そしてこちらの図
固有の安全性という言葉。耳にした事はあるでしょうか。
電力会社はこう説明しています。
軽水炉は、何かのはずみで出力が上昇しようとしても、減速材(水)の動きや燃料自身がもっている性質により、自然にその上昇が抑えられ、一定の出力で安定するという原子炉固有の安全性(自己制御性)を有しています。
とこれが、日本で使用されている軽水炉が安全だという根拠としています。
この図が説明している固有の安全性をもっと砕いて言いますとこういう事です。
1 原子炉は事故が発生すると自動停止することになっている。自動静止するとウランが燃えない(核分裂しない)。そうすると、温度が上昇しない。温度が上がらなければ、爆発に至らないので安全である。
2 原子炉が自動停止しなかった場合でも、温度が上がらなくなる。なぜならウランが燃え続けて原子炉内の水が水蒸気化する、水蒸気になると中性子の減速効果によってウランが燃えない。(ウランは水の中では核分裂をしますが、水蒸気では分裂しません)
つまり自動停止してもしなくても、結局温度は下がるんだから安全だ、というわけです。
そしてこの前提は、事故以前、そして事故後も変わらない事です。
さて、ここで福島の事故原因をもう一度考えたいと思います。
まずマスコミや業界関係で行われている議論がおかしいという事を言わせて下さい。
原発事故の原因を地震か津波、もしくは電源が供給できなくなった、という議論です。
でも、これは問題を解決する議論ではなく、問題がなんだったかを隠す議論です。
福島の原発が爆発したのは水が供給できなくなったからです。
軽水炉の安全性を確保するためには水が必要ですがそれができなくなった事が原因で爆発しメルトダウンという最悪の事態に陥りました。
電力会社は固有の安全性で、原子炉は自動停止するから安全だとしていました。
ところが、福島の事故を見てください。
停止した福島原発。確かに電力会社の主張どおり、ウランは核分裂を一旦止めて温度が下がります。
でも、原子炉内の放射線同位体は激しく崩壊している状態です。
この放射性物質の崩壊でも熱を発します。
発熱量はウランが燃えている時よりは10分の1ほどですが、その熱は原子炉の水を使い切るのには十分すぎるほどの熱量でした。
皆さんの記憶にもまだ残っているのではないでしょうか。
10分の1の熱量でも原子炉に残っている水は十分ではありませんでした。
あっとゆう間に蒸発し、原子炉内は水素が充満しまし、そのままにはしておけないのでガスを外へ放出しました(ベント)。
原子炉内から出て行った水素は酸素と結合し水素爆発が起こりました。
電源が置かれていた地下は海水に満たされ、主電源、複電源合わせ4機ほどあった電源装置は全滅。
冷却循環器系の完全停止状態。
つまり、炉内の水を使い果たし水素爆発がおきても、水を供給できず、メルトダウンという過酷事故を招いたのでした。
結果、一号機内の放射性物質はほとんどが外に出てしましました。
今も電気会社が主張する固有の安全性というのは冷却機の循環が機能している事が前提となっています。
つまり、彼らの主張する固有の安全性という考えが成立しない事を福島第一の事故が証明してしまいました。
冷却循環機能が停止したことが福島の事故の原因だったという事を踏まえ、今度はこの機能が停止してしまうシナリオを考えたいと思います。
1 電気が供給できない(電源確保できない状況)
- 電線の破損
- タービンの破損(福島事故では電源タービンが全て水に浸かりました)
2 水を供給できなきない
- 電源教急停止
- ポンプ破損
- 配管破損(鉄でできているので破損しやすい)
- 取水口破損
そう、すこし問題を掘り下げるだけで素人にもわかる事ですが、これらの部位、施設が破損する引き金は、地震、津波、テロなどいろいろ想定できると思います。
ところが、震災後も上の1、2の安全性を確保するような措置は取られてはいません。
いまも続く日本の原発安全神話:わたしが原発再開に賛成できない理由その3