一般的に男性の悩みと思われがちな頭髪の問題ですが、実は男女を問わず悩んでいる人は少なくないと感じています。
年齢を重ねればなおさらですよね。

私も実は髪に、悩みがあります。
私はある日突然、2週間ほどで全身の毛が抜け落ちてしまいました。
診断は汎発型の円形脱毛症。
髪がごっそりとむけ落ちていくあの感覚は今考えても気持ちがいいものではありません。
現在は50%くらい生えておりウィッグなんかをつける必要はありませんが、生え際が薄いしボリュームがないので時々ヘアピースをつけてみようかと考える事もあります。
でも、横着な性格なので帽子がどんどんと増えていってます
医師からは5年ごとに繰り返す傾向があるのでそう思っておいてください、と何かにつけ言われます。

最初になった時は本当にいろいろショックでしたが、丸坊主生活が2年ほどあったので、次はショックは多少受けてもおたおたすることはないとは思います。

さて、脱毛症といってもいろいろと種類がありますが、今回は免疫疾患が原因の脱毛症にフォーカスしてみたいと思います。

免疫疾患による脱毛には5つのタイプがあります。

1ヶ所にコイン大までの脱毛部分ができる「単発型」 
2ヶ所以上の脱毛部分があり、繰り返してしまう「多発型」 
生え際部分が抜けたり、頭全体的に多く抜けてしまう「多発融合型
 髪の毛全体が抜け落ちてしまう「全頭型」 
まつげや眉毛、髪の毛、わき毛など体毛がすべて抜けてしまう「汎発型」 の5つです。

ストレスが原因であると多くの人が思っている免疫疾患による脱毛症、ですが、実はストレスはトリガー(引き金)であって原因でないこと明らかになりつつあります。

免疫疾患が原因の脱毛症は病理検査で鑑別診断ができます。
免疫疾患の場合毛母細胞が攻撃されて脱毛を発症します。
ですので脱毛が起きている皮膚組織を切り取って検査すると成長期の毛包周辺に
CD4+ T 細胞の浸潤
Langerhans 細胞の出現
毛球上皮細胞に MHC class IIの発現
毛包基底膜への C3,IgG,IgM の沈着
といった自己免疫の関与を見ることができます。

参考:円形脱毛症の脱毛斑部の生検検体

つまり、本来ウィルスなどの外敵が侵入した際に働く免疫機能がなぜか自身の毛母細胞を攻撃しているのを確認することができるということです。
こういった病理検査は大抵子供が脱毛症になった際、トリコチロマニア(抜毛狂,抜毛症)や外傷性脱毛との鑑別するために行われます。

次に脱毛に関係する遺伝子というのがありますのでいかに記載します。

小さい時から脱毛しはじめる。円形脱毛症を繰り返えしたり、全身の毛が抜け落ちてしまう人はこういった因子を持っていることが多いです。
また末梢血リンパ球においてもNKG2D陽性の CTL や NK 細胞数が健常人と比較して有意に多いことも報告されています。
リュウマチ、アトピー性皮膚炎、尋常性白斑、膠原病などといった患者もこういった因子をもっていますので、脱毛症で髪が抜けただけと思わず一度専門の医療機関で検査を受けてみる方が良いでしょう。

免疫性の脱毛症の場合アトピー性皮膚炎や爪の異常といった軽度の皮膚疾患から自分の内臓を攻撃し始める命に関わる重篤な免疫疾患を発症する病気を合わせて持つ人が多いからです。

私の場合は脱毛症が発症する以前は日常生活に支障をきたすほどの症状はありませんでした。
ですが、ある時治療のためにステロイドの静脈注射を受けます。
その数日後には脱毛が始まって、あっという間に丸坊主。その勢いに先生方も驚くほどでした。
病理検査の結果、上にあげた細胞組織の浸潤が見られず、直前にステロイドの静脈注射がを受けたことなどから薬害と思いました。
ところが、髪が抜けたあと、いくつもの食べ物へのアレルギーが発生します。
薬害の場合、薬の処方をストップし6ヶ月以内に発毛が見られるはずでしたが発毛は見られません。
それどころか普通に食事をしていてもどんどんと体重が減っていきます。
免疫機能がおかしくなって自分の体を攻撃しはじめあちこち具合が悪い状態が続きます。
原因がわからず有効な治療法もない状態が1年半が経過。
体重も随分減って椅子に座るのも骨がお尻に突き刺ささり痛くなるので20分もちません。そのうち、食事をするのも大変になりました。物を食べるというのは結構エネルギーが必要で、食べるとえらく疲れるんです。最終的には椅子に座って20分以内に食事をすませると、床に倒れこむようなりました。
通院時に、80歳になろうかという杖をついた老人に電車で席を譲られた時は「こりゃいかん。。」と危機感を感じたのを覚えています。
唯一効果があるかもしれないと処方された飲み薬も内臓への副作用がではじめそれもストップして間もなく、理由はわかりませんが回復しはじめました。
そして、そのあたりから頭皮にも産毛が見え始めます。
未だ多くの食べ物にアレルギーがあるもののピーク時よりよほど反応が低くなりました。
髪も頭を覆うほどまで再生して今では日常生活に支障をきたすことはありません。
でも、半分に減った髪はもう回復しないかな。。。
あれ以来まだ皮膚の半分の面積で毛根を攻撃している状態です。
今も困った問題は薬へのアレルギー。
どんな薬にアレルギー反応が出るか飲んでみないとわかりません。
また、アレルギーのある薬を飲むと大抵の場合激しい腹痛に襲われます。なので、風邪くらいでは今は薬を服用しません。
ただ、風邪くらいならいいんですが、事故にでもあって意識不明で薬を投与されるような事があると困った事になります。
大好物の貝類が食べられなくて人生の楽しみをちょっと奪われたかなと少し落ち込むこともたまにあります。

