染値にするかを決めて、計測の機器や方法や時間を設定すること)であるということを意味する。ところが実際の「計測対象」とされた市民の汚染レベルは設計された計測目標に存在せず、ほとんどがND領域に入ってしまう。このことをどのように科学的な目で読み解くか?これが本章の課題である。


1-2 現実の市民の内部被曝を測定対象とするのが本筋―内部被曝実態の切り捨て目的か?ー

「放射性セシウムの体内量」とテーマにあるので、常識的には当然、市民の実際の汚染レベルが初期の測定により判明したならば、測定目標を300Bq/全身以下に置くのが「計測」における測定者の常識である。しかし早野氏らはこれを行っていない。被測定者の体内から出た放射線を計測できる精度が良い測定をしていないのである。早野氏らの「2分間計測での300Bq/全身の検出限界」の意味は、計測対象を少なくとも1200Bq/全身と置いているということである。このような目標設定は、市民の実際の内部被曝を切り捨てる目的で設計されたとみなさなければならない。感度の悪い機械の問題という受動的問題に見てしまいがちであるが、測定科学の常識から判断すると「被曝実態を切り捨てる」目的があるのではないかと疑わざるを得ない。内部被曝線量が低くても、数値を明示するのと「ND」とされるのとでは、後々健康を害した時の保障や医療的対応に大幅な違いが出るのである。また、公的な医療機関の内部被曝対応の基本にかかわるものである。


1-3 公表している検出限界値は誤りである

 用いたCANBERRA社製のFASTSCANは、カタログによると、原発内の漏れた核種もはっきりしているような状況での測定を念頭に置いてあり、いわば、高線量用の短時間検出器として使われている模様である。検出器は7.6 x 12.7 x 40.6 cmと大型検出器が2枚で、2枚の検出器のど真ん中にCo-60点線源を置き、1分間計測で150Bq(4nCi)の場合が検出限界(検出下限)とされる。

平田中央病院の検出限界は、2分測定で300Bq/全身(Cs-137、Cs-134)とされている。この対応は正しいのであろうか?

 Co-60(正確にはCo-60がベータ崩壊し(ベータ線は測定できない)Ni-60が生じる)Niの1崩壊(1Bq)はガンマ線が2本出る。150Bqならば、ガンマ線が1秒間に300本出るのである。Cs-137等はBaの崩壊でガンマ線1本放出されるだけであるのでこの感度はCs-137で表現するならば300Bqという値になる。実際の測定は1分間ではなく倍の2分間行っているので、検出限界の値は統計的な精度計算から、212Bq(300/√2)となる。平田中央病院の測定時間「2分」では検出限界は212Bqとするのが科学的に正しい。しかしこれを300Bqとしているのは第2の切り捨てである。これは単純なミスかあるいは故意であるのか?いずれにしての重大問題であり、内部被曝212Bq以上の測定値は実際の数が記録されるべきであるのに誤った限界値で「ND」とされるのである。市民にとっては全く不当な扱いである。

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リンク:by 内部被曝研 論文