ポール・マッカートニー「幻の名曲」が33年の時を経てついに初CD化! | 自然と音楽の森

自然と音楽の森

洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。

20151003Paul1

 ポール・マッカートニー33年前の「幻の名曲」がついに初CD化されました!!

 Rainclouds

 スティーヴィー・ワンダーとのデュエットで8曲目の全米No.1を獲得した1982年のEbony And IvoryのシングルB面に収められていた曲です。

 スコットランドの香りが強い軽やかなトラッド風の曲です。
 先ずは聴いてください。





 僕は「名曲」などと書きましたが、まあ冷静に聴くと「佳曲」くらいでしょうかね。
 印象的な曲には違いないけれど。

 しかし僕はもうこの問題に冷静でいられるはずがありません。
 33年間、いやCDの時代になるまでの期間を差し引いて26、7年間、僕はずっとこの曲のCD化を待ちに待ち続けていました。

 僕がビートルズを聴くようになったのが1981年、中2の時。
 翌年、僕のリアルタイムで初めて出たメンバーのソロアルバムが、ポール・マッカートニーのTUG OF WAR。

 中学時代は今は栃木にいる親友と一緒にビートルズを聴いていましたが、中学生ということでお金が足りず、当時は友だちの方がポールに入れ込んでいたので、TUG...は友だちが買うことに。
 僕はLPを借りてカセットテープに録音して聴きました。
 SONYのUCX、ハイポジションテープですが、ビートルズのアルバムを同じハイポジのUCX-Sに録音していたので、まあひとランク下ということで。

 でもやっぱり僕もレコードが欲しくなり、Ebonyのドーナツ盤と12インチシングルを買いました。
 それならもうちょっと出せばLP買えたでしょうに(笑)。

 しかし、シングルを買ってよかった。
 Raincloudsと出会ったから。

 ビートルズを聴き始めてから、シングルB面にいい曲が多いことを悟っていました。
 挙げてゆけばきりがないので1曲だけ言うと、I Want To Hold Your HandのB面のThis Boyなど。

 僕はだから、シングルB面にはちょっとばかり期待して臨んでいました。

 Raincloudsを最初に聴いて、一発で気に入りました。
 しかも、曲の覚えが悪い僕も、3回目にはほぼすべて覚えていました。
 なぜだろう、今考えても不思議でしょうがない。
 まあ、若い頃は僕でも頭が幾分柔らかかったということでしょうね。

 時代はいつしかCDになり、このアルバムも1988年に初めてCDが出ました。
 当時はまだ他のアルバムもボーナストラックは収録されていなかったので、ノンアルバムトラックのRaincloudsが収録されないのは当然と受け止めていました。

 1993年、McCARTNEYからPRESS TO PLAYまでのアルバムが、統一されたデザインの下、ボーナストラック付でリイシュー盤として発売されました。

 僕は当然、TUG OF WARのボーナストラックでRaincloudsが入っているものと思いました。
 
 入っていない。

 以降、ボックスセットが出るだの、いろいろ噂話が起きては消え、やがてポールは古巣PARLOPHONEから離れ、Universal系のレーベルの過去のカタログ毎移籍しました。

 2008年のBAND ON THE RUNを皮切りに、アルバムが年に1、2枚リマスター・リイシュー盤として再発され、今年はいよいよTUG...の番。
 ここで収録されなかったらもう終わり、期待を込めて待っていました。

 入ってる!
 ほっとしました。
 今日届いたばかりで、帰宅してからそれと次に紹介する曲ばかり何度も何度も何度も聴いています。
 Raincloudsではギターも弾いています。

 曲について少し

 歌のイメージ、歌詞などから、ビートルズ時代のI'll Follow The Sunをイメージしますね。
 そこにバグパイプを入れてスコットランド風に仕立て上げた1曲。
 2番のコーラスが後追いで重なってくるのが、さすがはコーラスのセンス抜群のポール。
 リンダさんのコーラスもいつもながらちょっとおかしな雰囲気を漂わせているし、喜びをたたえたようなBメロ、そして一度しか出てこない間奏と、曲の完成度は高い。
 シングルB面でもったいない、とはいわないけれど、これまでずっとCDで聴かれることがなかったのはやっぱりもったいない。
 でも、今の人はYou-Tubeで聴くからいいのかな・・・

