「野良猫が 俺より先に 飼い猫に」。路上生活者の川柳集が相次いで出版され、ユーモアあふれる作風が人気となっている。「路上のうた」(ビッグイシュー日本)と、同書の姉妹本「ホームレス川柳」(興陽館)だ。両書には、路上暮らしの厳しい現状や、自身の境遇を笑い飛ばすたくましさがあふれている。(篠ケ瀬祐司)

 「路上のうた」は、福岡県内の公園で暮らしていた男性六人による三百句をまとめた。路上生活者の自立を応援する「ビッグイシュー日本」が二〇一〇年に路上販売専門書籍として発刊した。路上に立つ販売者から七百円で購入すると、半分が販売者の収入になる。これまでに路上販売で一万部を売り、今年三月末に書店販売が始まった。

 「ホームレス川柳」は、「路上のうた」に載らなかった作品も含めて編まれ、二月末に出版された。興陽館担当者は中高年が主読層だと分析する。「一度仕事を失うとホームレスになりかねないとの思いがあるのでは」(担当者)

 両書の作品は、公園暮らしならではの季節感をよんだ句から、路上から抜け出せない切なさがにじむ句まで、多様だ。

 「寝袋に 花びら一つ 春の使者」

 路上生活者にとって川柳とは何か。両書の作者ではないが、東京都内の路上生活者Kさん(67)は「苦しい生活を送る自分を、少し離れたところから見てみる。そうすることで心にゆとりを持つことができる」と語ってくれた。

 Kさんも「路上のうた」を売りながら川柳をよむ。

 「高層ビル街 立てば三つの 影がいき」

 本来の影に加え、高層ビルの反射でもう二つ影ができた。照り返しのつらさと、三つの影を従えた様を面白がるユーモアが同居する。「多くの人が川柳集を読み、路上生活者にもいろいろな人がいることを知ってほしい」(Kさん)

 厚生労働省の一五年の目視調査では、全国の路上生活者は六千五百四十一人。一一年は一万八百九十人で同省では「近年減少傾向にある」とみる。だが、ビッグイシュー日本では「路上でカウントされない若いホームレスは増えている。ネットカフェや二十四時間営業店で体を休める人も含めれば、数は増えているのでは」と指摘している。
東京新聞記事