BACK IN THE HIGH LIFE スティーヴ・ウィンウッド | 自然と音楽の森

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自然と音楽の森-Nov29SteveWinwoodHigh

 

 

 

◎BACK IN THE HIGH LIFE

 

 

 

▼バック・イン・ザ・ハイ・ライフ

☆Steve Winwood

★スティーヴ・ウィンウッド

released in 1986

CD-0166 2011/11/29

Steve Winwood-05

 

 スティーヴ・ウィンウッド4枚目のソロアルバムにして、ソロアーティストとして全米大ブレイクをもたらした1枚。

 

 ローリング・ストーン誌の歌手100人で33位を得られたのは、このアルバムがあったからといっても過言ではない1枚。

 

 このBLOGはその時に聴いているものを紹介するのが基本だから、コンサートの後でほぼ毎日聴いているこれを取り上げないわけにはゆかないでしょう。

 

 

 1986年の僕は浪人生でLPを買っていた最後の年でしたが、僕はこれが大嫌いでした。

 これがあったからスティーヴ・ウィンウッドが嫌いになったと言えます。

 

 どうしてかというと、MTV番組でよくかかっていたNo.1ヒットのHigher Loveのサビが嫌でも耳について離れなくてそれが嫌だったからです。

 

 それはポップソングとしてはいいことでしょうし、事実この曲はグラミー賞でレコード・オブ・ザ・イヤーを受賞したのですが、だけど嫌なものは嫌です。

 タイトルもハイだし、なにか気取ったスノブな感じが鼻について、既にアメリカンロック人間と化していた僕は受け入れられませんでした。

 僕もまだ子どもだったのでしょうね、今もかもしれないけど(笑)。

 

 ほんとうに当時のスティーヴ・ウィンウッドはものすごい勢いでしたね。

 

 でも、日本ではどうだったんだろう。

 ピーター・バラカン氏が当時「ポッパーズMTV」でこう言っていました。

 「スティーヴ・ウィンウッドは(当時は時代の人だった)フィル・コリンズなんかよりもずっとすごい人なんですけどね・・・」

 当時の僕はもちろん、その意味するところが分かっていませんでした。

 だって当時のフィル・コリンズはそれ以上にほんとうに音楽界を牛耳るといっていいくらいすごかったですからね。

 

 まあそうは言いながらも、大人になってから中古CDを一度買って聴いたのですが、まだ30歳になってなかった頃で、その時もまだこの音楽がいいとは素直には思えませんでした。

 

 なぜ買ったかというと、反面僕は音楽的好奇心が旺盛で、大ヒットしたものはなぜそうなったのかを知りたいと思うからです。

 

 でも今はこのアルバムが、スティーヴ・ウィンウッドが大好きです、ほんとうにすごいと思います、44歳にしてそこが分かりました。

 

 スティーヴ・ウィンウッドのこのアルバムは、大人が聴くロックのひとつの到達点といえるのではないかと。

 

 当時の僕は10代の未成年だったからそれが分かるわけがなかった。

 分からないのでこれはAORなのだと勝手に決めつけていました。

 あ、AORをばかにするつもりは毛頭ありません、今の僕は。

 でも、当時はAORは10代の男子が聴くものではないという固定概念があったことは否定しません。

 

 実際に聴いてみると、AORというほどまでに音の当たりが弱くもまろやかでもなく、シャープでびしっと強めに響いてくる、これは形容詞が要らない本当の本物のロックです。

 

 スティーヴ・ウィンウッドは80年代ブリティッシュ・ロックのひな型を作った人だ、というのが、僕が聴き始めてから思うようになったことです。

 

 アメリカ音楽の影響は確かに感じるんだけど、スマートでしゃれていてこぎれいに整っていて遊び心が多い、そしてシャープに品よく響いてくる。

 これは80年代英国勢を思い浮かべて書いた文章でもあり、同時にスティーヴ・ウィンウッドの音楽を思い浮かべたものでもあります。

 スティーヴはトラフィックの時代からこの道を進んできて、80年代には後進に多大なる影響を与えていたのでしょう。

 

 スティーヴ・ウィンウッドがいなかったら、1980年代のブリティッシュ・インヴェイジョンはなかったかもしれません。

 

 でも僕は実は当時の英国勢は、好きではなくはない、カルチャー・クラブやワム!などは聴いていたけど、流れとしてはそれほど重要視していなくて、スポット的にそうした好きな人が出てきてLPを買うくらいでした。

 

 まあアメリカンロック人間でしたからね(笑)。

 

 このアルバムはブリティッシュ・インヴェイジョンの後に出てきたわけですが、それがあれだけの大ヒットとなったのは、真打登場といった感じで捉えれらえたのではないかな。

 

 当時のことにいついての総論として敢えて言わせていただくと、それまでたくさん出てきた英国勢もスティーヴ・ウィンウッドに比べれば子どもみたいなものだ、これこそ本物、ということだと思います。

 ジャケットの写真がU2のボノみたいと当時思いましたが、それは偶然なのかな(笑)。

 

 しかしですねこのアルバムは、だからといって構えてしまうようなアルバムはありません。

 そこがさらにすごい部分だと思います。

 とっても気軽に気楽に聴けます。

 それを支えているのがスティーヴのキャリアとセンス、そこはとっても重いものだけどそれを感じさせないこの音はまさにプロフェッショナルの仕事。

 優れたスポーツ選手は練習のつらさを人前に見せない、まさにその意気です。

 軽く聴こえるので下手すると過小評価されがちなアルバムかもしれないけど、その軽さは誰にでも出せるものではない職人芸なのです。

 

 1曲目からNo.1ヒットのHigher Love、これは確かチャカ・カーンがコーラスで参加しているはずですが、ブックレットにはそれは明記されていません。

 

 でも、最後の"courtesy"のところにはちゃんとChaka Khanと記されています。

 この曲に限らずですがこのアルバムで気になるのは、サビがいい曲が多い反面、ヴァースの部分は口ずさみたくなるような歌メロの曲が少ないことで、これはそういう方針だったのかな。

 それにしてもサビの爆発力は80年代のヒットソングの中でも屈指のものでしょうね。

 

 2曲目Take It As It Comesはいかにもソウルに影響された80年代英国勢という音。

 

 

 3曲目Freedom Overspill、これはカッコいい!

