「仇を討つってのも簡単じゃないな」
 うまく笑えているだろうか。
 思いながらイライブは告げた。
「簡単だと、思ったこと、ない。じじ様を、殺したほどの、手練れだから」
 シャルは淡々と喋る。どことなく澄ましているかのような、微笑みたくなる愛敬があった。
「俺のせいだと思う?」
 口に出していた。
 シャルが何のことか分からず、きょとんとした。
「9人、死んだのだよ」
「殺したのが、悪いと、思う。戦争って、いつ誰に殺されるか、分からないから」
 独特の理屈をシャルが口にする。
「慰めようとしてくれてる?」
 イライブの言葉にたいして、シャルは首を横に振った。
「遺された人間は、悲しむ。だから、人殺しは、よくないってら思う」
「死んだ」
 ラグが返り血を拭いながら答える。
「一人ずつ踏み止まって犠牲になりながら、どうにかここまで逃げてきた」
 さらに説明を付け足す。
 フェンの陣営にかなり近付いている。遠くにかがり火が見えた。
 往路で親しい口を利いた年嵩の兵士も死んだようだ。
(名前すら聞くことはなかったな……)
 イライブは天を仰ぐ。ただ星空が広がっている。
「誰が、悪い、とかじゃない。とりあえず、私たちは、生き残れた……」
 シャルがイライブの耳元で囁いた。
 こみあげる憤怒に任せて、さらに残る三騎も撃ち落とす。ようやくイライブはふぅっと大きく息をついた。
(八つ当たりだな……)
 イライブは天を仰いで自嘲する。どのみち敵なのだから殺すしかなかったのだ。それでも今殺したのは、捨て石にすることの意味すら考えずに、そうしようとしていた自分に腹をたてていたから。そういう自認がイライブにはあった。
「た、助かった……」
 ラグと一緒にいた兵士が安心して腰を抜かした。
「他の、人は?」
 シャルが暗い顔で、ラグに尋ねている。