5月6日の「ベストヒットUSA」は、「思い出に残る一発屋ベスト10発表」と題して、視聴者からの投票で「一発屋」の上位10曲を発表するという特別企画でした。
面白いし、いろいろ思うところがあるので、僕も記事にすることにしました。
「一発屋」、英語では"One-Hit Wonder"、人によって受け取り方が違う部分がありますね。
僕も実際、番組を観ていて、この人たちが「一発屋」と言われるのか、と驚いた例もありました。
厳密にいえば、1曲しかヒット曲がなく、その曲が大ヒットもしくはずっと聴き継がれるなどで広く知られた、それが「一発屋」でしょう。
しかし、"One-Hit Wonder"という言葉にあるように、「大ヒットしたかどうか」、そこにどれだけ重きを置くかで人により受け取り方が様々だと、今回分かりました。
「大ヒット曲」とは、普段は音楽(洋楽)を熱心には聴かないけれど流行っているものは押さえる人、そのジャンルは聴かない人、もしくは音楽自体をあまり聴かない人でもそれこそ誰でも知っている曲、でしょう。
だから、ヒットが1曲しかない場合でも、その曲が洋楽を熱心に聴く人であれば知っているけれど一般に膾炙するまでは至っていないのは「一発屋」とは言わないのかな、とも。
例えば、ロバート・テッパー No Easy Way Out。
これは『ロッキー4』のサントラからシングルカットされ、中ヒットくらいになったと思いますが、僕はその人はそれ以外はまったく知りません。
つまり、「一発屋」というのは、それだけインパクトが大きかったということであり、むしろいい意味で使う「ほめ言葉」なのだと思いました。
その1曲の大ヒットがとんでもなく素晴らしい曲であることへの敬意と愛情が込められた言葉であると。
英語で"Wonder"というくらいですからね、"wonderful"に通じるものだと。
僕も正直、若い頃は半ば嘲笑気味に使っていましたが、まあそれは若い頃のこととして。
「一発屋」については、ファンの人からみれば違うだろうと思うかもしれない、と小林克也さんがフォローしていましたが、その辺はさすがと思いました。
さて、今回は、順位を追いながら、それに対して僕がどう思い感じたかを記してゆきます。
「◎」は「まさにそう思う」、
「○」は「見方による」「人による」
「△」は「僕は「一発屋」だと思っていなかった」
という意味です。
ここで誤解しないでいただきたいのは、あくまでも「僕が」どう思い感じるか、というだけの話であって、上述のように「一発屋」の考え方は人それぞれだから、そこはどうかあまり深刻に受け止めずに読んでいただければと思います。
カウントダウンで進めます。
10位:The Final Countdown / Europe (1986)
「ファイナル・カウントダウン」 ヨーロッパ △
これはまず意外でした。
リアルタイムでしたが、Carrieが大ヒットしたはず。
と思ってWikipediaを見ると、Final...は最高8位、Carrieは最高3位で、実はCarrieのほうがチャート的には上だった。
しかし、後者は前者の大ヒット受けてのもので、逆だったらそこまでヒットしたかというのは疑問がありますね。
Final...はインパクトが大きいし、ほんとうに僕も大好きで今でもよく口ずさむし、今でもこの曲はラジオなどでもよくかかる、膾炙して聴き継がれている曲だから、印象度が高いのでしょうね。
さらに僕が彼らを「一発屋」とは違うと感じたのは、この次のアルバムOUT OF THE WORLDは期待を持ちつつ出ですぐに買い、当時メタルファンの間では話題になっていたと記憶しているからでした。
ところでここで「一発屋」の定義みたいなものに戻ります。
このように1枚の同じアルバムから切ったシングルが複数ヒットした場合は、シングルとして見れば一発ではないけれど、「一発屋」に準ずると考えていいと思い、ヨーロッパはこの前も後もあまり売れなかったので、その点では「一発屋」に入るかもしれない。
9位 Bad Day / Daniel Powter (2005)
