◎BERT AND JOHN
▲バート&ジョン
☆Bert Jansch & John Renbourn
★バート・ヤンシュ&ジョン・レンボーン
released in 1966
CD-0054 2011/05/21
バート・ヤンシュとジョン・レンボーンが1966年に制作した1枚。
先日、1冊の本を10何年振りに手にして中を見ました。
「ロック・ベスト・アルバム・セレクション」 渋谷陽一/新潮文庫
1988年に刊行されたロック名盤のガイド本で、以前は別の出版社から出ていたものを文庫化に際し大幅に見直し加筆修正追加などをしたものです。
この本は僕が大学生の頃にに出版されてすぐに買い求め、学校に通うカバンにいつも入れて電車の中やつまらない授業中にそして家で音楽を聴きながらぱらぱらとしかし熱心に眺めていました。
いつしか表紙が破れたので外しページが抜けたのでカバンから出して保存用にもう1冊買い足しましたがもうカバンに入れることはなく書棚に置いておきました。
渋谷陽一は洋楽を聴かない父が名前を知っていて僕が洋楽を聴き始めるとFMで番組をやっているよなどとよく名前を口にするようになりました。
だから中高生の頃の僕には洋楽の枠を少し出た文化人という意識があったように今にして思います。
でも僕が「ロッキング・オン」を読んでいたのは大学生の短期間であり、評論の本を読むようになったのはこの文庫を買ったのがきっかけで熱心に文章を読んでいたというわけでもありません。
また渋谷陽一がレッド・ツェッペリンに心酔していることは僕がZepを聴くようになってから知ったので彼の影響というわけでもありません。
この本が出た頃はまだ「おやじロック」なんて言葉もなくロックが一過性の時代を象徴する音楽以上のものとは捉えられてはいない時代でしたが、その頃にロックにも名盤と呼ばれるスタンダードがあることを教えてくれたのがこの本の意義でしょう。
今はもうこの本で扱われているアルバムはすっかり定番として知られているものが多くなりましたが、それはこの本に込められたロックを作品として正当に評価してほしいという願いが通じたということなのでしょうね。
音楽は自分が聴きたいものを聴いてゆけばよいのでしょう。
でも、もし人と音楽の話をしたいのであれば価値観の共有(差異でもいい)やコミュニケーションの手段として名盤名曲は知っておくべきだと僕は思って生きてきました。
知らない場合はそこで盛り上がるという副産物もあるけど、僕にとってのこの本のもうひとつの意味は人とロックの話をするための「場」が与えられたことだと思います。
今はネットがあって僕自身もBLOGで発信しているように、音楽に対する他の人との考え方や感じ方の違いを割と簡単に感じる機会が増えましたが、ネット社会以前は本がその重要な役割を果たしていたのでしょうね。
これは音楽に限らず何についてでも。
でも、書いてあることを鵜呑みにしないように心がけてもいました。
それは書かれていないことも含めて。
そしてもちろん、いつかここで紹介されているすべてのCDを聴きたいと思っていました。
この本は見開き2ページで1枚のアルバムを解説し、最後に小さくそのアーティストの別のおすすめ盤か関連する他のアーティストのアルバムを2枚か3枚紹介するという構成になっています。
アルバムは年代順に並べられ時代を追って読むことができますが、1988年刊行であるこの本で取り上げられている最新のアルバムは87年のU2のTHE JOSHUA TREEです。
ロックということだけどソウル系のアーティストもロックに影響を与えたり逆にロックからの影響でアルバムを作ったなど何組かが取り上げられているのも僕には自然に映りました。
シンガーソングライター系もあるし広い意味でのロックですね。
解説されているアルバムは141枚。
すべてを聴きたいと思いつつあれからもう30年以上。
2011年5月21日時点で僕がこの中の何枚を持っているか。
122枚。
なお持っていないものの中にはベスト盤が取り上げられているアーティストが3組ありますが、それらはすべて編集が他の違うベスト盤を持っていて曲自体はほとんど知ってはいます。
