水分が頬をつたう
のそりと山村は体をおこした
外は雨が降っていた
酷く久しぶりの雨だ
…
数日前、手の甲に羽毛が付いていることに気付いた。
取ろうと引っ張って、それが自身から生えているものだと気付いた。入野上曰く、それは背中にも生えているらしい。
それからと言うもの、俺の体は「天使」に近づいていった。俺が喰らったヤツによく似ている。
元からかもしれないが、気が短くなった気もする。
些細なことに腹を立てるようになった。
…
俺は最早人間ではないのか。
あの時は何の考えもなく天使を食ったが、奴らはただの畜生ではない。
何かしら尋常では無い点もひとつやふたつあるはずだ。
実際、俺の知ってる豚は二足歩行をしない。
奴らの血肉が何か上手い具合に俺の体に作用したのかもしれない。
すこし離れたところでいびきをかいている男を見る。
入野上。
あいつと出会ってからそろそろ一ヶ月くらい経つ。
羽毛が生え始めてからも、馬鹿なのかなんなのかのこのこと俺に着いてくる。
…
いつか俺が完全にヒトで亡くなったとき、入野上
を襲わないとは限らない。
現に怒りっぽくなっている。
天使どもが俺の精神状態に影響を与えているのは間違い無いだろう。
俺は、やつと離れなくてはならない。
山村は眠る男を一瞥すると、雨の中へ歩き出した。
雨は酷さを増すばかりだった。