「ついてない日の応援歌」 ダニエル・パウター ◎
この曲がヒットした頃はMTVも観ないし新しい音楽も追っていなかったので、どれくらいヒットしたかを知らなかった。
でも、そんな状態の僕でもこの曲は聞き覚えがあったので、やはり大ヒットした、ということがあらためて分かりました。
北海道の人にとってはファイターズの金子誠選手のテーマ曲として知られていて、僕もそれでブックオフでCDを250円で購入しました。
克也さんによれば、この人は実際にこの後が続かなかったようで、何か別の仕事をしているようなことを言っていた、まさに「一発屋」。
ところで、僕が買ったブックオフでは「ダニエル・パウター」の札に「ダニエル・パウダー」と書いてあったのが笑ってしまった。
もうひとつ余談で、R.E.M.のベスト盤に同名異曲Bad Dayがあり、それは2003年、こちらは2005年だから、なにがしかの影響があるのかなと僕は睨んでいます。
8位 Macarena (Bayside Boys Mix) / Los Del Rio (1995)
「恋のマカレナ」 ロス・デル・リオ ○
こちらはまた別の事例で、「所変われば」というもの。
ロス・デル・リオはスペインでは当時既に人気者でしたが、ヒスパニックが多いマイアミのプロデューサーがこの曲に目をつけてアメリカ用にリミックスしたものがNo.1ヒットとなった、というもの。
スペイン人のNo.1は確かこれが初めてではなかったかな。
スペインの人から見れば、「あの人たちがついにアメリカでも売れたんだ」となったのかな。
この例でいえば、Sukiyakiこと「上を向いて歩こう」の坂本九さんもアメリカでは立派な"One-Hit Wonder"ということになりますね、日本人も胸を張りましょう。
ところえ、これが流行った頃は僕の中でNFLが盛り上がっていた第一時期で、放送中、プレイが止まっている時間に会場が写るとこの曲が流れて踊っている女の子がよく写し出されていたのを覚えています。
あ、男性も写っていたのかもしれないけれど、それは覚えていない(笑)。
僕はこの曲大好きですよ、当時新品でシングルCD買いました、踊らなかったけど。
7位 99 Luftballons / Nena (1983)
「ロックバルーンは99」 ネーナ ○
これは僕の中では究極の「一発屋」。
なんせ高校時代のリアルタイムだから。
でもこちらもロス・デル・リオと同じく、当時の西ドイツではある程度人気があったものが、この曲でアメリカでもヒットしてNo.1になったという例ですね。
ネーナは、バンドは解散したけれど個人はその後も息長く活動していて地元では人気がある、と克也さんがフォローしていました。
ところでこれ、英語ヴァージョンもあったかと思うのですが、僕はドイツ語のほうをよく聴いていたらしく、ドイツ語は歌詞が分からないので内容が分かりませんでした。
克也さんの解説で、これは当時の冷戦下における核問題をテーマにとっているそうで、やはりそうだったか、と、言葉は分からなくても、ビデオクリップや歌の雰囲気でそうだと思っていました。
それから余談、克也さんはNenaを英語では「ニーナ」と発音していましたが、日本語の字の分では「ネーナ」と言っていました。
もひとつ個人的な余談。
当時はシンディ・ローパーが人気を博し、マドンナが出てきた頃。
高校のクラスメート5人で、「シンディとネーナとマドンナの誰が今後もっとも売れるか」という話をした際に、シンディが3人、ネーナがひとりで、僕だけがマドンナと言った、という思い出もあります。
6位 Come On Eileen / Dixie's Midnight Runners (1983)
「カモン・アイリーン」 ディキシーズ・ミッドナイト・ランナーズ ◎
これまたもろリアルタイムで、しかも僕にとっては最高峰の狭義の「一発屋」。
この次のシングルカットくらいはラジオかテレビで聴いたと思うけれど、それは(もちろん)売れなかった。
