ポール・マッカートニーの日本ツアーが始まりましたね。
今朝は「めざましテレビ」でEight Days A Weekを歌う映像が流れていましたが、僕はすぐにチャンネルを変えました。
今回のコンサートは、自分で行くまで情報に接したくない、それが正直な気持ち。
ポールの新譜NEWはほんとうに毎日聴いています。
1週間で8回くらいかな(笑)、いやもっとだ、2日で3回は聴いている。
他のアーティストのCDももちろん聴いており、1日1回聴いているものもあります。
しかし、頭の中はポール一色、といっていいかな、他の音楽は上の空というか。
だからもう10日も、アルバムの記事を上げていません。
気持ちが入らないところで上げるのはいろいろと失礼だし、いいものはいい、好きなものは好き、だからこの状態で記事にするのはもったいない気もします。
というわけで今回は、閑話休題的に、アルバムという縛りを解いて、ポール・マッカートニーの話をすることにしました。
気持ちを落ち着かせるためにも(笑)。
タイトルの通り、僕が好きなポール・マッカートニーの曲を、敢えて順位をつけて12曲紹介します。
対象はビートルズ以外の曲です。
なぜ12曲かというと、どうしても10曲には絞れなかったから。
1ダースだからちょうどいいでしょう(笑)。
個人的な思い出につながるものが多くて話にくい部分もあるのですが、そこはさらりとお読みください。
1位 Wanderlust
from TUG OF WAR
ポールのいちばん好きな曲。
聴いていると、口ずさむと、心が透明になるのを感じます。
歌メロ、いやこの場合はそんな俗っぽい言い方ではなく、旋律があまりにも美しい。
まずは歌として最高。
サビの"Right now wanderlust"の"-lust"の部分を「らぁ~ああ~ああああ(すとぅ)」と伸ばして歌うのがいい。
曲作りも、主旋律のAと中間部のBが最後に対位法になる、胸に浸み込んでくる。
ポールは対位法をさらりと入れるのが上手いですよね。
TUG OF WARは僕がビートルズを聴き始めて最初のリアルタイムのアルバムであり、ものすごく大きな期待を持って臨んだのですが、その期待をはるかに上回る出来。
その中でも、シングルではないアルバムの1曲にこんなにも素晴らしいバラードが入っている、やっぱりポール・マッカートニーはすごい人なんだと思ったものです。
なお、これはGIVE MY REGARDS TO BROAD STREETで再録音していますが、そちらは"-lust"の部分の歌い方が微妙に違うのと、やはりなんとなく緩いのが減点、やはりTUGのオリジナルがいい。
2位 This One
from FLOWERS IN THE DIRT
エルヴィス・コステロと組んで心機一転を図った1989年のアルバムから。
このアルバムも思い出がたくさんありますが、中でもこの曲。
そうですね、この曲を聴いて、口ずさんで、好きな人に思いを伝えようと決めました。
「もし僕が君に声をかけていなければ、こんなにいい時間は持てなかったはず」
歌には何かの力があるとよく言うけれど、それはほんとうだと身をもって実感しました。
歌について、サビの入り口の"If I never did it"という部分が、歌にこだわる僕としては旋律と言葉の絡みがこれ以上ない最高のフレーズ。
今もそこだけ何度も何度も繰り返し口ずさんでいました(笑)。
曲の中で一度しか出てこない中間部も曲に変化を持たせていていい。
最後は1番の歌詞の"I"を"you"に変えてファルセットで歌う、やはり曲を活かすアイディアに長けた人だと実感。
ただ、最後なぜかマイナー調で終わるのが、ちょっとやりすぎ、と思う反面、だから余計印象に残るともいえますね。
この歌は、そんな言い方はおこがましいですが、僕の感じ方120%そのままポールが作って歌ってくれた、それほどまでに大切な曲。
歌っていて、言葉と旋律の間に自分の気持ちがにじみ出ているのを、鼻歌でさえも感じます。
ところで、好きな人に心を伝えて、どうなったのか。
そうですね、現在はU2のI Still Haven't Found What I'm Looking Forになりました・・・
3位 My Love (WOA version)
from WINGS OVER AMERICA,
この曲は中学時代にNHK-FMで録音して一発で気に入りました。
さすがはバラードのポール、歌として最高にいい上に、緩いジャズヴォーカル的な雰囲気があり(中学生でもそれくらいは分かった)、いい曲というよりはいい「音楽」だなあ、と。
少ししてアルバムRED ROSE SPEEDWAYのLPを買って聴いたところ、あれっ、なんだこの大甘のストリングスは、ポールの歌い方も甘々だ・・・