回りくどいというか今日の記事はどちらかというと前振りが本題なのですが(笑)、ここでようやく今日の1枚にたどり着きます。
BERT AND JOHNは後にペンタングルを結成するバート・ヤンシュとジョン・レンボーンが出会ったアルバムとしてこの本で紹介されています。
実はこのアルバム、この本で紹介されていることをまったく覚えていませんでした。
若い頃にあんなに目を通していたのに覚えていないのは自分でも驚きました。
当時はまったく興味の対象とならなかったということなのでしょうけど、それにしても人間の記憶は不思議といえば不思議です。
だからこのCDは本を見直したのをきっかけに今月になって新たに買い求めたものでこれが122枚目ということになりました。
内容は「アコースティック・ギターのジミヘン」と呼ばれているらしいバートとやはり名手のジョンのテクニックがふんだんに折り込まれたインストゥルメンタル中心のトラッドな雰囲気のアルバムです。
僕としては音楽に浸ったり真面目に聴き込んだりというよりは流れていると気持ちいいアルバムでありもちろん口ずさむというものでもありません。
数曲には歌がありますが最初はインストゥロメンタルに徹すればよかったのにと思ったんだけど聴いてゆくうちにアクセントになって飽きないのでかえってよかったと考えが変わりました。
もちろんギターのテクニックを味わいたい人にはまた違って聴こえてくるのでしょう。
僕も願わくばそうなりたいけど(笑)、でも一応ギターを弾く者としては聴いているとやっぱりこんな風に弾ければいいなと思います。
いいギターが欲しい、とも、ちょっとだけ・・・
静かな中に2人のギターがぶつかり合っているのも感じてそういう点では意外とスリリングな音です。
余談ですがこの2人がまだ御存命で現役で活躍しているというのは、60年代からのロックレジェンドが次々といなくなってしまう中では何かほっとするものを感じました。
真面目に聴き込むものではないと書きましたが、でも最近では家でかかっている回数が最も多いCDです。
僕は家では25連装CDプレイヤーで聴いていると話しましたが僕が聴いているものは基本的に濃いめのものが多いようで、その中で軽くて爽やかで歌が少ないこれが出てくると休憩時間的に気持ちがリフレッシュされるのを感じます。
なんて書くとほめ言葉じゃないように感じるし休憩するなら音楽を止めればいいのでしょうけど(笑)、でもこういう音楽があるのもそれはそれでいいものだと思い直しているところです。
ペンタングルは一応すべてのアルバムを持っていてバート・ヤンシュは1枚だけソロを持っているけどジョン・レンボーンはまだ聴いたことがないので、この1枚をきっかけにバートとジョンを少し買ってみようかと思っています。
「ロック・ベスト・アルバム・セレクション」の前書きには、今=1988年当時の基準では選ばれないようなものも敢えて選んでいると断り書きがあって、このアルバムも当時はまだCDがなく中古LPで探してまで聴くようなものでもないかもとは書いてあります。
しかしこの本が出た後にアンプラグドのブームがあってそれ以降はアコースティックな音への欲求が高まりそれが当たり前になったので、このアルバムはロックの本筋ではないかもしれないけど紹介されたのは結果としてよかったのではないかと僕は思います。
こうなったら紹介されていたあと19枚ただしベスト盤のアーティストを除くと16枚をコンプリートしたくなりますね。
あと16枚くらいなら年内になんとかしようかな(笑)。
「ロック・ベスト・アルバム・セレクション」は現在はもう絶版ですが、Amazonで中古で何十円から買えるようです。
僕は今持っている1冊を大切に持ってゆきます。
今でもこの本には感謝している部分が大きいですから。
このアルバムは土曜日の午後にはまさにぴったりで、紅茶とスコーンが欲しくなりますよ!
最後にどうでもいい話。
今日は54枚目の記事で「ロック54」だから「ロック」の本を紹介した・・・わけではなく単なる偶然です念のため。
ただし54枚目が土曜日でこのCDの話題を取り上げたのはいい偶然かなと自分では思ったりします(笑)。