イマシラ川はフェンとナドランドの国境だが、東に向かってカーブしている。二方向を川に面した箇所にナドランドの砦は築かれている。
「即興で作ったにしてはずいぶん立派な砦だな」
 心底うんざりしてイライブは呟いた。
 幾重にも設けられた石壁、さらに外側は柵で囲まれており、弓兵が配置されている。囲おうにも両側の川が邪魔をしてかなわない。さらには背後の川から小舟の補給が受けられるようで兵糧攻めもできない。
(つまりは隙が見つからない)
 午後には一斉に敵の砦を目指して進軍を開始した。イライブはダラマの隊に組み込まれたまま、シャルとともに歩いていた。
「こういうところを狙われはしないのかな」
 イライブはダラマに尋ねる。
 細く延びた隊形になっている。横をつかれれば一たまりもない。
「そうならないよう、なけなしの騎馬が駆けずり回ってる」
 短くダラマは答える。そういうダラマも警戒はしているようで、笑顔はない。
 イライブは首を横に振った。自分でもなぜそうしたのかはわからない。
「俺の行動に意味なんてない」
「だが、周りはそうはいかない。お前は祭り上げられてる」
 ダラマの言葉に、イライブは顔をしかめた。
 兵士たちの、自分を見る目が変わっていることには、イライブ自身も気かついてはいた。
「ヴィード将軍も、それくらいの小細工はするさ」
 ダラマは肩をすくめてみせる。
「お前らをほっポリ出してってもいいんだぜ?」
 イライブは言ってみた。
「すると今度はさっきの8人だ。お前には8人分の命の責任がある。逃げるわけにはいかねえのさ」
 ダラマが大きく口をあけて笑い声をあげた。
 何人かの兵士が振り向き、話し相手がイライブと見るや、なぜか畏敬の眼差しを送ってからまた藻との方向を向いた。