◎Michelle
▼ミッシェル
☆The Beatles
★ザ・ビートルズ
(1965)
今日は本家BLOGで上げている「ビートルズの213曲」の抄訳記事です。
Michelleはビートルズ6枚目のアルバムRUBBER SOULのA面7(=CD7)曲目として1965年12月3日に世に出ました。
作曲者はポール・マッカートニー、ヴォーカルもポール。
先ずは曲から。
Michelle
The Beatles
(1965)
Michelleは、1965年11月3日、翌日にまで及ぶセッションで録音されました。
録音の際に、歌詞をフランス語で歌うことについて、ジョージ・ハリスンがエンジニアのひとりにどう思うか聞いたそうです。
エンジニアの話によれば、ビートルズ自身もフランス語で歌うことに不安のようなものがあり、若い人の感触をそれとなく探りを入れたのではないか、とのこと。
続いて、ジョン・レノン生前最後のインタビュー『ジョン・レノン・プレイボーイ・インタビュー』からこの曲についてのコメントを
***
真ん中の8小節までがポール。
そのあとにぼくはニーナ・シモンのフレーズを入れようと言った。
(歌いながら) ♪ I love you♪ これさ。
フランス語にするのはポールのアイディア。
***
フランス語にするのは多分ポールのアイディアだと、まあ多くの人は思うでしょうね、歌っているのもポールだし、そういうことがいかにも好きそうだし。
ニーナ・シモンのフレーズを「入れよう」というのは、今なら盗作問題と捉えられかねない発言ではないかと。
実際作曲していて、どこかで聴いてよかったフレーズを入れたい、と思うことは結構あるのでしょうね。
僕は、その曲が好きでフレーズを入れたいと思った段階で、そこには何某かの敬意が含まれている、と思う。
しかし「これは売れる」と思ってやったら、やっぱりだめでしょうね・・・
ジョンはニーナ・シモンと言っていますが、僕はこれ、エルヴィス・プレスリーからいただいたのかと思っていました。
というのも、ジョンが作ったBメロ=サビの始まり、
1番が"I love you , I love you, I love you"、
2番が"I need to, I need to, I need to"、そして
3番が"I want you, I want you, I want you"。
これ、プレスリーのI Want You I Need You I Love Youを逆に並べたのではないか、ということ。
このせいかどうかわからないですが、僕がプレスリーでいちばん好きなのはその曲です、いやきっとこのせいでしょう(笑)。
◇
この曲は、僕が中高生の頃、Yesterday、Hey Jude、Let It Beと並んで「ビートルズ4大バラード」と呼ばれていました。
向こうではどうかな、日本だけかもしれない、いやきっとそうでしょう、日本人は「3大なんとか」「4大なんとか」が好きだから。
僕も、そこにThe Long And Winding Roadを加えて「5大バラード」と勝手に言っていましたが、お気づきでしょう、
それらはすべてポール・マッカートニーの曲であって、ビートルズのバラード担当はポールというある種の概念が、当時は日本にあったのでしょう。
いつも話す、僕が最初にNHK-FMで録音して聴いた90分テープにこの曲も入っていたので日本では人気があったようですが、哀愁系のこの曲が日本で受けるのは分かりますね。
でも今はきっと、人気投票などをすると、「5大バラード」の他の4曲に比べると人気度は低いのではないかな。
直接的には、他の4曲はみなアメリカでシングルカットされビルボードNo.1に輝いているけれど、これはシングルは出ておらず、「1」などのベスト盤にも入っていなくて接する機会が少ない。
実際にRUBBER SOULと「赤盤」でしか聴けないし。
曲自体哀愁系で懐かしい響きでもあり、ビートルズには珍しく「時代」を強く感じる曲だと僕は思います。
今の時代を生きるというよりは、当時を懐かしむ曲というか。
実際僕も、今この曲を聴くと、歌詞の内容などを今の自分の気持ちに絡めて解釈するよりもうんと、過去のこと、思い出に結びきます。
はじまりは90分テープに録音し聴いて感動したこと、クリスマスの日にRUBBER SOULとREVOLVERを買って帰る途中雪で滑って転んだけれどLPは大丈夫だったこと、そしてもちろんレコードを聴いてさらに感動したこと。
歌詞がフランス語であること、やはり着目しますよね。
引用文中にあるジョージの思惑通りというか。
Michelle, ma belle
Sont des mots qui vont très bien ensemble
Très bien ensemble
どういう意味なのだろうと最初は悩みましたが、少ししてどうやら最初の英語のくだりをそのまま仏訳しただけらしいということを知りました。
すなわち
Michelle, ma belle
These are words that go together well,
My Michelle
フランス語の歌詞をよく見ると、カタカナで書くと「トレビアン」「アンサンブル」という、日本語の中でも使われる割と有名な言葉が2つも入っていますね。
で、"ensemble"がきっと"together"なのだろうと。
"ma belle"は「僕の美しい人」といったところでしょうかね、これだけは英語の中でも使われ続けています。
ポールのフランス語の発音はどうなのでしょうね。
僕も大学で第二外国語としてフランス語を取りましたが、授業を受け始めてすぐにこの歌を「正しい」発音で歌ってみたのは言うまでもない。
僕は"r"の発音が特に苦手だけど、この曲を聴くと、ポールもどうやらそんなように感じられますね。
1993年の来日公演で演奏されたこともいい思い出。
ポールは確か「フランスへようこそ」みたいなことを言ってこの曲を始めたっけ。
