◎CALL ME
▲コール・ミー
☆Al Green
★アル・グリーン
released in 1973
CD-0083 2011/06/23
アル・グリーンの6枚目のアルバム。
出来あがってきた感がありこれから円熟を迎えようとしていた時期の1枚と言えるでしょうか。
大ブレイクした後はある程度以上路線が固まってきて聴く人と聴かない人が分かれるというアーティストは多いのではないかと思います。
路線が固まるというのはすなわち煮詰まるということでそれはあまりよくない意味で捉えられることが多い。
逆にいえば幾つになっても前作と違って聴こえる挑戦的な要素があるものは評価されやすい(でも人気と直結しているとは限らない)。
出来あがった世界に初めて触れて感動して聴き始める人はもちろんそれで素晴らしい出会いだけど、一方で冒険がなくなったものにはあまり触手が伸びなくなるという聴き手も結構いらっしゃるようにも思います。
それはリアルタイムのアーティストに限らず過去のアーティストについても。
また逆にあるアーティストについて出来あがった後のアルバムを聴いてこんなもんかと思っても、初期やブレイクしたアルバムを聴くとへえこの人こんなに凄かったんだって思い直すこともあって僕自身もそうです。
いつもいいますがそれがどうこうという問題ではなくあくまでも個人の好みや考えで僕はそれを尊重します。
アル・グリーンのこのアルバムはまさにそんなことを感じました。
誤解を恐れずにいえばこのアルバムは冒険は一切していません。
大ブレイクした2つ前のアルバムから好きな人がより好きになってくれるかどうかに価値を見出しているように感じます。
そしてあわよくば以前とは唯一違う要素である新しい曲に触れてアル・グリーンっていいんだねって気づいてくれる人が「少し」出てくれればいい。
いわばお約束の世界がそこに繰り広げられています。
でも僕はお約束が悪いと言い切るつもりもないです。
それを求めている聴き手がいるのだからその人たちに誠実に答えることはキャリアが進んでくれば優先される事項になっていくと思います。
またそういうアルバムはアーティストにも聴き手にも幸せな1枚とも言えるでしょう。
とまあつべこべいわずにここはアル・グリーンの世界にひたりましょう。
ナイーヴという言葉を人に説明したいと思ったら辞書を引いたり自分の言葉で説明するよりもアル・グリーンを聴かせれば一発で伝わるのではないかな。
優しいけど頼りないわけではない、ロマンティックもセンチメンタルも少しオーバーと感じるけどこちらが照れてしまうほど大袈裟でもない。
力唱もしないし激昂もせず静かで紳士的にふるまい歌で語りかけてくる。
アル・グリーンの歌い方や感情表現はまさにナイーヴというものです。
アル・グリーンのナイーヴな歌唱は持って生まれた部分も大きいでしょうけど、このアルバムを聴くとその路線がまさに出来あがったという言葉がぴったりの歌を聴かせてくれます。
ワインが好きな人ならきっと芳醇なワインに喩えるでしょう、赤ワインかな。
過半の曲でアル自身が曲作りに絡んでいるのも見逃せないところです。アル・グリーンは女性とうまくゆきたい時にかけるといいという記述をよく目にしますが、僕はそれまではそうかなと半信半疑だったけどこのアルバムを聴いてそれが「1/4信1/4疑」くらいになりました(笑)。
あ、だけど実践するつもりは今のところないですよ・・・
いいです、ほんとうにいいですよこのアルバム。
ミディアムスロウの曲ばかりで固められていているのも最初はつまらなかったけど聴き込むとそのイメージしかあり得ないと思えるようになりました。
ひたるという点では文句のないアルバムであり逆にこれほどひたれるアルバムもあまりないと思える1枚です。
ひとつの世界が出来あがっていてその充実感は比類なきものです。
さすがは「ローリングストーン誌が選ぶ偉大なシンガー」第14位にランクされる人だと納得させられる歌の世界です。
そして僕がそう感じたということは僕がアル・グリーンをほんとうに好きになったことが証明されたのでしょうね。
今から3年前、僕がソウルを本格的に聴くようになったきっかけはアル・グリーンだったのですが、そうか僕もここまで来たかと思うと感慨無量ですね。
あ、もちろんアル・グリーンになぞらえてちょっとオーバーな表現を使ってみました(笑)。
◎このCDこの4曲
Tr1:Call Me (Come Back Home)
もわっとした雰囲気に最初から引き込まれます。
Tr2:Have You Been Making Out O.K.
ああこれはその状況における必殺の曲だわ・・・
Tr4:I'm So Lonesome I Could Cry
どこかで聴いたことあると思ったらハンク・ウィリアムスの曲だ!
カントリーがソウルになってしまった素晴らしい世界。
Tr6:Here I Am (Come And Take Me)
この曲はシールのソウルのカバーアルバムで好きになりました。
シールに比べると強さがないですね、なよっとしているという意味ではなく不必要に強がらない感じがします。
アル・グリーンの代表曲のひとつでしょうな。