By JOANNA STERN 

 完璧に刈りそろえられた草とラッパスイセンに覆われたなだらかな丘の上に、綿あめのような雲がいくつも浮かんだ真っ青な空が広がっている。――このマイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズXP」の初期設定の背景画像は、まさに永遠に続いてほしいと思わせるような春の風景だ。
 同じようにXPも永遠に続いてほしいと思っている人も多いだろう。2001年に発表されたXPは大成功を収め、マイクロソフトはサポート期間を業界最長となる12年にまで延長したほどだ。しかし、晴れやかなXPの日々も4月8日で終わる。
 同日をもってマイクロソフトはXPの全てのユーザーサポートとセキュリティーアップデートを打ち切る予定で、XPは新発見の攻撃にさらされやすくなる。XP搭載機はその後も機能はするものの、壁紙の「至福の」光景は見かけ倒しにすぎなくなる。XPは仕事をするにも遊ぶにも安全な場所ではなくなるのだ。
 XPのサポート打ち切りに関して、マイクロソフトの広報担当者、トム・マーフィー氏は「XPは手放さざるを得ない、というのがわれわれの指針だ。黒か白かの選択しかない」と述べた。タッチ式のユーザーインターフェース(操作画面)に対応した最新のOS「ウィンドウズ8」は「完全にモダンなOS」だというのが同社の説明だ。
 XPが最初に人気を得てから、代替となるさまざまなOSが登場している。ウィンドウズ7ももちろんそうだし、マイクロソフトのライバルであるアップルとグーグルのOSもそうだ。そこで、行き場のなくなった「XP難民」向けに各選択肢について検討してみた。


ウィンドウズ8.1への移行
 マイクロソフトが全てのユーザーにウィンドウズ8.1に移行してもらいたがっているのかどうかを疑っている人は、「amirunningxp.com」を訪れてみるといいだろう。これはXPを使用しているかどうかを検出するサイトで、XPユーザーの場合、即時にウィンドウズ8.1にアップグレードするか、ウィンドウズ8.1搭載のパソコンに買い換えるよう促される。
 XP時代のパソコンの多くは技術的には最新のウィンドウズを実行できる。ただし、1ギガヘルツ以上のプロセッサー、1ギガバイト以上のRAM、16ギガバイト以上のハードディスクが必要だ。最も厄介なのはディスプレーで、1024 x 768の解像度が必要になる。自分の使っているシステムがこれら要件を満たしているかどうかを確認するには、「アップグレードアシスタント」というプログラムをダウンロードすればいい。
 ウィンドウズ8.1のアップグレード用DVDは市販されており、マイクロソフトはバックアップサービスを手掛けるラップリンクと提携し、無償で簡単にファイルを移行できる方法も提供している。
 システムが要件を満たしていなかったり、アップグレード作業が面倒だと感じたりする場合は、もちろん新しいパソコンに買い換えることも可能だ。しかし、XPユーザーにウィンドウズ8.1を手放しで推奨するのは抵抗がある。
 というのも、ウィンドウズ8.1は大幅に刷新され、慣れ親しんだ定番のデスクトップ画面はプログラムやファイル、サービスを起動するためのアイコンがタイルのように並んだ「スタート画面」に置き換えられている。デスクトップ画面も利用できるが(「デスクトップ」というアイコンがある)、画面の隅に「スタート」メニューはない。
 ウィンドウズ8.1はマウスやキーボードに関して初版のウィンドウズ8よりも改良されている。また、近く提供されるアップグレードでは、アプリ内にウィンドウを閉じるためのボタンが加わるなど、さらにマウスを使用しやすくする改良がなされている。
 マイクロソフトのウォッチャーで、多くのウィンドウズガイドを執筆しているエド・ボット氏はウィンドウズ8.1へのアップグレードを推奨しており、次のアップデートではウィンドウズ7にさらに似た使い勝手になると話す。


ウィンドウズ7への移行
 ウィンドウズ8.1は旧来のウィンドウズ愛好家にとっては変化が激しすぎる可能性がある。したがって、XP難民にとってはウィンドウズ7の方がはるかに妥当かもしれない。
 マイクロソフトはウィンドウズ8.1が7よりも高速で安全で信頼性が高いと主張しているが、7はあらゆるものがXPとほぼ同じ場所にある。従来のデスクトップや頼りになる「ごみ箱」、スタートメニューもある。
 問題は、マイクロソフトがウィンドウズ8への移行を促すため、ウィンドウズ7を手に入れるのを難しくしていることだ。しかし、入手方法は主に2つある。1番いいのは、エイサーやデル、ヒューレット・パッカード(HP)、レノボなど特定のメーカーのウェブサイトからウィンドウズ7搭載のノート型パソコンを購入することだ。
 ウィンドウズ7搭載機はサイトの目立つ場所には掲載されていないが、法人向け製品のセクションをよく調べれば見つかるはずだ。マイクロソフトもそれらパソコンメーカーもまだサポートも提供している。700ドル未満の機種であればデルの「Latitude(ラティチュード) 330」とエイサーの「Aspire(アスパイア) V3」がお薦めだ。
 パソコンを買い換えたくないとなると、ちょっと厄介だ。
 マイクロソフトはウィンドウズ7のパッケージをもう販売していない。また、コンピューター機器のネット通販サイトで購入した場合は、マイクロソフトのサポートは受けられない。ただし、セキュリティーアップデートは2020年まで受けられる。


マイクロソフト以外のOS搭載機への移行
 思い切ってマイクロソフトの外の世界に飛び出す気があるなら、もちろん他にも選択肢はある。
 平均的なウィンドウズパソコンよりも多少高くても問題ないのであれば、「OS X」が搭載されたアップルの「Mac(マック)」がある。慣れるには少し時間がかかるだろうが、いったん慣れてしまえば素晴らしい機能がたくさんある。アップルストアでは新しいマックを購入した人向けに無料でワークショップも提供している。
 電子メールとウェブ閲覧だけ必要であれば、グーグルのブラウザーのみ利用可能な「Chromebook(クロームブック)」に安いものが多い。
 コンピューターに極めて詳しい人であれば、「Ubuntu(ウブントゥ)」などリナックスベースのOSもある。ウブントゥは古いXP搭載パソコンでも問題なく実行できる。ただし、リナックスベースのOSのインストールは忍耐が必要な上、人気のプログラムの多くも使用できない。
 最善策はウィンドウズ7搭載機の購入だろう。どのような方法を選択するにせよ、悲しむことなない。あの完璧な春の風景の壁紙はどこへでも持ち歩ける。