その時の東京ドーム公演は3回それぞれ違う友だちと行きましたが、そのうちの一人が「フランス」と言った瞬間に分かったらしく、曲が始まって体を崩しながらすごく喜んだのが印象的でした。
当時はUNPLUGGEDからの流れでアコースティック色が濃いこの曲を演奏したのはいかにもなるほどと納得したものでした。
ここでその当時のライブ映像をはさみます。
Michelle
Paul McCartney
1992年のライヴ、懐かしのロビー・マッキントッシュさんとヘイミッシュ・スチュワートさんがいますね。
この2人がいるステージは楽しくて最高に好きでした。
◇
さて、Michelleについて僕がとりわけ思い出深いのは、ギターとベースの練習曲だった、ということ。
ギターではイントロに出てくる印象的なフレーズが「クリシェ」といわれる奏法であること。
「エレキギター博士」というサイトから「クリシェ」を引用。
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クリシェとは同じコードが続くときに装飾的に加えられる、半音ずつ下がっていったり上がっていったりすることで音の動きをあえて作る作曲・編曲上の技法です。
クリシェのコード進行ではメロディがのせやすいことから、歌謡曲などポピュラー音楽で登場することが多いです。
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Michelleは音が下がってゆきますね。
これ、ビートルズの曲をギターで弾くとなると必ず通る道のひとつで、今見るとYou-Tubeにも弾き方の映像がたくさん上がっていました。
僕も、「ザ・ビートルズ・サウンド」というビートルズの音楽を解剖した本に楽譜があり、それを見て練習しました。
この曲はまたベース演奏を学ぶにもいい曲。
今ここに、シンコー・ミュージックから1983年に出た「ポール・マッカートニー・サウンド」という楽譜本があります。
冒頭写真の本ですが、ポールのベース演奏をテクニックやフレーズ面から分析し、具体的に数曲をフルに楽譜で紹介するという本。
1983年ということはぼくがビートルズを聴き始めて、ギターを弾くようになってから出たもので、当時は首っ引きで眺めて弾いたものでした。
この本で僕は、Day TripperやCome Togetherのようにリフを弾いたり、With A Little Help From My FriendsやSomethingのようにベースが旋律を奏でたり、Rainのようにトリッキーで目立つプレイではない、一見目立たないけれどツボをしっかりと押さえた素晴らしいベースプレイがあることを学びました。
この本で取り上げられている曲
Please Please Me
I Saw Her Standing There
All My Loving
Think For Yourself
Michelle
Rain
Penny Lane
With A Little Help From My Friends
Lovely Rita
While My Guitar Gently Weeps
Don't Let Me Down
Come Together
Something
I Want You (She's So Heavy)
なるほど、という選曲ですよね、トリッキーなものからロックンロールの基本、そしてポールらしいメロディアスなベースラインまで。
僕は実はベースが異様に好きなのですが、その下地はこの本そしてここで取り上げられている曲で築かれました。
Michelleはその象徴として今でも僕の中に在ります。
ポールの「ベースといえばこの曲」の「裏代表」といったところ。
この曲のどこがいいかを僕なりに話します。
あくまでも音楽活動はしていない人間としての感想ですが。
Michelleのベースはイントロから静かなようで、上四度から下五度まで大きく動く印象的なフレーズ。
ただ、ベースが目立つのはここくらい。
ポールが作ったAメロはゆったりとした2ビートで進んでゆく。
しかし、ただルート音をなぞっていくだけではなく、一度→五度の音をコードが変わっても取り続ける。
その五度の音が上だったり1オクターブしただったり(つまり下四度ですが)、ちょっとした変化をつけている。
Bメロも最初2小節"I love you"の部分は2ビートであるのが3小節目から4ビートで小走りを始める、この緩急がいい。
そして、Bメロは12小節ですが、後半の7小節目に入るとイントロに出てきた大きな動きのベースラインになる。
まとめ方も素晴らしい。
今回Michelleを213曲の記事に選んだのは、この「ポール・マッカートニー・サウンド」を何年振り、いや十年以上振りに部屋で見つけたからなのでした。
最後もう1曲、ポールの新しいライヴ映像を。
Michelle
Paul McCartney
こちらは2010年、今のツアーメンバーのライヴですね。
休日の今日はこの記事を書き、久し振りにベースを弾きました。
この本にある曲をベースを弾きながら口ずさんだり、CDでかけていたデレク&ザ・ドミノズのKeep On Growin'など、音を拾いながら。
ベースだと基本単音だから割と簡単に音を拾いながらその場で遊べるのがいいですね。
でも、Laylaはギターとベースどちらを弾くか迷いました(笑)。
なんて、最後はビートルズから話が逸れましたが、でも、「ビートルズ以外のよい音楽をたくさん聴きなさい」というのが、僕がビートルズから学んだことのひとつなので。
そういえば、ガンズ&ローゼズがMy Michelleという曲を作って歌っていたのはとても嬉しかった、ということもありました。
ガンズは後に007もカヴァーしまたが、その曲があったので、そのカヴァーは「ああやっぱりか」と思ったものでした。
さて、もう一度本を見てベースを弾いて寝るとしますか(笑)。