この曲に関して克也さんは、コンセプトはよかった、そして売れた、けど続かなかったと話していました。
当時から歌としては大好きで、今でもたまに口ずさむくらいですが、ソウルやブルーズを経てアメリカのルーツ音楽を好んで聴くようになった今は、昔よりももっとこの曲が輝いて見えます。
多分ですが、僕は本来、いろんな音楽を聴きたい人間だったのだろうなと、実際に聴くようになった今にして思います。
CDでは、近年デラックス・エディションが出たので初めて買って聴きましたが、アルバムを通して聴いてもかなりよかったし。
ただ、ですね。
正直、この貧乏くさいジャケットでかなり損をしたのではないかと。
僕も、「ベストヒットUSA」で初めて観て聴いて最初からすごくいい歌だと思ったけれど、曲が終わって小林克也さんの後ろに写っていたLPのジャケットを見て「まさか」と愕然とした思い出があります。
その彼は変なことをする人で、90年代には女装をしてそこそこ受けた、けど今はどうだろうという克也さんの話が入りました。
そうだ、これは「笑う洋楽展」で取り上げてもらって、最近の彼の写真を見たい、気もする。
5位 Ghostbusters / Ray Parker Jr. (1984)
「ゴーストバスターズ」 レイ・パーカー・ジュニア △
これは違う、断じて「一発屋」じゃない、△でもない×にしたいくらい(笑)。
僕の話をすると、洋楽聴き始めの頃にレイ・パーカー・ジュニアという人を知り、ヒットしたWoman Needs A LoveとThe Other WomanをFMでエアチェックして聴いていたので、この曲はその流れで出てきたものを自然と受け止められたから。
でも、前を知らない人や、リアルタイムではなく後からこの曲を知った人から見れば、この1曲があまりにも輝きすぎている、他とは違うのはよく分かります。
番組では盗作騒動には一切触れなかったんだけど、まあそれはどうでもいいことか。
そして忘れてならないのが、この曲は昨年日本でリバイバルヒットしましたね(笑)。
「あまちゃん」で駅長の杉本哲太が口ずさみながら踊っていました。
洋楽バカの僕として、あれは嬉しかった。
写真のドーナツ盤ですが、当時、最初は12インチシングルレコードを買うつもりでタワーレコードに行ったところ、普通のビデオクリップと同じシングルヴァージョンが入っていないので、国内盤を買い求めたのでした。
そして余談、この曲の歌詞に出てくる"I ain't afraid of no ghost"というくだり。
当時は英語の授業が終わると先生をつかまえて歌詞のことをいろいろ聞いていたのですが、これは二重否定で、つまりはお化けが恐いのですか、と質問したところ、二重否定には強調の意味もあって主に黒人の間で使われている、と説明されて納得した、という思い出もあります。
4位 Relax / Franie Goes To Hollywood (1983)
「リラックス」 フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド ◎
これも「一発屋」、そうですね。
ただ、曲はこちらがNo.1になったけれど、その次のTwo Tribesのレーガン大統領とチェルネンコ書記長が戦うビデオの方が印象が強く、かつその後も見る機会が多かったので、この場合はアルバムが「一発屋」ということになるでしょうかね。
彼らは当時来日して「ベストヒットUSA」でインタビューも受け、僕も観た記憶がありますが、克也さんによれば、彼らはみな好き勝手をやっていてどうなるだろうなと思ったら、やはりというかもう1枚出して解散してしまった、と話していました。
3位 Scatman / Scatman John (1995)
「スキャットマン」 スキャットマン・ジョン ◎
ヒットという点でいえばまさに「一発屋」だけど、MTVをよく観ていた時代なので、次のScatman's Worldのクリップもよく観てなかなかいい曲だと思っていた、ということはまず補足しておきます。