僕がFMで録音して聴いたのは、実は、ライヴヴァージョンだったのです、その時に気づきました。
オリジナルアルバムも聴き込んだのですぐに好きになりましたが、でも僕はいまだに、この曲はライヴの方が好き。
3番のフェイクヴォーカル、本来あまりしない人だけど、だからこそ珍しくちょっとばかりエモーショナルでいい。
この曲はNo.1にもなったことだし、ポールの中でも人気が高いでしょうね。
ところでこの曲、昨年まではもう少しランクが下でした。
別に毎年決めていたわけじゃない、あくまでも感覚的にいえばですが。
それが3位まで上がったのは、やはり、今年WINGS OVER AMERICAがリマスター盤で出て、これを聴いてやはり感動し、若い頃を思い出したからでした。
なお、この曲について詳しくはこちらの記事 をご覧ください。
4位 The Other Me
from PIPES OF PEACE
TUGに続いて買ったアルバムで、やはり期待は大きかった、マイケル・ジャクソンもいることだし。
そのアルバムの中でいちばん気にいったのが、どちらかといえば地味な3曲目の「もうひとりの僕」。
恋人と仲違いをしたんだね。
ちょっとしたいさかいで仲がこじれてしまったけれど、ほんとうの僕はそんな人間じゃない、もっといいやつなんだと言い訳するポールが年齢関係なくかわいげがあり、ポールにもこんなところがあるんだと親しみを覚えました。
強がりを言うのはいかにもポールらしいんだけど。
この曲は歌詞が聴き取りやすくて、高校生でも"dustbin lid"(=ゴミ箱のふた)以外は歌詞カードを見ないで分かりました。
国内盤LPを買ったので歌詞カードはあったから、ヒアリングの練習のつもりで聴きました。
音楽的には、よく分からないんだけどちょっとニューウェーヴっぽいことをやったと当時は言われていたような。
でも確かに、ポールの曲としては変わった響きではありますね。
仲違いして、言い訳をして、やり直そうと言っても、人間、男と女、そううまくはいくものでもない。
だけどこの曲はきっとうまくやり直したんだろうなという楽観的な響きに救われ、前向きになれる曲ですね。
最後の部分で♪なーななっとスキャットで歌うこの照れ隠しがいい。
この曲もほんと、120%僕のことを歌ってくれた歌かな(笑)。
まあ、実際のところ、このようなことがあったので・・・
5位 Take It Away
from TUG OF WAR
ポールって意外とロマンティストなんだなあと思いました。
さらにいえば、中性的な歌詞が多い中で、この曲は珍しく男のロマンを感じさせる。
アップテンポだけど切なくて、歌っていても旋律の動きに心が大きく流されてしまう。
ポールには珍しい疾走感がある、切なさに満ちた曲。
ドラムスはリンゴ・スターとスティーヴ・ガッド、なんとも豪華。
ところで、さいたまのソウルマニアの友だちと高校時代にこの曲について話したところ、彼はこう言いました。
「ああ、あの曲はいいね、最後の部分だけ」
彼曰く、ポールはブラスの使い方が上手い、という(この曲はジョージ・マーティン先生がプロデュース)。
確かにビートルズ時代からGot To Get You Into My Life、以降もLetting GoやArrow Through Me、そして何よりこの次のSay Say Sayと、ブラスが印象的な曲が多い。
僕は彼に言われて目覚め、今では「ポールはブラスの使い方が上手い」とまるで自説のように主張しています(笑)。
そしてこの曲は、いつか僕が死ぬ瞬間に聴いていたい曲。
6位 Somebody Who Cares
from TUG OF WAR
TUG...から続きますが、これも僕個人の失恋に絡んできますね(笑)。
どんな時でもきっとあなたのことを思ってくれる人がいる。
ただ、これは恋愛対象という意味よりは、もっと広い人間愛的なことを言いたいのだと思う。
人間愛というと大げさだけど、人を思う心、心遣いというか。
僕が失恋に絡めてしまったのは、まあ、そういうことです(笑)。
ベースはスタンリー・クラーク、ポールがベーシストをゲストに招くのは珍しい。
7位 Medley:Hold Me Tight-Lazy Dynamite-Hands Of Love-Power Cut
from RED ROSE SPEEDWAY
高校に合格したお祝いのお金を両親にもらい、このLPを買いました。
BAND ON THE RUNとVENUS AND MARSとこれ、3枚一緒に買った時のうれしさといったら。
このアルバムは「甘い」と言われていたようですが、最後がこのバラードのメドレー。
ポールはメドレーが好き、ABBEY ROADにも入っていたし、初めて全米No.1になったUncle Albert-Admiral Hurlseyも2つの曲を一緒にしたもの。
