「平家物語」をもって瀬戸内海を歩く①兵庫 | ブラタカタ・・・通訳案内士試験に出題された場所の旅道中

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2007年以降、300人以上の通訳案内士を養成してきた通訳案内士試験道場の高田直志です。案内士試験に出題された場所を津々浦々歩いたときの旅日記です。案内士試験受験生は勉強に疲れた時の読み物として、合格者はガイディングのネタとしてお読みください。

「平家物語」をもって瀬戸内海を歩く①兵庫

 国際貿易港、神戸の歴史は、1173年に平清盛が大輪田泊を開港したことによる。かつては博多と並ぶ日宋貿易の拠点として、各地の中国語や朝鮮語が聞こえ、宋銭が流通し、磁器につまった漢方薬のにおいがたちこめる活気ある貿易港だったのだろう。そこは現在の兵庫区和田岬駅付近にあったと推定されるが、「国際港・神戸」のイメージから程遠い、低層住宅地である。とはいえ、今もこの町を歩くと、湿った潮風が随所で頬をなでる。

 ここから北に3㎞ほど行った兵庫区北部の、新開地・湊川周辺に福原町に1180年、約半年だけ都があった。福原京である。思うに古代の日本はほぼ内陸に都をおいてきたが、難波宮とともに例外的存在がこの福原京である。安芸守から始まり全国の半分を支配し、「平家にあらずんば人にあらず」と豪語された平家一門の総帥が清盛だった。彼が平安京からこの海辺の町に遷都を強行したのは、京都の貴族や寺社の勢力が及ばぬ地に身を置きたかったこと、平家一門の財力を支えた貿易の中心、兵庫に置きたかったことなどが挙げられる。

 しかし本質的なところで挙げられるのが、平家一門は船を操り瀬戸内海を自由自在に駆け巡る「海のノマド」だったことにあったのではないか。海の男たちにとっての価値は度胸と判断力だ。船が嵐に見舞われた際、どう生き残るか。積み荷を捨てれば生存率がどれだけ上がるか?生存したとしても荷主に対する補償はどうするか?など、瞬時に決断するのだ。

 当然のことだが、平安時代において貴族と武士は生き方が違う。この時点において貴族=陽、武士=陰だった。陽の当たる都会の搾取階級が貴族なら、武士は都会では貴族に雇われるボディガードだったが、本質は農地を耕し、海を渡って商業にいそしむ日陰の存在だった。

また、有産階級の貴族にとって遠き先進国唐の学問や詩文は身に着けるべき憧れであり、その産物は消費すべきブランド品であった。一方、武士にとっては遠い国の学問よりも、目の前の農業や商工業に関する実利的な知恵のほうが生存するためには意義深く、その産物は輸入して利益をもたらすものでなければぜいたく品だったろう。

さらに都会人の貴族にとって自然とは外部にあって四季を愛でる、歌を詠むための「山水」であった。そして農山村や海辺に暮らす武士にとっては周りにある自然をいかに共存・利用して、農業や商工業で暮らしを支えるかという恐ろしくも頼もしい存在だった。

瀬戸内海の自然とともに生きてきた平氏一門は、権力を笠にかけ上洛しても、平安京の貴族の前では野蛮視される存在だったことだろう。その京風の貴族文化にどっぷりと漬かりきった仲間たちに、瀬戸内の海の男たちとしてのルーツを思い出させ、胆力や野生の勘を取り戻させることが福原遷都の目的ではなかっただろうか。

福原に遷都した1180年は、平氏の世の終わりの始まりの年であるとともに、源氏の世の始まりでもあった。春には清盛の娘、徳子と高倉天皇の間に生まれた皇子が、2,3歳で安徳天皇として即位するが、夏には関東で源頼朝が立ち上がり、秋には鎌倉を拠点として弟の義経と対面し、平家打倒を誓い合った。同じころ清盛は熱病にうなされ、翌年春に亡くなる。

三年後の1184年、福原から8㎞ほど西に行ったとされる一ノ谷で起こった戦いが、本格的な平氏滅亡の序章となった。(続)

 

 

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