Zanzibar ビリー・ジョエル | 自然と音楽の森

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洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。

20150111BillyJoel

 ◎Zanzibar
 ▼ザンジバル
 ☆Billy Joel
 ★ビリー・ジョエル
 released in 1978 from the album 52nd STREET
 2015/1/11

 今回もビリー・ジョエル、しかも同じアルバムからもう1曲いきましょう。
 LPでいうと、A面最初の曲に続いて、これはA面最後の曲。

 先ずは映像を観て聴いてください。
 上手い具合に2006年東京公演のライヴ映像がありました。



 先日、本家BLOGで、「お酒を飲む曲を集めてみた」という記事(リンクこちら)を上げました。
 前回のBig Shotは、そこから抜き出して加筆修正したものです。

 その記事を上げた際に、いつも書き込みに来てくださるぽちわかやさんから、前夜たまたまその曲を思い出したところで記事に出てきたので驚いた、という書き込みをいただきました。
 ジャズのトランペットつながりでここに行き着いたそうですが、同じビリー大好きとはいえこの曲が重なったというのが、いい偶然だなと。
 そうしたいわば「シンクロニシティ」は、偶然のようで偶然ではないようで、何か不思議な感覚に襲われますね。

 そこで今回はこちらも独立して記事にしたしだい。

 ビリーの歌の"Zansibar"は、ニューヨークのスポーツバーの名前という設定で、スペルの最後が"bar"であるのは言葉遊びでしょう。
 しかし、"Zanzibar"という地名からして、「多国籍かつ無国籍」なビリーらしい言葉の選び方だと思います。
 
 そして、フレディ・マーキュリーがザンジバル島で生まれたことを後で知り、この言葉に2度も出会うとは、と。
 もしかして、ビリーは当時、雑誌か何かでフレディのプロフィールを見て、そこにあった"Zanzibar"という言葉の響きに引かれて歌詞を思いついた、ということ、ないかなあ。

 歌詞では自らもボクサーだったビリーがモハメッド・アリへの思いを書いていて、「試合の後ダウンタウンのこの店でもう1ラウンドどうだい?」と話しかけるのが、なんというか、熱いですね。
 そういえばアリとアントニオ猪木が闘ったのもその頃だったのではないかな。
 その試合を観たビリーはどう思っただろう・・・

 ピート・ローズも出てきますね。
 当時はメジャーリーグの大スターとして、日本のCMにも出てましたね、マルちゃんの「激めん」。
 僕も当時知っていました。
 最近のローズ氏は、イチローに対して厳しいことを言う人として日本では知られているでしょうか。
 ここでは、ピート・ローズがいくら大打者であっても新聞の1面はいつもヤンキースだ、と歌われています。
 
 しかしピート・ローズは八百長に関与したとして球界から追放された。
 今回付した2006年のライヴでは、「ローズは野球の殿堂に入れないけれど」といった歌詞に変えて歌っています。

 歌詞で面白いのは以下の部分。
 "Me, I'm trying just to get to second base
 And I'd steal it if she only gave the sign"
 
 僕は2塁を陥れようとしている。
 彼女がサインを出せば、盗塁成功さ

 ところが盗塁は失敗する・・・
 前回の記事で、ビリー・ジョエルにおける男女間の比喩的表現について触れました。
 これはまさにそうですが、でもやっぱり、「そこから先」を想像させないのがビリーなのかなとあらためて思いました。
 あくまでも話は話として終わっている。

 ところで余談、『リーサルウェポン2』で、パッツィ・ケンジットを口説くシーンでもメル・ギブソンが男女間のことを野球に喩えていたのが印象的でした。

 歌詞といえば、なんとも間抜けな僕の話。
 サビではこう歌っています。
“I got the oldman’s car, I got a jazz guitar and
 I got a tab at Zanzibar”
 
 俺には古い車があるんだ、ジャズ・ギターも持ってる
 そして「ザンジバル」につけもあるんだぜ

 この"tab"は「つけ」という意味ですが、高校時代にこの歌詞を読んだ時はその意味を知らず、前にジャズギターと出てくるので、「タブ譜つき楽譜」があると思っていました。

 「タブ譜」とはご存知の方も多いでしょうけど、音符の代わりに何弦何フレットを押さえるという記号が書かれた譜面のことで、たいていは音符のある譜面の下に併記されています。

 でも、当時家によく来て音楽の話をしていたクラスメイトと、「プロのミュージシャンがタブ譜を使うのか?」と話題になり、 辞書を引くと「つけ」という意味があると知って納得しました。

 しかし、そうだと分かったところで、店につけがあることを女性に自慢しているというのは、なんともおかしい。
 それだけハクがある店ということなのかもしれない。

 曲はビリーの中でも本格的なジャズといえる颯爽とした曲で、というか歌のない演奏部分はジャズそのものですよね。
 ぶんぶん鳴るベースはまさにジャズ、そして僕はベースが目立つ曲には無条件でひかれる。

 ジャズの要素は、もちろんビリー自身も好きなのでしょうけど、ニューヨークの空気感のようなものがより伝わってきます。
 なんせブルーノートがある土地柄ですからね。

 僕は父がジャズが好きだった影響で、中学時代に聴いたこの曲は最初からとても気に入り、僕の中ではビリーの「隠れた名曲」としてずっと大事に思っていました。

 2006年12月、ビリー・ジョエルは札幌ドーム公演を行いました。
 一緒に行く友だちと、この曲を演奏してくれないかなと事前に話していたら本当にやってくれてほんとうにうれしかった。
 
 さらには2008年東京ドーム公演でも演奏して、今ではもう、隠れていない真の名曲になった感がありますね。

 コンサートの話を続けると、その2回ともツアーのドラマーが元レインボーのチャック・バーギで、本格的ジャズのリズムを刻む間奏が終わるところで客席から大きな拍手が起こり、意外にも、コンサートで大いに盛り上がった曲でした。
 
 また余談ですが、ツアーのキーボードも元レインボーのデイヴ・ローゼンタールで、実は元レインボーのメンバーが2人もいたんですね。
 2人は同時に在籍したこともあります。

 余談ついでに、ビリーはChuck Burgiをチャック・バー「ジ」、Dave Rosethalをデイヴ・ローゼン「ソ」ルと(「ソ」は舌を歯に挟む音)、日本語表記とは違う発音をしていました。
 

 余談が過ぎましたが、何であれ、僕はZanzibarが昔から大好きですよ。

 この曲の歌詞を読んで、ビートルズとはまた違うリアルさがあると感じました。
 「現実社会のおとぎ話」のような感覚を受けた、というか。

 そう感じたのは、お酒の力なのでしょう。


 さて、ビリーより先に2塁を陥れることはできるかな(笑)。