まあ、言ってしまえば未完成の曲でもパーツとしてはいいのでなんとか生かそうとした苦肉の策かもしれないけれど、でもそれをする人がなかなかいないので、やっぱりポールはアイディアマンだ、となる。
ここでは4曲をつなげています。
第1曲Hold Me Tightはまあ練習曲のような感じで、展開が思いつかなかったのかな。
第2曲Lazy Dynamiteはちょっと切なくて後半に歌メロが大きく揺れ動くのが面白い。
第3曲Hands Of Love、僕は特にこれが好きで、バラードというかミディアムテンポのフォークソングで、さすがはAll Together Nowを作った人だなと納得する楽しくてちょっと切ない曲。
まるで朝食のゆで卵ができたようなスキャットが面白い。
第4曲Power Cutはまたちょっと切なくて、でもよく聴くとレゲェ、当時はロックでレゲェが流行り出した頃であり、周りで流行っているものを看過できないのはさすがにポール。
最後はフェイドアウトしてゆくんだけど、音楽を聴く豊かさに心が満たされ、できればこの感覚にずっと包まれていたい、終わらないでほしい、と今でも思います。
8位 No More Lonely Nights
from GIVE MY REGARDS TO BROAD STREET
ううん、やっぱり僕は切ない曲が好きなようで(笑)。
この曲は、Say Say Sayの後で「大甘」のポールが戻ってきた、と言われ、一部にはつまらないとの声も。
僕は純粋に歌として大好き、最初から気に入った。
そしてこの曲が出た頃はテレビ朝日系のMTVが始まっていて、毎週土日の夜に放送していたけれど、一時期は毎回この曲のビデオクリップが最初に流れていたのも懐かしい。
この曲で特に好きなくだり。
"May I never miss the thrill of being near you"
そうか、男性が女性に対してわくわくすることを"thrill"と言うんだ。
僕はこれと、イーグルスのAfter The Thrill Is Goneそしてジョン・クーガー(・メレンキャンプ)のJack & Dianeの歌詞で"thrill"の意味を理解しました。
残念ながらマイケル・ジャクソンのThrillerではなくて(笑)。
そしてこの曲はデヴィッド・ギルモアのギターソロが最高にいい。
僕が好きなギターソロ10曲に間違いなく入りますね。
この曲のソロを弾きたくて、ストラトキャスターのキャンディ・アップル・レッドのメイプル指板モデルが欲しいと真剣に思ったくらいに(笑)。
9位 Coming Up
from McCARTNEY II
パンクの影響を受け少し弾けつつも古臭い響きのロックンロール。
誰もがイメージするそんな曲のど真ん中をいとも簡単に(思えるように)曲にしてしまうポールはさすが。
ジョンがインタビューでこの曲は好きだ、いい仕事をしていると話していたのもさらに好きな部分。
サウンドも面白いけれど、ジョンは歌詞が気に入ったのではないかな。
♪ You want a love to last forever, one who is never fade away
I wanna help you with your problems, stick 'round and say
Coming up, like a flower, coming up
きわめてシンプルな言葉を並べていて、いつもの抒情的な内容というよりはまさにジョンのように核心をついてくる歌詞。
音について、ギターワークがシンプルなようで複雑、ベースはAメロでは静かだけどBメロになって急に踊り出す。
ポールがひとり何役もこなすビデオクリップも楽しいですね。
そうそう、この曲は音が視覚的でカラフルに感じられるんだけど、クリップを見ると間奏のサックスの部分でまさにレインボーカラーになっていて納得しました。
10位 Motor Of Love
from FLOWERS IN THE DIRT
ここでのポールは歌がへたっぴです。
曲としてはソウルバラードだけど、さらっとして熱くなくもちろん黒っぽくもない、でもそれがポールという人。
世界一へたっぴなソウルバラードをクイーンのOne Year Of Loveと競っている、というのが僕の見方。
どうしてへたっぴなのか。
これほどまでに人間としてのポールの本音が歌詞に現れたことはなかったのではないか。
レトリックとしていえば、これは、自分をさらけ出したジョン・レノン的な歌詞。
亡くなった父への思いを歌った曲で、サビの"Heavenly father looks down from above"という歌詞には涙してしまう。
その思いと、長年支えてくれたリンダさんへの思いを重ねて、ラブソング以上の愛の歌を歌うポール。
