◎BLACK ROSE:A ROCK LEGEND
▼ブラック・ローズ
☆Thin Lizzy
★シン・リジィ
released in 1979
CD-0103 2011/07/13
Thin Lizzy-02
シン・リジィの9枚目のスタジオアルバムでライヴ盤に続いて出た黄金期の1枚。
札幌は今薔薇が見頃です。
大通公園12丁目は多くの品種のたくさんの薔薇が植えられ人工水路も設けられた薔薇の庭園のような趣きでこの時期に歩くと視覚に嗅覚に薔薇の花を楽しむことができます。
大通公園自体は有名ですがこの薔薇の庭園は市民の間にも意外と知られていない札幌の隠れた名所ともいえる場所です。
先日の朝にハウを連れて写真を撮りに行きましたが、その時に頭に浮かんでいた数々の薔薇に関する曲の中から今回はシン・リジィのこの曲とアルバムを取り上げました。
シン・リジィは前の記事でも書きましたが以前はむしろ嫌っていました。
しかし聴くようになると元々がハードロック人間であるからかすぐに大好きになりました。
このアルバムは13年ほど前にシン・リジィの中で最初に買ったアルバムですが当時は何をどう聴いていいか分からなかった。
中古でたくさん見つけて聴くようになったのはその後のことでした。
これを最初に買ったのはもちろんゲイリー・ムーアが参加しているからです。
僕は歌メロ人間であるといつも言っていますが、そのあおりというか悪い影響で、若い頃は演奏のよしあしをあまり気にしていませんでした。
というよりも分からなかったといったほうが適切でしょう。
ギターを弾くのでギターはさすがに並程度に分かったけど(それも怪しいと言われればそうかもしれない・・・)、ベースはポール・マッカートニーのように旋律を奏でるような動いて目立つベース以外はどこがどういいかを完全には把握しておらず、ドラムスに至ってはいまだになんとなくしか分かりません。
もちろんなんぼなんでも度を超えてひどいものは分かりますがでも僕がレコードで聴くレベルのものになるとそこまで演奏がひどいものはめったにありません。
もちろんそれでも自分の鈍い感性を使ってそれまで自分なりにこれは凄い演奏だなどと思いながら音楽を聴いてきてはいました。
このアルバムはゲイリー・ムーアが参加しているとはいうものの当時は演奏の面白さが分かり始めてきた頃でまだまだ歌メロ主義から脱却することができておらず、せっかくのゲイリーのプレイもまさに猫に小判だったようです。
シン・リジィの演奏の良さはチームワークとバランスではないかと思います。
リーダーのフィル・ライノットがベースであるのも大きいでしょうね。
ベースが陰で支えようという気持ちはさらさらなく目立とうとしていることで全体のサウンドの底上げになっている。
もちろんただ目立とうとするだけではだめでシン・リジィはフィルのカリスマ性で統率力が保たれていて他の人が抑えられていたことがよい方に出ているのでしょう。
ゲイリー・ムーアが脱退したのはフィル・ライノットと並ぶほどの存在になってしまい両立しなかったのかもしれません。
そのゲイリー・ムーアがこのアルバムで戻ってきたのは、当初は怪我をしたブライアン・ロバートソンの代役として手助けにやってきたという感じでしたが後に一時的に正式に再加入となりました。
ツイン・リード・ギターがもはやバンドの売りとなっていただけにギタリストは絶対に必要だったわけであり、チームワークのバンドであるがゆえにスタジオ録音であってもスコット・ゴーハムひとりで多重録音するということははなから考えていなかったのではないかな。
ゲイリーもソロでキャリアを積み重ねてレベルアップし迎え撃つシン・リジィもバンドとしての結束が硬くなっていた。
そこにゲイリーがまた入るとまとまりがなくただ争っているだけの作品になってしまうのではないか。
違いました。
丁々発止のつばぜり合いの中からお互いが最高に融和できる点を見事に見つけてこの素晴らしい傑作をものにすることが出来たのです。
おそらくフィルとゲイリーは個人のレベルでは憎み合ったりしていたわけではなくただ音楽的に目指すところが違っただけなのでしょうね。
フィル・ライノットの歌は確かに僕には歌メロとして響かなかったけど、でもこのアルバムのフィルは気分よく歌っていてそれが聴き手にも伝わってきてうまく曲が流れていると思います。
サビの「ちゃんとした」歌メロも他のアルバムに比べて印象的なものが揃っていてそこだけ思わず口ずさんでしまうものばかりです。
回りくどい言い方をしてしまいましたが要はシン・リジィの中でも曲として印象に残りやすい1枚であるのは確かです。
1曲目Do Anything You Want Toはメンバーが横に並んでティンパニーを叩くビデオクリップを見たことがありますがゲイリーが時々隣のティンパニーにちょっかいを出すのが面白い。
ちなみに僕が大通公園で薔薇を見ながら口ずさんでいたのはこの曲でしたがそれは単にアルバムの1曲目だからです(笑)。
2曲目Toughest Street In Townは"This is the toughest"と歌う部分のコーラスがちょっと滑稽で印象的。
4曲目Waiting For An Alibiもこのアルバムを買う前からビデオクリップを見て聴いて知っていた曲ですが歌い出しでいきなり"Valentino"ときて「またまたこのキザが・・・」と思ったものでした。
サビは自然と口ずさんでしまいますね。
5曲目Sarahは僕がシン・リジィを聴く前には耐えられなかったフィルのロマンティック路線で少女に向かって優しく語りかけるビデオクリップを先に見てしまったのがいけなかったのかな・・・
これも歌メロ作りが巧いヴォーカリストが少し手を加えるとかなりいい歌になると思います。
アルバムの白眉はなんといっても最後の9曲目Roisin Dubh (Black Rose) A Rock Legendでしょう。
組曲風のこのアルバムはアイルランドのトラッドを採り入れた部分もあり、アイルランドの音楽とロックが最高に素晴らしく融合したこの曲には真の感動を覚えます。
以前は歌メロにしか気持ちがいかなかったのですが演奏が分かるようになってこの曲の素晴らしさ凄さを実感しました。
この曲は比喩ではなくほんとうに大地のうねりを感じそれに包まれることはロックの醍醐味であり至上のよろこびともいえます。
歌ではなくギターのリフを口ずさむというのもなかなかない曲ですがこれはその点でも傑出しています。
自らの曲に伝説と銘打っているこれは自信作なのでしょうね。
シン・リジィはこのBLOGを始めておよそ4ケ月で2枚目の登場です。
彼らよりも聴く回数が多くて昔から大好きだったけどまだ登場していないアーティストは結構あるのですが、今の中期的な僕の音楽の趣向の波にシン・リジィは合っているのでしょうね。
まあ直接的な理由としてはデラックス・エディションが出ているからというのもあるのですがそこで聴き直して再び良さに気づき、前よりもっともっとよくなっているというところでしょう。
今の流れに合うもうひとつの理由が、歌メロよりは全体の流れで聴かせる音楽を気持ちいいと思う部分が強いというのもあると自己分析します。
今日の写真はうちの庭で咲いている薔薇を1輪切ってきてジャケットと犬たちと一緒に撮りました。
庭の薔薇は今年はここ数年ではもっともたくさん咲いています。
ほのかにピンクの花でブラック・ローズではないですが、せめて気持ちだけでも(笑)。