克也さんの説明によれば、元々はアメリカのジャズマンの彼は吃音で悩まされていて、英国に渡って新たな活動をすると決めた際に、奥さんに、吃音であることを隠さずに活動すればいいとの助言を受けたのがこの曲につながった、とのこと。
また、アメリカには吃音の殿堂というものがあり、今でもスキャットマン・ジョンは尊敬されていると話すなど、克也さんはこの人はかばっていて、「一発屋」と言われたくないファン側に立って話していました。
1999年に亡くなられたのは新聞でも報じられました。
ジャズ的な音楽も当時よりは今のほうが聴いているので、これもブックオフで探して買って聴いてみようと。
2位 You're Beautiful / James Blunt (2004)
「ユー・アー・ビューティフル」 ジェイムス・ブラント △
この曲を三角にしたのは、僕は彼のアルバムは出る度に買って聴き続けているし、まだまだ現役でキャリアを積み重ねている過程の人は10位の中には他にはいない、そこに違和感も覚えなくもないかったから。
この曲も9位と同じく、ヒットした当時は新しい音楽は追っていなかったけれど、でも曲自体は知っていたので、こういう曲こそ大ヒット曲というのでしょうね。
ただ、その反動があまりにも大きすぎて、新譜を出す度にもがいているように見えてしまう。
周りの人もそういう目でしか見られなくなっているのかもしれない。
ヒット曲を出してしまった人の悲哀を感じます。
実際のジェイムス・ブラントという人も、PKOで戦地に赴いた経験を引きずっていてどこかしら影があるように感じられてしまう。
でも僕は、彼の人間的な部分にひかれます。
この曲はビデオクリップも素晴らしいと克也さんはほめていて、特に最後、ジェイムス・ブラント本人が死の危険すら感じたそうですが、僕は観たことがありません。
番組でも、他もそうでしたが基本は最後まで流さなかったので、観ることができませんでした。
こういう時こそYou-Tubeで観ればいいのかな。
1位 Take On Me / A-ha (1985)
「テイク・オン・ミー」 A-Ha ◎
これはいい意味で祝福されるべき「一発屋」、1位は納得です。。
昨日も聴いたけれど、やっぱり曲が素晴らしすぎる。
彼らが作ったというよりは、音楽の天使が彼らを選んで人間に聴こえる曲を与えてくれたとしか思えない。
どれくらい大ヒットしたかというと、このLPはあまり音楽を聴かない上の弟が当時買った、というくらいに、多くの人の心を動かした曲でした。
この曲はビデオクリップも素晴らしくて、まさに時代の申し子だったのでしょうね。
次のシングルThe Sun Always Shines on T.V.もそこそこヒットしたと記憶していて、僕も好きでしたが、今調べると20位で中ヒットだったようで。
でも、あのa-haの次のシングルとしては物足りないと思った記憶もありますね。
彼らも、後に007のテーマ曲を歌ったりしながら、数年前までずっと活動を続けていて正式に解散したそうです。
克也さんは、当時インタビューをした印象として、リーダーのモートンだけが目立ちすぎるのでグループ内の関係がどうなるのか注目していたところ、意外とうまく長く持ったと感心していました。
というわけで、最後は納得で終わりました。
今回のYou-Tube映像はもちろん1位を祝してTake On Me。
もう長いのでふたこと、みことだけ言うと、僕は最後のほうの、モートンが漫画の世界から抜け出そうともがいているシーンが当時切なくなりました。
曲も、サビで"Take on me"と歌った後"Take me on"と入れ替えて歌う、このちょっとしたアイディアに当時感動しました。
いつもいいますが、ビートルズから聴き始めた僕は、この曲を活かすちょっとしたアイディアというのが大好きなのです。
◇
それにしても、僕も投票したかったなあ。
HPなどで告知してたのかな、と思い、順位の確認も兼ねて公式HPを見たところ、公式Facebookページもあったのでさっそく「いいね!」しました。
「一発屋」についてはまた別の機会に話したいと思います。