 

 ブルーアイドソウルの傑作と言ってしまいたいくらいにソウルスピリットが迫ってくる。

 このアルバムでひとつ今となっては残念なのは、80年代的サウンドのキーボート、シンセサイザーが多用されている反面ハモンド・オルガンがあまり目立たないことですね。

 しかしこの曲ではハモンドが吠えていてさすが。

 これはシングル第4弾としてアメリカでも20位までヒットしていたことを今wikiで見て知ったのですが、それは知らなかった、少なくともビデオクリップは見たことがない。

 

 4曲目Back In The High Life Againはシングルカットされたのは覚えています、最高位13位だったから中ヒットですね。

 当時は、またハイかよって・・・ 

 でも実は当時から結構いい曲だなと思ってた、うん、今は認めます(笑)。

 ゆったりとした大人のバラードをスティーヴのハイトーン・ヴォーカルが引き締めています。

 アルバムタイトル曲のようで単語がひとつ余計についているのが面白いですよね。

 

 そうそうラス・タイトルマンだけど、主にワーナー系で活躍しもっとアメリカっぽい音楽が得意な人だとずっと思っていたけど、こんな音もできるんだというのは彼への敬意が増しました。

 

 

 5曲目The Finer Thingsはライヴシーンのビデオクリップが印象的で、曲も、嫌とはいいながらいい曲だなと思って、実はこの曲を聴いた時にやっぱりLP買おうかと少し迷ったんです。

 この曲は凝っていてヴァースの部分は普通のビートだけどサビではキーボードの裏打ちが強調されたレゲェというかスカになります。

 そのスカにのせたちょっとセンチメンタルなサビの歌メロがあまりにも素晴らしくて口ずさむにも「よりよい」感じ。

 今回アルバムを聴いてこの曲の良さを再認識しました。

 

 6曲目Wake Me Up On Judgement Day、7曲目Split Decisionはともに英国勢に与えた影響がフィードバックしてきたかのような若々しい響きで余裕を感じますね。 

 

 7曲目にはジョー・ウォルシュがギターで参加していて他の曲よりもギターがザクザクと聴こえます。

 

 最後の8曲目My Love's Leavin'はまた落ち着いたバラードでちょっとエスニックな感じの凝ったリズムは今に通じる音ですね。

 

 このアルバムはハイな暮らしを歌ってきていたはずが、最後の最後で寂しく終わるのは、やはりハイな生活といのは地に足が着いていないものだと言いたいのでしょうかね。
 前2曲が明るかっただけにしみてきます。

 

 

 

 音楽はいいですね。

 かつては嫌いだったものが好きになれる。

 好きになったら受け入れてくれる。

 これが人間関係であれば、一度嫌いになったものを好きになることもあまりないだろうし、そうなったとしても相手が受け入れてくれるものでもないだろうから(笑)。

 

 僕は昨年ジャクソン・ブラウンのコンサートに行った後、すぐに新譜のライヴが出たせいもあるけど4か月くらいジャクソン・ブラウンを毎日のように聴いていたっけ。

 

 

 今回のスティーヴ・ウィンウッドはいつまで続くか、自分でも楽しみ(笑)。

 

 

 

 

 最後に、今日はジョージ・ハリスンの命日ですね。

 

 2001年11月29日に亡くなり、今年は10周忌か。

 

 あの日僕は、当時は家でPCを使い始めたばかりで初めてウィルスバスターを買ってインストールしている時に、東京の弟から電話がかかってきてジョージが死んだことを知りました。

 

 もう危ないという報道がなされていたので覚悟はしていたのですが、でもやっぱりいざ亡くなるとなにがしかのショックを受けて寂しくなりました。

 当日の夜9時のNHKのニュース、当時はまだ30分だった、そこでジョージ・ハリスンが亡くなったことを短く取り上げ、映像は武道館公演のものが流れていました。

 

 音楽BLOGをやっている以上、ビートルズ信奉者と公言する以上、今日はジョージのアルバムをと、もちろん思いました。

 

 今の時期、僕が大好きなアーティストの命日が続くんですよね。

 11月24日フレディ・マーキュリー、29日ジョージ、12月8日ジョン・レノン、そして12月10日オーティス・レディング。

 

 しかし、僕は今「人の死」に敏感な精神状態なのです。

 

 だから命日にその人のアルバムを上げるのはできない、したくないというのが本音でやめました。

 

 僕は今年からこのBLOGを始めたのでこの時期を迎えるのは初めてですが、今後も、命日にはその人の音楽は敢えて取り上げないことにします。

 

 きっと、普通に過ごしているほうが、天の上の人たちはよろこんでくれると信じて。

 

 

 

 その代わり、誕生日にはその人の記事を上げてゆきたいですね。

 今年はトム・ペティの誕生日を通り過ぎてしまいましたが・・・(笑)・・・