◎ACHTUNG BABY
▼アクトゥン・ベイビー
☆U2
★U2
relaesed in 1991
CD-0173 2011/12/13
U2の、スタジオ録音の新曲を含んだアルバムとしては7作目、「アクトゥン・ベイビー」の20周年記念盤が出ました。
僕はこのアルバムはもちろんリアルタイムで聴いていました。
リリースされてすぐにCDを買い求めて暫く聴いていましたが、当時は僕の中でも音楽への興味が最も低かった頃でもあったせいか、聴き込むというほどにまでは至らないまま聴かなくなりました。
すぐに聴かなくなったのは、やっぱりTHE JOSHUA TREEの幻影を求め過ぎていたのかな。
ひとつ前のRATTLE AND HUMは半分スタジオ半分ライヴという、映画のサントラ的なものだから仕方ないにしてもアルバムとして力が入っていないと感じていただけ余計にそれが強かった。
ただしそのアルバムはそれはそれでとても気に入ったのですが、それはまたの機会に。
当時はケーブルテレビのMTVを観始めた頃で、ビデオが制作された曲についてはMTVで見て聴いていて、このアルバムは僕の印象の割には意外と長く続いているんだなと思いました。
僕がこのアルバムに対しての見方が変わったのは、ボノがヴォーカリストとして世の中で評価されているらしいことが分かったからでした。
OneがMTVで流れ日本でも話題になるようになって、どの番組の誰だったか、テレビかラジオかも忘れてしまったけど、「このアルバムのボノのヴォーカルがすごくいい、中でもこれは極めつけの1曲」と言っているのを耳にして、なんだか僕は意外な感じがしました。
それまでの、あくまでも僕個人の印象では、荒らげた声でパワフルに歌うだけの人だったボノが、ヴォーカリストとして評価されているということが。
いいヴォーカリストには定義も何もない、人にどれだけのものを伝えられるかだと思います。
声がいい、しっかりとお腹に力を入れて声を出している、音程がぶれない、節回しが上手い、息継ぎの音が聴こえない、などなど、技術的な面ではいうべきところがあっても、結局はそこに行きつくものでしょう。
しかし当時の僕には、いいヴォーカリストはこういうものだという固定概念のようなものがあり、具体的にいえば黒人のヴォーカリスト以外はうまいと言える人はほとんどいないと思っている節がありました。
それは、人のせいにしますが(笑)、今でも付き合いがある高校時代のソウル好きの友だちM君とこんな話をしたことが一種のトラウマになっていたからです。
GB:「ねえM君、ジョン・レノンとポール・マッカートニーはどっちが歌が上手いと思う?」
M君:「どっちもうまくない」
ボノがいいヴォーカリストと世の中で認められたことが分かってからあらためて聴き直すと、ボノのヴォーカルには気持ちが強く入っていると感じました。
逆を言えば、そんなことすら最初は分からないくらいに僕は音楽をよく聴いていなかった頃だったんだって。
So Cruel、ゆったりとした荘重な雰囲気のバラードを歌うボノには男の色気が漂っています。
僕は恋愛対象は女性だけだから、そこに惚れるというのではなく、好きな人の前でそうして歌えるのはいいことだろうなあという感じであり、また、恋愛云々関係なしにこういう風に歌で感情を表すことができるのは羨ましいに近い感情を抱きました。
僕のことだからもちろん真似して歌ってみたのですが、どう聴いても犬の遠吠えにしか聞こえない(笑)。
しかし僕はこの曲がU2で2番目に好きな歌になりました、今でも変わりません。
Who's Gonna Ride Your Wild Horsesはミドルテンポのポップな歌メロを持った曲で、だけどボノが歌っているからこそ味わいがある曲ではないかと思います。
中間部で低い声から段々と声が上がっていくところは気持ちの揺らぎをよく感じられます。
この曲はシングルCDが発売されましたが、レコードでいうB面の曲でローリング・ストーンズのPaint It, Blackとクリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルのFortunate Sonを歌っているのを知って買い求めました。
CCR大好きな僕、U2のこれはとてもカッコよくてU2がそれまでよりも好きになりました。
Mysterious Waysのサビは爆発力があってついつい口ずさんでしまう。
ボノに対してはもうすっかり張り切って歌う人といイメージがなくなっていて、曲もそれに合わせて落ち着いて聴かせるものに変わっていったのでしょうね。
続くTryin' To Throw Your Arms Around The Worldの"Run to you"と連呼する部分は気持ちが引き込まれます。
音作りもボノのヴォーカリストとしての成長に合わせたように、よりボノの声を強調するように進化していて、エッジのギターも表情が豊かになったし、アダムとラリーとリズム隊の独特の粘り気はボノの声質をうまくいかせるものだと思います。
そうなんです、僕がこのアルバムを最初に聴いて割と早くに一度飽きたのは、当時の僕には音がおとなしすぎると感じたからなのです。
当時はその意図が分からなかったのですが、今こうして20周年記念盤を聴いてみると、ボノの声を生かすためであったことが分かります、分かりました、ようやく。
まだ一応は若かった20代前半の僕には、このアルバムの良さがいまいちよく分かっていなかったようです。
このアルバムは、僕のヴォーカリストへの見方が変わった1枚かもしれません。
歌がうまいというのはこうあるべきだ、みたいな固定概念を取り払ってくれた。
それ以前に、うまいかどうかは関係なく、ヴォーカリストとはどれだけのものを伝えられるかということが分かってきたのもこの頃からだったような気がします。
アルバムとしては緊張感があまりないのは、例の歴史的名作から心が解き放たれてきたことを感じられ、だからこそボノのヴォーカルにゆったりとひたることができるアルバムではないかな。
例のローリング・ストーン誌100人の偉大な歌手でボノは32位ですが、それがよく分かる1枚ですね。
今回聴くと、これもまた前よりもずっと魅力的に響いてきました。
ところで、U2を上げたことでカテゴリーのUも埋まりました。
まあ、これが出た時点でこれを上げると決めていたのですが。
あとはXだけ。
でも、Xは、記事に出来るものがあるかな・・・(笑)・・・