ポールは、リンダさんと死別するまでは、僕が知る限りでは離婚したことがない唯一のロックミュージシャンでしたが、だからリンダさんへの思いはリアルに描かれ、伝わってきます。
そんな歌だから、強がりのポールは敢えてへたっぴに歌ったんだと思う。
ポールとしては曲が型にはまりすぎてありきたりの感じがするけれど(だからあまり注目されていない曲だと僕は思う)、自分の気持ちを素直に反映させるには、そのほうがよかったのかもしれない。
個人的なことを歌って普遍性を持たせるのは、ジョン・レノンのように特殊な才能がある人は別として、音楽まで個人的趣向に走ると、メッセージがうまく伝わらない、とポールは直感したのではないか。
ソウルはソウルらしく歌わないといけない、というわけではない、自分の素直な気持ちを表すことで誰でもソウルになれる、とでも言いたかったのか。
歌詞の中にも"Touch me deep in my soul"とあるし。
しかし、リンダさんも亡くなり、この曲は二重の意味でのレクイエムのようになってしまいました。
やはり、家族の死というのは心が動かされるものなのだと、今の僕は強く思います。
正直言えば、この曲を聴くとほぼ必ず涙が出てしまうし、自分で口ずさんでも、ダメですね。
この曲は僕個人の気持ちの入り方ではもっと上なんだけど、歌えないのでランクを下げました(笑)。
11位 Mrs. Vandebilt
from BAND ON THE RUN
この曲は、アルバムの記事(こちら)でも書いたけど、またその話をしますか。
もうこうなったらいつも同じ話をするおじいさんみたいだけど。
高校時代、僕の家は学校から近かったので、帰りによくクラスメートが寄りに来て、お菓子を食べながら音楽の話をしていました。
クラスメートのリクエストがない場合はだいたいビートルズやポールをかけていましたが、BAND ON THE RUNをかけた日はみんな、帰りに「ほっ、へいほぅ」とこの曲を口ずさんでいました。
或る日、別の友だち、今のさいたまのソウルマニアの友だちがうちに来た時、その話をすると、友だちは「俺はそんなことない」と宣言。
ところが、彼も帰りに玄関で靴を履いている時に「ほっ、へいほぅ」とやっていました(笑)。
ポールがいかに印象的な曲のフックを作るかという例でもありますね。
フォークソング蝶のこの曲、しかし聴きどころはポールのベース。
グリッサンドを多用していて、迫力に圧倒される。
ポールのベースの名演のひとつに挙げられる曲でしょう。
昔はこの音はリッケンバッカーだと思っていたのですが、ブックレットを見るとポールがフェンダーのジャズベースを持った写真があるので、ジャズベースなのでしょうねきっと。
ポールはビートルズ時代からジャズベースを使っているようですが、スタジオでしか使わないせいか、それを使った写真はあまり見ないし、ライヴ映像も見たことがありません。
12位 Junk (Unplugged Version)
from UNPLUGGED...AN OFFICIAL BOOTLEG
最後は、個人的な思いがあまりない、純粋に曲として好きなものを。
そういうのがあってもいいでしょう。
元々はMcCARTNEYに入っているもので、良くも悪くもラフな作りだったこの曲を、アコースティックのしっかりとしたバンドで聴かせてくれて、漸く曲が完成に至った、と僕は感じました。
僕もアコースティックギター上手くなって、ジェフ・ベックのGreensleevesとメドレーで弾きたい、と思うだけ思いました(笑)。
ところで、ケチをつけるわけではないですが、オリジナルのJunkはポールが歌っているもので、歌がないものはSingalong Junkだから、UNPLUGGEDのこれは正確にはJunkではないのでは、と・・・
なんて、やっぱりJunkだからこの曲はいいのだと思います。
このUNPLUGGEDは僕は大好きでいまだによく聴いています。
いかがでしたか!
やはりというか、リアルタイムで聴いたものが多くなりました。
ちなみに次点はSilly Love SongsかBig Barn Bedです。
好きなアーティストの曲に好きな順番をつけるのは違う、と思う方もいらっしゃるでしょう。
冷たい人、と、僕はよく言われます。
でも、僕は、音楽の話をするのが、そして聞くのが好。
音楽は、ネットであれ実生活であれ人とのコミュニケーションのツールのひとつだから、遊びとして順位を決めて楽しく話したい、という思いでそうしています。
4位の曲は絶対に1位には勝てないとか、スポーツではなく人の心だから、そんなことはない、今日はこっちの歌のほうが気分に合うし口ずさみたくなる、というのはむしろいつものことです。
ポールのコンサート、もう来週なんだな。
この中の曲は、演奏しても2曲かな、まあそれは構わないのですが。
楽しみです!