 今回、「レコードコレクターズ」もTUG...と同時発売の次作PIPES OF PEACEの特集ということで買い求めました。
 CDが届いてから読むことにしましたが、でも、Raincloudsだけは入っているかどうか確認の上で先に読みました。

 それによれば、チーフタンズのパディ・モロニーが参加しているとのこと。
 なるほど、それでトラッド色が濃いんだ、納得というか、長年の謎が解けました。
 そして「夢の旅人」Mull Of Kintyreに近いイメージがあるとも書かれていますが、ああそうだ、そっちの方がよっぽど近いな、それはワルツでこっちは4拍子だけど。
 ただ、Raincloudsを初めて聴いた中3の頃、I'll Follow The Sunは知っていたけどMull...は知らなくて、最初の刷り込みで僕はずっとI'll Follow The Sunの続編的な曲と思ってきました。

 この曲、アルバムには収録されなかったわけですが、はじめからシングルB面として録音されたものか、一緒に録音されてアルバムには入らなかったものか。
 調べていないので現時点では分かりません。

 しかし、これがアルバムに入らなかったのは分かります。
 ユーモアがあり過ぎる。
 いや、ポールにしては普通のユーモアを感じる。
 ところがTUG OF WARは、ジョンの死を受けたのか、ポールにしては重たくてシリアスな雰囲気が漂っています。
 ユーモアがないわけではないけれど、いつもより抑制されたもの。
 この曲がアルバムに入っているとすると、少しどころかかなり浮いていることが容易に想像できます。
 
 だから、CD化の際にも入れたくなかったのかな、と。

 さてもう1曲、今回初CD化されたのが、Ebony And Ivoryのポールが一人で歌うソロヴァージョン。
 これも映像がありました。



 こちらは正規のスティーヴィー・ワンダーとのデュエットヴァージョンとオケはおそらく同じ、ポールのヴォーカルだけ差し替えています。
 ただ、正規のものからポールのヴォーカルを残したのではなく、ヴォーカルはまったく別物になっています。
 
 なんというのかな、ラフに歌っていて、ぴしっと決まっていない。
 ポール笑いながら歌ってるんじゃないかな、というくらいに緩い雰囲気。

 オケは同じでも、全体のミックスも正規のものより多少ラフに作られているように感じます。 
 と思ったのですが聴いてゆくと、キーボードの音が多少細いかな、特に最後のコーダの前に入るキーボードの音の響きが違う。
 キーボードだけ録り直したことは考えにくいから、やっぱりミックスでそう聴こえるのかもしれない。
 いずれにせよ、シングルのB面ということで、ポールもそこは考えて音全体を緩くしたのだと考えます。

 それにしても、この曲は歌として最高に素晴らしい。
 ポールのファンには、「ただのヒット曲」として見られているのか、あまり人気がないみたいだし、ポールもコンサートではあまり歌っていなくて、リアルタイムで接した人間としては寂しい限り。

 そうだ、へそ曲がりの僕が、この曲をもっともっと押してゆこう(笑)。




 Raincloudsに戻って、そんなに言うなら、レコード持ってるんだからレコードで聴けばいいじゃないか、と思われるでしょう。
 僕の家にレコードプレイヤーを置く場所がない、なんて言い訳に過ぎない。

 違うんです。
 CD化されないということは、これだけ素晴らしい曲が世の中から忘れられてしまっているようで、そこが寂しいというか、ポールのファンとして残念だったのです。
 僕は豪華限定盤を買いましたが、TUG...の2枚組のボーナスディスクには収録されているので、ひとりでも多くの人にポールの「隠れた名曲」、いや「佳曲」をCDで聴いていただきたい

 とにかく嬉しい。
 この日を待っていた。
 
 そう、33年前、初めて買った時、まさかこんなことになるとは。
 そもそも33年前は漸くCDというものが商品化されたばかり、僕も名前しか知らなかったですからね。

 昨日の東京ヤクルトスワローズ優勝に続いて、今日はポールのこの「佳曲」にひたります。


20151003Paul2