「城攻めなんて、経験したこともない」
 ヴィードの幕舎につくや、イライブはぼやいた。
「人と、斬り合うのとは、違うんでしょ」
 シャルが聞いてきた。
 時々ふらりと姿を消すが、基本、シャルはイライブの近くを離れない。軍人などよりは親しみを持ってくれているのかもしれない。
 見張りの兵士に来訪を告げると、すぐに中へ通された。
 実際、ヴィードがどう攻めるつもりなのかは分からなかった。
 ダラマが近づいてきた。
「将軍が、お前を呼んでるぜ」
 ニヤリと笑って言う。イライブが巻き込まれたがっていないのを面白がっているようだ。
(俺を当てにされても困るんだよな)
 一度、奇襲をうまくやった。たったそれだけのことだが、何か、ヴィードの態度はさらに自分を使おうとしているかに思えた。
 フェンの軍隊が築いた陣地にてイライブは思った。
(まぁ、うちも防御の陣を組むのは速いな……)
 ヴィードが守備を得意とする将軍なのが大きいのだろう、とイライブは見ていた。
「攻めないの?」
 いつの間に隣に来ていたのかシャルが訪ねてきた。
「簡単な、相手じゃないのはこの前のでシャルも分かっただろ?」
 イライブは敵陣をにらんだまま告げた。
「まぁ、あの、斧遣いは、強かった」
 あっさりシャルは納得したようで、イライブと並んで敵陣を眺めている。