免疫疾患というと、花粉症やアレルギーくらいしか話題になりませんが、私たちの社会でもっとも厄介な病気の原因で、完治に至るような治療方が見つかっていないのが免疫疾患です。

主な自己免疫疾患
1型糖尿病
悪性関節リウマチ 
潰瘍性大腸炎
全身性エリテマトーデス(SLE)
自己免疫性出血病XIII
IgG4関連疾患
TNF受容体関連周期性症候群

上は一部ですが全て難病指定されている免疫疾患です。

さて、先にCLTとかNK、NKG2Dなど色々聞きなれない言葉をあげましたが、これらは細胞やたんぱく質。
こういった抗体(分子)関連の研究が昨今熱心にされています。
特にNKG2D(たんぱく質)抑制剤の研究はアメリカだけでなく日本でも盛んになりつつあります。
それは、原因が特定できずにいる自己免疫疾患の治療だけでなく癌治療に対しても有効であると期待されているからです。
これら免疫疾患の治療薬の副産物として脱毛の改善が多く報告されています。
副作用の少ない免疫治療が確立されれば円形脱毛症の有効な治療にもなると言えます。

免疫疾患による脱毛症の治療
ステロイド治療:ステロイド副作用である多毛を利用した治療方、外用と注射があり注射の方が効果があるとされているがかなりの痛みを伴う。効果があると言っても完治する治療法ではなく、使用をやめると脱毛が始まってしまうケースは多い。注射はステロイドの副作用リスクのため子供への治療は行われていない。

副作用:ステロイド薬が白血球の機能を低下させ、ウイルスなどの外敵への抵抗が弱まり、感染症(インフルエンザ、肺炎、結核など)がおこりやすくなる。
長期間投与したあとに突然中止すると重篤な副作用あり。

局所免疫療法(SADBE・DPCP):強力な感作物質を皮膚に塗ってかぶれを起こしT細胞を呼び込み悪さをしているT細胞を死滅させる作用を促します。もっとも副作用が少ないとされ子供にも治療が施されています。

問題点:この治療法で満足な発毛が見られるとアンケートに回答した患者は

単発型:頭髪に円形型の脱毛が1箇所または2~3箇所 →50%
多発型:脱毛が2~3箇所以上→40%
全頭型:数箇所に引き起こされていた脱毛が次第に大きく広がって繋がり、
結果的には全体の毛髪が抜けてしまう症状 →0%
汎発型:眉毛や脇毛等も含め全身の毛が抜け落ちる症状 →0%
多発融合型:側頭部や後頭部の髪の毛が帯状に抜けてい →0%

回答のパーセンテージを見れば明らかですが、有効な治療法はありません。
ステロイド注射や他の内服薬などありますが、大きな副作用が伴います。
局所治療は、単発型などは治療を受ける事で早く改善する可能性は高いと言えます。
ただし、単発型の場合放っておいても治るケースの方も多いといえます。
多少有効であると思われる単発型と多発型。いずれも局所治療法により回復を促す事はできますが、この治療が再発を防ぐわけではありません。
繰り返し発症する人はその度に治療に通うのかという事になります。

免疫疾患を引き起こす因子というのは多くの人が持っていますが発症せず人生を過ごす人は多いんです。
私もそうでした。
私の場合は因子をもっていても、通常の生活やストレスでも表に出る事はありませんでした。
ですが、投薬による刺激をきっかけに爆発的に抗体の異常反応が発症しました。
一度発症すると完全に元に戻る事は難しくなります。

日本は安易にいろいろな薬を処方しすぎている国だと感じています。
薬は確かに多くの人を助けることの方が多い。
ですが薬は毒でもあり、その副作用が日本では軽視されすぎていると感じています。

残念ながら免疫疾患による脱毛は現在のところ有効な治療方法がありません。
現行の治療は効果がほとんど認められないのに、受ける副作用が大きいものばかりです。
幼少期から激しい脱毛を繰り返す子供達は根本的な免疫疾患が改善されない限り常に再発を繰り返えします。そういした子供への脱毛治療には大きな疑問を持っています。
その治療法が他の免疫疾患を発動させない保証もないと個人的に思うところでもあります。
脱毛の悩みで医療機関に足を運ぶと2011年あたりに初めて作成された脱毛治療のガイドラインにあるからという理由だけで必ず上記の治療を勧められます。
医師によっては効果についての十分な説明がされず、長引く治療とその副作用に苦しい思いをする患者さんも少なくはありません。

この記事は、脱毛治療はしない方がよいですよ。。。という勧めでは全くありません。

脱毛治療は保険が適用されません。
また、効果も今ひとつというのが現状です。
そういった要素を十分に医師と相談した上で治療にのぞんで欲しいと思います。
ちなみに私は薬が引き金となって今の状況があると思っているので、上記ステロイド系や局所治療は受けませんでした。

現在子宮がんワクチンの問題など世間で話題になっていますが、薬はその薬が本当に必要か。

つまり摂取しないことでどの程度のリスクが健康面において発生するのか。

副作用はそれに見合うものなのかを常に慎重に検討する姿勢が必要だと思います。

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